福岡県糸島郡志摩町の砂浜で
誰もいない砂浜で
後ろを向くと大きな竹がたくさんつるしてあって
塩を作るために海水を循環させて10日間かけて
ゆっくり海を濃縮していて
匂いがいつもよりずっと海で
にせものかなって
意志を拾って
海に投げて
思ったより遠くに行かなくて
なんども投げて
みんな違うところに落ちて
あたまの中に音楽のフレーズが繰り返し流れて
うちあげられた回想をいくつも海に返して
波が運んでくる海藻は永遠で
消えることなくて
砂からにじんだ塩分を含んだ水に靴が濡れてるのにきづいた。
誰もいない砂浜で
後ろを向くと大きな竹がたくさんつるしてあって
塩を作るために海水を循環させて10日間かけて
ゆっくり海を濃縮していて
匂いがいつもよりずっと海で
にせものかなって
意志を拾って
海に投げて
思ったより遠くに行かなくて
なんども投げて
みんな違うところに落ちて
あたまの中に音楽のフレーズが繰り返し流れて
うちあげられた回想をいくつも海に返して
波が運んでくる海藻は永遠で
消えることなくて
砂からにじんだ塩分を含んだ水に靴が濡れてるのにきづいた。
(谷川俊太郎 「散文詩」、「日本語のカタログ」より)