「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のラース・フォン・トリアー監督作品「ドッグ・ヴィル」は、
はっきり言って出口のみえない救いようのない映画だ。
映画からカタルシスを得ようと思われている方にはお薦めできない。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」には、まだヴョークの歌声に自己投影して全体を覆う閉塞感から
気持ちを逸らすことが可能だったが、「ドック・ヴィル」に逃げ道はない。
打ちのめされる最終章の衝撃まで、ひたすら耐え続けなければならない。
何故そんな思いまでして、3時間近い長い時間、観続けなければならないのか?
ブレヒトの「三文オペラ」の挿入歌「海賊ジェニー」から着想したという本作は、
戯曲そのままの簡素な舞台装置の上で、終始展開される。
9つの章ごとにナレーションが被さり、各章のシチュエーションを示唆する。
確かに最初は、緩慢に流れ退屈だが、途中から目を背けられない展開となってくる。
ただし、それは心地よい物語的展開ではない。
暗く不快なものに、否応もなく引き摺られてゆくような抗い難い感覚…
まったく、こんな気分の重たくなるダウナー系の映画を紹介するなと言いたいですね(苦笑)
ラース・フォン・トリアー監督がアメリカを描いた3部作の第1作だといわれる。
それは前回紹介した「パリ・テキサス」のヴェンダースの描くアメリカとは随分違う。
ヴェンダースには、現代アメリカの病理を描きながら、まだ旧い映画に対する想いや大陸の茫漠とした風景に
対する抑えられない憧憬を隠さなかった。
でも「ドッグ・ヴィル」には、そんなセンチメンタルな感傷の欠片もない。
貧しく善良なはずの人々が次第に心のタガを外しエススカレートしてゆく過程、そして自己防衛という殻に閉じこもり
他者に対する加虐行為を正当化する過程…まさにアメリカの蛮行が容赦なく圧し掛かってくる。
そして、またしてもジェノサイドだ。
ほっほさん、ここでもあなたの好きな七つの原罪の「傲慢」が最終章で炙り出されますね。
それにしても、救いようもなく打ちのめされる結末だ…
エンド・ロールで流れるデビット・ボウーイの「ヤングアメリカン」が、余計に気分を重くする。
「傲慢」最後に一番の権力主義グレースの「傲慢」がランスケさんが言うアメリカの蛮行が牙をむきます。
ラース・フォン・トリアー監督の「アンチクライス」(反キリスト)私は、観ることににしてます。
そしてデイヴィット・リンチ監督の異次元ワールドが炸裂マルホランド・ドライブ(ナオミ・ワッツの出世作・演技に蕩けます)松井冬子が描くオフィリア的要素もあります。
ラース・フォン・トリアー作品への出演。
その他にも、あのハリウッド黄金期の伝説の女優、ローレン・バコールも出ている。
(クレジットをみると演劇人も含めて錚々たる顔ぶれ)
ジャーナリストの評価は、真っ二つに分かれるけれど、
この監督の作品は多くの才能ある(野心的な)
映画のプロフェショナルたちを魅了して止まないようです。
さぁ、その評価は皆さん自身が映画を観て下してください。