P突堤2

「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

初めて訪問された方へ

P突堤2へようこそ!
キーボードの配列・機能の説明はこちらです。
お知らせや補足事項なども表示してあります。

連用承接が色をなして(2分間憎悪のお時間です)

2022-11-01 | 文解析は副詞が鍵

日本語には川の上流から桃が流れてくるときにしか使われない、オノマトペがあります。
こういった様態オノマトペは導入フレーズの流れに連なって、連用修飾語として以後の展開をゆだねていきます。
じゃあ「ドキドキする」は副詞じゃなくて叙述用言じゃないのかよ、と質してくる向きもあろうかとは思いますが
私はオノマトペ連語のすべてが連用修飾である、とは限定していません。
「ドキドキする」にしましてもいささか細密に要素分解するのなら[ドキドキ](副詞)+する(サ変用言)のように受け取れようともなくはありません。
考えれば日本語というものは主語がなくとも成立するなどとは言われておりますが
結句する動詞の前段に先行する、「位相提示語」とでもいうようなマーカーがある意味叙述を完遂するよりも饒舌にシチュエーションの想起を助けており
現象の世界観をまずもって示そうという共感装置がその後の結句の理解を助ける文法構造になっていると思うのです。
(英語は専任の細かな動詞が多数揃っているのに対して、日本語は副詞や位相提示語が先行して和語動詞自体のバリエーションは質素)

…というマクラはほどほどにして今回は連用修飾に関する雑感雑想です。

ペンタクラスタキーボードでは副詞(連用修飾)を優先的に感知し、通常変換の解釈を組み立てていきます。ここに
あくまでも参考程度にどうぞ
という文があったら、「あくまで」には副詞ヴァージニティーの選好がはたらくので、「悪魔で」になったりはしません。
さらに単に末尾助詞連結や助詞伴わずの副詞だけに限らず
自立語付属語の入り混じった、一連のクリシェを形成するフレーズもひっくるめて連用修飾を感知していきます。

[の]一環[と]して
個店[に]より
露[と][も]知らず
意[を]決し[て]
↑これらは副詞ヴァージニティーとの兼ね合いで「一貫」や「古典」「梅雨」「胃」などノイズ候補は抑制されますし

(体言:カレー)以外食べない、(活用連体形:聞かれた)以外何があるの

のように前後接続品詞との関係を見ながらヴァージニティーを探っていき定番な罠に陥りやすい
「カレー意外食べない」「聞かれた意外何があるの」(以外と意外の誤変換)
のようなトホホな誤変換を回避しようとの試みに取り組んでいる最中であります。

このような通常変換での選好バイアスに加えて、もっとフレーズをロングレンジで見ていこう、との狙いもあります。
先ほどのクリシェのフレーズなどは途中助詞などが入り混じって、文字列検知のプロセスにおいては何かと分断されやすいものであるのですが、
ペンタクラスタキーボード体系の文字コードでは助詞や機能辞などの別口入力リテラルはべた文字のものとは違う固有の文字コードを持つので
多少ロングレンジの尺になっても「否が応でも」の[が][で][も]は独自のコードをもっているのでべたのリテラルに埋没して分解能が曇ることもなく
そのまま字なりに格納/解釈できることになります。
これは何も連用修飾フレーズに限ったことではなく一般の慣用句の叙述にも存分に力を発揮するものであります。

鼻が高い
カマをかける
目が利く
蜘蛛の子を散らす
音頭をとる
後を絶たない
業を煮やす

こういったものを一フレーズのリテラルのまま、助詞の立った状態でまるごと格納すれば見当違いの字を充てることも格段に減っていくでしょう。
できれば基本形以外にも各種動詞の活用形や機能語との連結でも変化形に対処できるようにするのが望まれます。これは今後の課題ということで…。


さて、連用修飾・副詞にはソリッドのものももちろんありますが助詞が後接する付着型の連用修飾も結構見られます。
その中でも典型的なのは
・--に 型(じきに)
・--と 型(のうのうと)
・--て/で 型(嬉々として/急いで)
・--く(壁を白く塗る) ※これは形容詞マーカーの別口入力

いずれも別口入力によるところも大きい助詞群の連用修飾であるのですが普段見慣れたパターンの「が」の接続する副詞はないのでしょうか?(古典文法は除きます)
リサーチによると連用修飾は[を・に・へ・と・から・より・で]となっていて
「が」は主格の格助詞、すなわち主語をあらわすはたらきとされています。このへんがひっかかります。
なにか別物の扱いのようですね。

でも
せっかくの料理が冷めてしまう
の[が]はどうでしょうか。
これは副詞っぽくないですか?
もちろん、カタチの上では「せっかくの料理」ですので単なる連体修飾句だといってしまえばそれまでなのですが
わたしはむしろバリバリの連用修飾に感じてしまうのです。

以前、このブログで
「まさかの--」副詞用法化の兆し - P突堤2
というのを考察したことがあります。その中で

まさかの録画できてなくて

というのが連体修飾の「の」であるにもかかわらず構文から見た機能成分としてはまぎれもなく「連用修飾」としてはたらいている
…こんな例外が存在している、という例を実際に見てきています。

