これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

招かれざる客

2008年05月25日 22時03分26秒 | エッセイ
 昨年、小学生の娘が理科の授業でメダカの卵をもらってきた。
「おや?」
 稚魚が成長した頃、水槽の珍客を発見した。タニシのような貝がガラス面にへばりついている。いつの間に入ってきたのだろう。
「これはモノアラガイっていうんだよ。残った餌を食べて、水槽を掃除してくれるんだって。理科の先生が言ってた」
 娘は貝の正体を知っていた。どうやら、水草に卵がついていたらしい。なかなか愛らしいのでメダカと一緒に飼っていたが、アクアショップの店員は厳しいことを言った。
「モノアラガイは水草を食べるし、ものすごく増えるんです。見つけたらすぐに潰したほうがいいですよ」
 ……しかし、生きて動いている貝を潰すなんて、そんな酷いことはできない……。
 結局放置してしまい、モノアラガイは続々と増えていった。
 モノアラガイに食い荒らされた水草を、新しいものに取り替えたあとのことだ。
「お母さん、水槽の中に蚊がとまっているよ」
 虫の嫌いな娘が、顔をしかめて報告に来た。たしかに、水槽上部の、水が届かない壁面に1匹の蚊がとまっている。でもフタが閉まっているし、餌をやるための穴から出てくる気配もない。気にも留めないでいると、翌日には3匹に、そして翌々日には30匹ほどに増えてしまった。
 水面には、細い足を見せた蚊がフワリ、フワリと、互いにぶつからないように飛び交っている。水面からわずか10cmほどしかないスペースには、4面のガラスにびっしり、黒い斑点のような蚊がへばりついていた。
 どうしてこんなことに? まさか……。
 水槽に顔を近づけて目をこらすと、黒い糸のような生物が上へ下へと漂うように泳いでいるではないか。
 ボウフラだ! まさか、これも水草に!?
 一体何十匹いるのだろう。ひと目で、おびただしい数のボウフラが確認できた。
 刺されたわけではないのに、体中が痒くなった。腕にも足にも鳥肌が立ち、夏だというのに寒気がした。
 絶対、全滅させてやる!
 蚊取り線香をガンガン焚くと、成虫はあっけなく死んだ。が、水中のボウフラ退治が難儀だった。水を取替えるときは多くても半分までという原則を無視し、全部取り替えるしかない。足のないヤスデのような姿のボウフラが、赤茶色の体をくねらせて抵抗する様は、まるで悪夢を見ているようだ。メダカとモノアラガイだけを取り出して、あとはきれいさっぱり捨ててやった。
 気づかなかったとはいえ、こんなものを飼っていたとは!
 すっかり懲りた私は、新しい水草を買ったとき、これでもか、これでもか、というほどしつこく水洗いした。
 それから半月ほど経ち、娘がまた何か持ち帰ってきた。
「お母さん、今度は先生がヤゴくれたよ。ボウフラも食べるけど、糸ミミズがいいって」
 そういえば、ボウフラの天敵はヤゴだった……。 
 今頃、遅いんだっつーの!!!



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コメント (4)
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