これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

心神耗弱につき(2)

2008年05月17日 17時52分50秒 | エッセイ
 どうにかして、歯ぎしりとイビキを封印しなくてはならない。
 歯ぎしりに関しては、「マウスピースをつけて寝るとしなくなる」と教わったことがある。ちょうど歯周病の治療中だったので、かかりつけの医師に相談してみた。
「歯ぎしりは歯周病を悪化させますから、今すぐマウスピースを作りましょう。笹木さんの犬歯は、土台の骨が溶けてしまって、半分くらいなくなっていますからね」
 ……ぞっとした。単にやかましいだけでなく、歯がなくなるところだったのか!
 総入れ歯になれば歯ぎしりの心配もないだろうが、それはあと30年経ってからでよい。
 その場で上の歯の型を取り、数日後にはマウスピースが出来上がった。これをはめて寝ると、何の苦もなく歯ぎしりをやめられる。自分の歯に合っているから、違和感もなく熟睡できる。
 しかし……。マウスピースの分だけ口元が膨らんで、まるで原人のようだ。静かになったとはいえ、やはり誰にも見られたくない。
 そして、イビキはうつぶせ寝枕を購入して撃退することにした。あの日野原さんの枕である。耳鼻科で治療を受けるとよいとも聞くが、知人は芳しい成果がないとこぼしていた。病院に行く時間もないから、まずは枕を試すことが先決だ。
 私は体が硬いので、うつぶせで寝るのは苦痛だった。寝入りばなはよいのだが、目が覚めると必ず仰向けになっている。きっと、レム睡眠のときに楽な姿勢をとってしまうのだろう。果たして、どのくらい効果があるのだろうか。
「ねえ、昨夜はママ、静かだった?」
「そうだね、この頃よく眠れるから静かだと思うよ」
 娘が起きないのであれば、イビキもおさまっているのだろう。
 だが……。うつ伏せで寝た翌朝は、顔がむくんでいる。目は腫れぼったくなり、頬も膨らんで顔が大きくなってしまい、ブス度120%である。マウスピースを入れたままだと、さらに原人状態が加わり、思わず鏡を叩き割りたくなる。出勤までには大体元通りになるけれども、ときには戻らないこともあり、仕事を休みたい衝動に駆られる。
 寝ているときにイビキをかいていても、周りの人にはわからない。しかし、むくんで不細工な顔は、ひと目でそれとわかってしまい、隠しようがない。
 醜い顔で出かけるくらいなら、イビキをかくほうがマシかもしれない……。
 これも一種の心神耗弱……、などという言い訳は、厳しい娘に通用するだろうか。



お気に召したら、クリックしてくださいませ♪
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする