劇薬青春小説。
無駄な修辞語やモノローグで飾り立てない《竹宮ゆゆこ文体》読みやすい。
意味不明なテンポ感、ときどき高揚感。劇団の事情とともにすっかり魅了される。
27歳で劇団の主宰で収入はパパの店で働く分だけで/中略/虫のごはんで演劇ばか。
南野正午はそういう人だった。
そういう人に、自分はついていくことを決めてしまった。
というか現在進行形でついてきてしまっている。この後は風呂まで借りる予定だ。
「私、ここにいていいんだ」
何となく疎外感を感じているアナタに元気を与えてくれる。
〈あらすじ〉
大学の卒業を迎えた富士は、絶望の渦中にいた。
五人兄弟の真ん中として育ち、金銭的には何不自由なく育ってきた富士。
卒業後は、親の企業に就職し、そこの社員と結婚して静かな暮らしをするはずだったのに――。
許婚に婚約を破棄され、地元に戻るのも恥ずかしく、就職先もないまま東京に残った彼女は、ひょんなことから弱小の劇団運営にかかわることに。
そこは社会からはみだした者たちが集うところ。
劇団員になれば、ボロアパートの家賃は無料でいいとの甘言にひかれた富士だが、
そこで自分が「真ん中っ子」としてつちかってきた、「カオスを整理する能力」を発揮することになる――。