スケッチブック

写真と文章で、日常を記録に残す

枯れ行く武蔵野

2005-12-11 10:30:39 | 社会
マウスオンで画面が変わります

バスの中で聞くともなく聞いた少女と母親との会話。「お父さまとの生活はどうだった?楽しかった?」と母親。少女は「うん、別に」と答える。「何処かへ連れて行ってもらったの?」と母親は探るような口調で尋ねる。少女は「うん、いつもの通りよ」と言葉を濁す。楽しかった父との生活を具体的には話したくない様子だ。「いいわね、こんな良いお洋服を買って戴いて」と質問を続ける気配。どうやら父母は別居中の様子である。「ねぇ、おうちはまだなの?」と少女が不安げに尋ねる。「どうだったかしら、バスでは初めてだから」と心細いことを言う。「ねぇ、下りる時は教えてね。」と、か細い声で少女は言って、母親のスカートの端をしっかりと握る。母は優しい口調で、「私は○○ちゃんを忘れたりはしないから、安心してていいわよ」と答える。閑静な住宅街にさしかかったところでバスを止めて下りていった。2人はしっかり手を握り合っていた。


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10 コメント

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武蔵野の冬のドラマ (anikobe)
2005-12-11 11:36:04
華やかな紅葉の時期も過ぎ、物寂しい武蔵野の写真に添えられた、バスの中の母と子の会話に、現在のドラマを見る思いがしました。

それが、これらの写真と一体になって、親子の情景まで浮かび上がって、何か物悲しい感情になりますね。日常茶飯事の出来事のような、別居や、離婚などがこのように目の当たりにしますと、きっと、傷つくのは、子供だろうなぁとお思わずにいらられません。
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anikobeさん、こんにちは (polo181)
2005-12-11 13:35:32
コメントを有難う。いつだってそうなのですよ。大きく傷つくのは子供です。少女が力一杯母親のスカートを握る姿を見てもの悲しくて、彼女のために祈るような気持ちになりました。バス停で止まって、精算するときに、運転手は「小学生ですか」と尋ねると、母親は「いいえ」と答え、運転手はそれじゃお金をお返ししますと言って50円を払い戻していました。ああ、あの子はどう育って行くのかなぁと今でも気がかりです。
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母と子の会話 (スイポテ)
2005-12-11 17:02:03
初めて母の(新しいお家)に向かうのでしょうか。

少女の不安が伝わってくるような会話でした。

親たちが別れ、少女は母親に引き取られることになったのか、それとも休日を母親の所で過ごそうというのか。

事情はともあれ、母親のスカートをぎゅっと握って不安に耐えているなんて。

初冬の風景がこの少女の心細さを暗示するようで切なくなりました。
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超短編物語 (じゃこしか)
2005-12-11 17:38:35
 poloさん今晩は。

この写真が国木田独歩の文学と所縁の深い、武蔵野の風景なのですか。

 公園として立派に整備されているのですね。それに環境がとても良さそうです。



 poloさんがバス内ではからずも耳にされた、母娘の会話は今の世相を象徴するかのように切ない話です。それがpoloさんの筆力によって、こちらの胸の中に食い込んで来ました。



 何故か今の世は、かって無いほどの子ども受難の時代ですね。
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スイポテさん、こんばんは (polo181)
2005-12-11 20:18:28
コメントを有難う。短い間の会話でしたから、深い事情は分かりませんでした。でも、母親が子供の問いにたいして、「行ってみないと、バス停の名前を覚えていないのよ」と言っていましたから、これから2人だけで暮らす新しい住まいだと思います。2,3日の短い間だけ、父と暮らした様子でした。母が引き取るのでしょうね。バスの運転手とのやりとりから、健康そうなガッシリした優しそうな母親と見受けられました。それがせめてもの慰めでした。あの少女が成人するまでの15,6年間の無事を心から祈ります。
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polo181 (polo181)
2005-12-11 20:28:21
コメントを有難う。埼玉県の川越から東京都の府中市までの雑木林を武蔵野と呼んでいます。ここは、私がよく入る昭和公園です。すぐ傍で話していたので、逐一私の耳に入ってきました。あどけない入学前の少女が、母とはぐれることを心配しているのを知って、切ない気持ちになりました。スカートをしっかり握っている、白い小さな手が今も脳裏にあります。少子化で子供が大切な時代なのに、子供を巻き込んだ事件が相次いでいますね。悲しいかぎりです。
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子は宝です (熊子)
2005-12-12 23:16:30
縁あって結ばれて、縁切って離れるのは大人の都合ですね。どちらかの辛抱が切れたときに、子供はいつも犠牲ですね。でも親子の縁は切れませんから、きっとしっかりしたお嬢さんになると思います。そう願っています。
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熊子さん、こんにちは (polo181)
2005-12-13 11:12:11
コメントを有難う。結婚をもう少し重く受け止めて貰いたい。さらに子供を産むと云うことの責任を自覚して欲しい。少々のいさかいがあっても、踏みとどまって、昔のように「子はかすがい」と考えて、子供第一に生きて欲しい。よからぬ人は、いつまでも男であることを、また女であることを優先してしまう。
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離婚は確かに親の身勝手 (あまもり)
2005-12-13 11:22:07
でもそうならざるを得ないこともこの世の中には多いので・・・・。

poloさんが聞いた親子の会話。小説以上にぐんと心に響きます。そしてその行く末が幸せであることを心から祈りたくなります。

poloさんの会話の描き方も素晴らしいものですが、poloさんの心の優しさが武蔵野の風景と共に伝わってきます。

なんだか久しぶりにショートショートを読んだ気になりました。ありがとうございました。
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あまもりさん、こんにちは (polo181)
2005-12-13 16:01:12
いやぁ、コメントを有難う。ありますねぇ。どうしようもない事情があります。例えば家庭内暴力とか、どちらか一方の止むことのない裏切りなどなどと。でも、一時の勢いで子供が産まれてしまった。このような場合がほとんどでしょうか。でも、母のスカートをしっかりと握っていたあの小さな手は、私にとってはとても辛い光景でした。この身に、超能力があればなぁ。なんだって、してあげられるのに。
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