江戸川教育文化センター

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教員の業務見直しや抜本的改善とは…

2023-05-29 | 随想
5/24付の東京新聞社説に「教員の働き過ぎ」ー抜本的改善に踏み込めーという見出しで書かれていた文章がある。

前段にある「教員の処遇改善や教員不足解消には、業務見直しや予算措置を伴う抜本的な改善策が必要」というのは納得できるが、具体的に何をどうするといった改革案の提示をしているわけではない。

敢えて提言していることは「専門家らを増やして業務を委ね、教員にこれ以上の負担を掛けない体制整備が必要だ」という点と、「(給特法)の廃止を含む抜本的な見直しに踏み込むべきではないか」という点である。

さらにもう一点加えるなら、「(文科相が中教審に教員の処遇改善などの方策を諮問したが)中教審には、公教育の崩壊を招かぬよう、将来世代に責任を持つ、実のある論議を求めたい」と述べているだけである。

この様な「改革提言」は特に目新しいものではない。
特に「給特法」廃止は既に当たり前の最低限やるべきことではある。

気になるのは、専門家を増やして業務を委ねるべきだという発想である。
はたしてこれで良いのか、内容吟味の必要がある。
教員だって専門家だと言われていた時があったが、何をもって専門家なのかよく分からなかった。

日教組が「教師聖職論」に対抗して「教師専門職論」を唱えた頃の話である。
給特法が成立する根拠として、この専門職論がリンクした節もあるが、ただ、「教員の仕事は時間で切ったり計れるものではない…」程度に使われて、それ以上に突っ込んだ論議が広く行われたことはない。

しかし、どんな職種であっても、ひたすらその仕事に従事すれば専門家ではないだろうか…。
専門家の「専」は、「もっぱら」とも読むことからも、そう言えるだろう。
要するに、その専門家がどんな仕事をするのか、その中身の問題である。

教員の仕事は中身を細分化して、それぞれを専門家と称する者たちが分担すれば良いのだろうか?
その際の教員の立場は専門家ではなくなり、ただ業務を専門家に委ねる窓口にすぎなくなる。
はぁ〜、なるほど、現代においては教員は専門家ではなくなるわけだ…。


現在、学校現場から離れている私は教員の業務の詳細は理解していないが、かつてより広範囲に拡がり多様化しているのは分かる。
社説子が言うところの「専門家らを増やして業務を委ね」るというのも、その意味なのだろうが、問題は何故そんなに増やす必要があったのかという点である。

定年退職後の私が、今までにいくつかの学校内における業務を経験しているが、先の論理からするとこれも「専門家」として位置付けて良いだろう。
それにしても、教員の労働軽減として私たちが行った(行っている)仕事は全て教員がしなくても良い仕事なのか?

例えば「不登校」という名の下で、教室に行けずに保健室や別室に登校している子どもは専門家に任せておけば良いのだろうか…。
かつて私は、重度と分類される「障害」を抱えた子どもを担任する際に、介助員を付けずに担任の指導の下に在るべきだと考えていたものだが、現在は介助員なしに普通学級で共に学ぶのは困難視されるに違いない。

当時の私は、何でも自分が自分が…という気持ちが強くてツッパっていたのだと思うが、それが担任の責任のように思っていたのだ。
つまり、ある子どもに、必要ならば一定の時間関わるだけの余裕があればよいわけである。
敢えて担任や教員がやらなくて良いものを押し付けていないか、点検すべきである。
いや、本来業務である授業が窮屈になっていないかこそを点検すべきだろう。
つまらぬ内容ばかり増やして、きっちり学ぶ時間を確保していない教育課程に大きな問題があることははっきりしている。

中教審などに期待して何か根本的な改革ができるはずがない。
彼らこそが教育内容を始めとする学校教育の枠組みを悪くしてきた張本人なのだ。

ズバリ言うならば、教員や子どもに自由を与えないで、国家が決めた内容でうまく管理しようなどという腐った根性を持った機関に教育を委ねているのが最大の間違いであるのだ。
教員や子どもたちに、「自由にやりましょう!」と委ねることにより、地教委も文科省もずっと楽になるはずだ。

言わずもがなではあるが、自由な学校に自由な教員と自由な子どもたちが集まれば、必ず何か面白いことができるはずである。
もし、そんな学校であるならば、そこでの教員は専門家として子どもの学びを保障する教育労働に従事できるであろう。



<すばる>

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