スケッチブック

写真と文章で、日常を記録に残す

散歩には出たけれど

2005-09-06 14:42:27 | Weblog

台風14号の影響で関東でも雨の日が続いている。といっても、今のところ小糠雨だ。傘が邪魔だけれどないと困るといった具合。先月の26日に帰宅してから10日余りになるけれど、家に閉じこもりきりの生活が続いている。妻の買い物の後にくっついてスーパーに行ったりはするけれど、店内をぶらぶらするだけで、さしたる用事もない。

これはいかんぞよと思ってカメラと傘を車に放り込んで、多摩川べりまで行ってみた。数日来の雨で増水した川面を見ながら堤防を歩いていたら、4,5年前に起きた痛ましい事件を思い出した。年の頃は30の半ばだろう、すらりと長身の女性がミニチュア・ダックスフンドを連れて歩いているのに出会った。こちらは黒ラブちゃん。お互い鼻をくんくんくっつけてすぐに仲良しになった。それから後、出会えば必ずご挨拶をするようになった。

当時、河川敷の管理も今ほど厳しくなかったから、広っぱの片隅にみなひとかたまりになってめいめいの犬を放してやって、遊ばせていた。多いときは15,6匹にもなった。午前中の時間帯だったから、飼い主はみな女性だった。私一人が浮き上がる風であったが、犬の為にはと思って仲間に入っていた。

この一団とは違って、遠くの方に4,5匹の別の小さなグループがいた。私は全く気にもかけていなかった。ある朝あのダックスの女性と出会った。彼女は思いも寄らぬことを言うのだった。「皆さん、私のことを悪く言っていませんか?自分勝手だとかなんとか・・」この質問には思い当たることは何もなかったので即座に否定しました。私はどちらのグループにも属していない「通りすがりの人」と言った状態でした。それで、私は「何かあったのですか?意地悪をされるとか、なんとか・・」と尋ねました。彼女は言葉を濁して、詳しくは語らなかった。

それから数週間が経ってのこと、その女性は犬を連れずに歩いてくるのに出くわした。「あれ!ハッピちゃんどうしたの?」思わず尋ねました。彼女は顔面蒼白で唇を震わせながらこう言いました。「ちょっと目を離した隙に、藪に隠してあったものを拾い食いして、それには毒が仕込まれていて」涙を流しながら、声を上げて泣きながら「緑色のおう吐があって、蝶が舞うようにバタバタ動いて死んでしまいました」と一気に話したのだ。

それから後も、毎日毎日同じコースを一人で歩くのを見かけました。遠くを眺めたり、下を向いたりしながら歩いていました。この痛ましい毒殺事件の因果関係は未だに知らない。しかし、彼女が一人さびしく歩く姿は目に焼き付いている。一年ほど経ったころ私が「何かまた飼えばどうですか?」と尋ねると、「ハピちゃんに悪いから、もういいの」と答えて、それ以来彼女を見かけない。事情は違っても俺も似たような姿で歩いているのかと思ったら、ふと心変わりして車のところへ引き返した。



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12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今晩は (じゃこしかです)
2005-09-06 18:35:14
 とても良い話ですね。生意気を云うようですが、ショートストーリーに匹敵するほどと思います。それに場面ごとの情景が良く表れていると思います。



 バークレー君は如何ですか。台風も近づきつつあります。心配ですね。
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↑ほんとにそうですね (あまもり)
2005-09-06 19:18:08
じゃこしかさんと同じように感じました。

胸をつくお話です。



私のブログでpoloさんに謝らせてしまって、申し訳なく思っています。

poloさんの人を思いやる心は充分に分かっています。
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訂正 (あまもり)
2005-09-06 19:21:07
「胸をつく」ではなく、「胸をうつ」です。

