江戸川教育文化センター

「教育」を中心に社会・政治・文化等の問題を研究実践するとともに、センター内外の人々と広く自由に交流するひろば

大津市の保護司殺害事件から思うこと ③

2024-07-02 | 随想
 法務省では27日、高齢化や担い手不足を背景に、持続可能な保護司制度の確立を目指す有識者会議が開かれた。

現役保護司から「家族の不安が高まっている」と報告され、安全確保や家族へのアンケート実施を求める意見も出たと云う。

太田達也教授(慶応大)は、
「毎年新規の保護観察対象者が2万人以上いる。千人程の保護観察官が全ての対象者の面接や指導に当たることは不可能で、
地域の情報や人材ネットワークを持つ保護司は更生や支援に欠かせない」
と語る。
(6/28朝日新聞)






 《60年ぶりのあってはならない惨劇》

 保護司が殺害された事件は、1964年北海道羽幌町で男性保護司が以前担当していた男に刺殺された1件で60年ぶりの悲劇と言えるが、
保護司が暴行されたとか脅されたとか、車を乗り逃げされたとかの話は聞いたことがある。
このような例はまれとは云え、不安を抱かせなり手の減少だけでなく辞める保護司も増えていく気がする。




《対人対応能力が求められる保護司》

 保護司は面接の際に対象者の生活面や心の相談、就労状況や就労支援、少年であれば親子関係の相談にも応じる。
発達障害がある対象者なら「障碍者相談センター」との連携なども必要となる。  
事件内容や年齢・家庭環境、対象者の個性などに応じて、ある意味臨機応変に対応できる保護司でなければ務まらない。
それゆえ保護司には、退職教員や校長、PTA役員経験者、宗教関係者が多いのも一理あるが、議員や役所関係の退職者、警察関係のOBも比較的多い。


新聞報道に首都圏の50代女性保護司は、事件内容が「殺人や放火、性犯罪」だったら断るとあったが当然と思う。
性犯罪者は男性が多く、女性保護司が担当することは殆どないと思うが、男性保護司で断る人もいて、自分に回ってきて大変だったなど聞いたこともある。
誰もが気軽にやれるボランティアではないし、それなりのハードルの高さがある。



《面接すら困難もある》

今は対象者の気持ちを逆なでしないよう「面接のし方」の研修も重要視されている。
コロナ禍の時は感染予防の意味で、電話やメールで状況を聞いて面接に替えていたが、今後接触を避けるためオンライン面接が増えることも予測される。

しかしそれ以前に面接に来ない、寝坊したとかで大幅に遅刻する。
待っているのに直前でドタキャンする対象者もいる。
あるいは、来ないので電話したら他県の公園で野宿していたとか、面接にこぎ着けるまで一苦労することが多かった。


《保護司の使命感とは何か?》

こんなことが続くと、約束通り来てくれるだけで有難いと云う気持ちになる。
同時に対象者に寄り添った面接を思っても、期待通りに応えてくれることはそう多くはない。
裏切られることもある。
保護司にも都合があり仕事もある。
暇でやっている訳ではない。

やがて対象者に寄り添い更生させると云う使命感も信頼関係も薄れてくる。
逆に「裏切られてもあきらめず根気よく」や「正義感をあふれ出して」接することは、対象者にとって過度の負担や負い目を与え恨みにも繋がり兼ねない。



《犯罪抑止に保護司は必要なのか?》

 犯罪抑止には保護司が必要と云うが、犯罪が多発するのは国や社会全体の問題でもある。
何の権限もない市井の民間人が、犯罪抑止や再犯防止の最前線に立ちボランティアとして担わされていることの問題をどう考えたらよいのか。

保護司制度の見直しが急務だ。 

以上  
2024/06/30
                                     




辞め時を迷う<フウチソウ>


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