スケッチブック

写真と文章で、日常を記録に残す

ショートショート 6

2005-09-07 13:26:05 | Short shorts

若い未亡人
原作:Alice Gray
翻訳:polo181


夫は突然の事故で死に、彼女は二人の息子を育てるために一人、取りのこされました。最初のうちは、同情的な友達や心配する人たちに取り囲まれていました。彼等は食事を運んできたり、ハガキをよこしたり、電話を掛けてきたり、一緒に祈ってくれたりしました。そして、数週間が過ぎて数ヶ月の時が流れて行きました。そして全部の人たちが夫のことを忘れてしまったように夫の事が話題に上らなくなりました。彼女は会話の中で夫の名前が出るのを待ち焦がれるようになりました。彼女は誰かが夫の大股な歩き方や人懐こくて優しい笑顔や手を握る力強さなどについてちょっとでも言ってくれることを待ち望んでいました。彼女は近所の誰かが夫の工具を借りにきてくれないか、さらには誰かが息子と一緒に夫が作ったバスケのゴールにボールを投げてくれないかと待ち続けました。

それは、彼の一周忌の早朝のことでした。墓地の芝生は昨夜の露でまだ湿っていました。墓石の前に何かが置かれています。「誰かが私より早くにおまいりしてくれたのかしら」と呟きました。綺麗な花束がリボンで飾られて置かれていました。この優しくて思いやりのある行いは彼女の心を打ちました。おもわず涙が頬を流れ落ちます。それはまるで優しい抱擁に出会ったように感じました。涙で曇った目で、贈り主の書かれていない白いカードを読みました。たった三文字が書かれていました。"I remember too." (私も覚えています)と。

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11 コメント

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今日の写真 (anikobe)
2005-09-07 16:49:29
poloさんの大切になさっている叔母様の形見の燈籠ですね。

いつ見ても良いなぁととおもいます。

大切にしていらっしゃいますね。

「若くない未亡人」にもよく似た出来事があるのですよ。

毎月、月命日にお墓に参っていますが、時々、夫が好きだったタバコを蝋燭たてに立ててくれているのです。フィルターだけが残っていたり、すぐ消えたらしく長いままだったり・・・

どなたか分かりませんが・・・家のもの以外に、お参りしてくれる人がいることを、亡夫のために喜んでいます。
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いい話有り難う (じゃこしかです)
2005-09-07 17:59:02
 本当にいいお話で有り難う。感動しています。

こんな人ばかりですと、世の中もっともっと住み易くなるのでしょうね。



 北海道にも14号台風が近付いて居り、とにかく心配です。
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残された子供 (かと)
2005-09-07 20:20:09
中学の時、父がガンで亡くなりました。

ガンですから突然というわけではなかったのですが、それでもショックでしばらくは呆然と過ごしました。

日本には1周忌とか3,5,7、13回忌といって法要をする習わしがあってそのたびに親戚が集まって故人の思い出話をしたりするのはいい習慣なんだなと思わされました。

anikobeさんの墓前のタバコもいいお話。

無名のカードも心温まるお話ですね。

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anikobeさん、こんばんは (polo181)
2005-09-07 20:49:30
コメントを有難う。最初の返信が何処かへ飛んでしまったので、これが二度目の返信です。

あの灯籠は私にとっては宝のように大切なものです。

時々水をかけてタワシで洗っています。

貴女もここでの物語と同じようにご主人に先立たれたのでしたね。すっかり忘れていました。墓前に誰かがお参りをしてくれている形跡をみつけるととても嬉しいものです。私も叔父のお墓の前ではタバコを吸って立てます。だから、その情景がよくわかります。よく二人のお子様を立派に育て上げましたね。尊敬しています。
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じゃこしかさん、こんばんは (polo181)
2005-09-07 20:53:59
コメントを有難う。今頃北海道では大荒れでしょうね。大きな被害がないといいのだけれど。ショートショートをお褒めいただきとても嬉しいです。もうすっかり頭が錆び付いていますから、原作に匹敵するほどの格調高い日本語が出てきません。じゃこしかさんなら、もっと上手な訳文をひねり出すことでしょう。
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かとさん、こんばんは (polo181)
2005-09-07 21:00:55
コメントを有難う。西洋人、特にクリスチャンは思い出を大切にします。応接間やリビングには必ずといって良いほど親しかった人たちの写真を飾ります。そしてその人たちの生前のことなどを思い起こします。

若き未亡人がどれほど夫を愛していたかがよくわかる

ショートだと思いました。強く逞しく子供たちのために生き抜いたに違い有りません。単なるショーツですが、心に迫る作品だと思いました。
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台風が北海道に・・・ (polo181)
2005-09-07 21:15:40
北海道関連のみなさん、アブナイと思ったら早めに避難してください。どうか、犠牲者が出ませんように、お祈りしております。
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九ちゃん (あまもり)
2005-09-07 22:00:08
この話を読んで坂本九の奥さんである柏木由紀子夫人を思い浮かべました。

九ちゃんを忘れていないよ、そう声をかけたいあげたい。
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あまもりさん、こんばんは (polo181)
2005-09-07 22:47:26
コメントを有難う。九チャンの奥さんかぁ。知らない人だけれど、(あれはショッキングなニュースだった。パイロットが早く決断していれば、海に不時着できたかもしれない。)うん、そうだね。私も九チャンは忘れない。純真な人だった。
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輪廻するには (熊子)
2005-09-08 00:33:32
50年かかるそうです。長い月日があの世にも、この世にも流れますね。あの世に召された方々が、輪廻して生まれ変わる、もしこう信じているのであれば、どうか、心の片隅でもいいから、故人を思っていてくれる人たちが、たくさんいますように。この世の人間は、自分のことで精一杯でしょうが、どうか、思いやって欲しいですね。そして、残された家族をも、思いやって欲しいです。小さな子供を残されて、父親以上の父親役を背負う母の、その苦労は、大変なことでしょう。この出来事で、人の温かみを、この家族は感じて、感謝して、生きていったのですね。この先、肉親との別れは何度経験するのでしょうね。父と可愛い甥と義兄を見送りました。もう嫌だなって何度思ったかな。
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