突いたら驚くがな ですね(恥)
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じゃこしかさん、こんばんは (polo181)
2005-09-06 21:06:10
コメントを有難う。お褒めを頂戴して恐縮です。バークレーは小屋に入れられてまだ大きなカラーがついています。でも、私が近付くとシッポを振って喜びます。娘に厳しく注意されているので、最近はせいぜいビスケットを2,3個やる程度です。娘が与える夕方一回の食事はペロリと食べてしまいます。これで、本当に余命が少ないのかと疑うほどです。犬のことは女性に任せて、私は一人で旅に出ようかな、なんて考えています。
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あまもりさん、こんばんは (polo181)
2005-09-06 21:11:56
コメントを有難う。ヌーとリアの件では大変失礼しました。ブログはチャットよりも難しくて、コメントの内容はよく考えてからでないと、とんでもない失敗をしてしまいます。私は動物が好きで子供の頃から兎やニワトリなどを飼ったことがあります。それに犬はほぼ常時飼っていました。今も同じように動物は好きです。
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増水した川 (anikobe)
2005-09-06 22:22:25
このところ、台風の影響が、凄くて、被害にあった人達や、避難しながら家があるのかしらというニュースを見るのは辛いですね。

poloさん一人散歩の写真、かなり増水しているようですね。

散歩からの思い出話、痛みとして残っている様子が伝わってきます。

愛犬を亡くした女性の痛みも、その方と関わりあって知ったことに対する痛みも・・・
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かわいそうですね (熊子)
2005-09-06 22:36:00
古い話ですが、戦後間もない頃に、犬狩用の毒饅頭が釧路にもありました。父が一時復員して、小さな兄と町を歩いて、この毒饅頭に遭遇。お腹を空かしていたのでしょうね、兄が食べようとして、それを取り上げた父が口にしたそうです。当然父は悶絶です。そこに偶然にも通りかかった神主さんが父を助けました。その後から父は信徒になり、神様を祭って商売繁盛に繋がったそうです。私が生まれる前の話で本当かどうかですが、兄もこの当たりの記憶はあるようで、おっかない話だと覚えています。人間すら口にしたがる食べ物、小さな犬が食べたら、、、。子供同然のワンちゃんが目の前で悲惨な目にあったなら、お気の毒ですね。いったいどんな薬なんでしょうね。こんなことをする人間に幸はありません。バー君元気そうでよかった。あんまり神経質にならずに、バー君の好きなようにできたらいいですね。カラーがまだ外れない?傷の治りが悪いのかな。
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poloさん、今晩は。 (upplain)
2005-09-06 22:47:52
最近のpoloさん、書かれている文章がセンチメンタルなものが多く、毎日読ませて頂いていますが、自分も何か影響され書くことがセンチになってしまうので止めております。

・・・何か、去年の自分を見てるようで辛くなります。・・・お気持ちは十分わかっています。



poloさん、バークレーはまだ一生懸命生きているのですよ。

一緒に傍にいて上げてください。お願いします。



もう、こんなこと書きません。

勝手なこと云ってすまんです。
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anikobeさん、こんばんは (polo181)
2005-09-06 22:51:04
コメントを有難う。今度の台風も九州に大きな被害をもたらしています。被害者には高齢者が多くて、とても痛ましい。逃げよう逃げようと思いながらその時期を失ってしまうのだと思います。昨夜の時点で避難指示が出ていましたから、それに従っていればと思うと残念です。あのむごい死に方で犬を亡くした女性は、老いたお母様と二人暮らしで、さぞかし無念だったろうと思います。何時の世にもどうしようもない悪がいますね。
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熊子さん、こんばんは (polo181)
2005-09-06 23:04:24
コメントを有難う。そうでしたか、恐ろしい話ですね。一体誰が何の目的でそんなことをするのか。助けてくれる人がそばにいて良かったですね。お父様が助からなければ、今の貴女はこの夜に居ないわけだから、思えばぞっとします。何の薬だか分かりません。緑色の吐瀉物だったといいます。バタバタと転げ回ったといいますから、そうとう強い薬でしょう。それいらい、恐ろしくてバークレーは絶対に放さないようにしています。茂みや草原には入らないように、気を付けています。

数日で抜糸となりますから、そうすればカラーは外されることでしょう。
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