ここで俎上に上がった「せっかくの料理が冷めてしまう」の「が」も
先例に連なる破格の連用修飾用法を獲得しているのではないか、という思いが頭をもたげてきています。ただの主語にしておくのはどうももったいない。
つまりガチガチに連用修飾というのを規定しすぎるとスペクトラムな解釈の余地のある懸案について融通が利かなくてあまりよろしくないのではないか、ということであります。

このように、ひと口に連用修飾といっても多様な諸相を許容する枠組みというものがあっても良いのではないでしょうか。
先般の「が」のつく主語の文であってももちろん連用修飾に越境したいのはいうまでもなく、
挨拶[っきり]話せてない…のような接辞接続のものも連用修飾のまな板に載っけていきたいのもありますし
香川はおろか四国には…のような機能フレーズ
その気にさせるくらい良い相手が…のような活用・語尾表現からの機能フレーズ
歳をとるにしたがって…のようなむしろ接続詞範疇の連語や単接続詞なども視野に入れて…みてほしい

ついでにもう一押し列挙してみると、連用修飾と呼ぶには抵抗があるのかもしれませんけれど

音量気をつけて…のような助詞なし・提題名詞(アジェンダ名詞(単提題シンプル))からの連接も実質連用修飾的?
悪意ある四股名入力する人は/今のこのご時世 のような(連体的複数連結のアジェンダ句(デコ規定))からはより分かりやすいカタマリ感
加えて
それとパラレルにアジェンダを形成する
今更感すごいな/内容量確かめて…何か接辞派生の合成語はアジェンダカタマリ感がより際立ちやすいような気がする、という気づき

そしてより的を絞ると、拙ブログで「接題目形合成語」と呼んでいるシロモノ「連用形+名詞で接続しているもの」かつ「+アジェンダ機能を持つ」
削り工程/つぎ込み額/上沼怒られ枠/変人呼び寄せアンテナ…のような後に助詞抜き叙述が続きそうなものも立派なアジェンダ、
これは単に連用形と捉えるには不足で、連用形の後に続くゲージ要素がたとえ漢字であったとしてもそれを活用語尾とみなす新解釈を持ち込むものであります。

そして別の面から分析すると語のカテゴリとしての認知的な違い、たとえば
自撮り送るから(×地鶏)/私道流してたら/任期全うしたら…のように三属性変換ハ万の範疇のものはアジェンダ成立妥当性がよりあるのではないか
という議論も展開途上ではありますが重点的に検討しているところであります。まだ傾向しか見えておりませんが…

そして忘れてはならないのが
「副詞的職能をもつ生産力パーツ」…いわゆる[句接辞]と[機能語]ももちろん外せません。

句接辞は「行きがかり[上]無視できない」「自治体職員[柄]聞いてはいます」のように(生産的)接辞で結ぶ連用修飾語を形成するもの
機能語は「どこかの石油王[あたり]養ってくれないかな」「動揺[ひとつ]見せない」のように(生産的)機能語で結ぶ連用修飾語を形成するもの
これらはアジェンダ名詞と通じるところもあって同じく助詞抜きで叙述に移行する"切れ目"をもち潜在的な格/形式的な格をはらむものでもあります。

駆け足で突っ走ってしまいましたがついてこられたか心配なのですが
単純副詞・助詞付随副詞による古典的な連用修飾、これはいいとして
単に提題だけに見えたアジェンダ名詞も用言にかかるという意味では連用修飾っぽいはたらきがあるのではないか、
さらには従来接続詞として扱われていたつなぎの連結も連用修飾っぽいはたらきがあるのではないか?

これら広範囲の種々をまるっとまとめたい…連用修飾という言葉が悪いですね…。修飾という実態でないものもありますし…
もっとモヤっとした言い方を求めるのなら、
連用承接(れんようしょうせつ)とでもいいましょうか、この言葉を使いましょう…。
これなら接続詞やアジェンダ名詞みたいなものも「連用」で「承接」(うけてせっする)わけですからより抽象的です。

ペンタクラスタキーボードの構文解析は文の構成に厳密に迫るというよりも、何よりも同音異義語の誤変換を回避することに特化して
そして三属性変換-通常変換のバイアスで連用修飾を目ざとく検知する、これの用さえこなせればいいのですから
最適化するとしたら拙案の「連用承接」を軸とした切り口でうまく回していこうというのが企図するところであります。

まあ、「承接」という言葉はすでに助動詞界隈の文法用語として確立されているものがとっくにありますので
私のような門外漢が浅慮にカブる術語をひねくり出しても無用な混乱を生むだけではないか、とのご批判もあるかと思います。
なのでこれは仮のネーミングとしておいて、今後分解能を高めて輪郭を掘り進めていくうちにふさわしい術語をリネームできれば良いなと考えております。
今回は記事の構成上連用修飾とのアンチテーゼを際立たせたいがためにこのような用語を使ったことをお許しください。

連用承接についてはもう一記事くらい書きたいテーマがありますので
まだ材料はほぼ白紙ではありますが今回の論をうけてより発展させた考察を編んでいきたいので
まずは今記事をセルフ再熟読しつつ、
・クリシェ-具陳の観点や
・句形成や接辞派生をするとアジェンダカタマリ感が際立ちやすくなる現象
・助詞を独自文字コードで取りまわすことの利点
…など各論点に目配りをしてうまく咀嚼して見通しをつけていければいいなと思います。

以上、ひさびさの文法記事でちょっと力が入ってしまった拙者でありました。エヘン。
ご精読ありがとうございます。

 

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする