先日、地方議員対象のセミナーで、東洋大学の根本祐二教授(インフラ老朽化問題等に関する第一人者)から、地域を知るための「コーホート分析」について教わりました。
「コーホート分析」というと難しく聞こえるかもしれません。自分も以前はそう思っていましたがそんなことはありません。簡単に説明すれば、ある集団(コーホート:ここでは5歳階級別)の動きに注目した分析です。例えば、0歳から4歳の子供は5年たてば5歳から9歳になりますから、「5~9歳の人口」から「5年前の0~4歳の人口」を差し引けば、その世代の人口の流出入の数がおよそわかります。そしてその数を結んで折れ線グラフにすると、地域の構造が見えてきます。
本日(8月8日)、県議会の人口減少対策特別委員会が開催されるということで、議論の参考にしようと思い、2005年と2010年の国勢調査のデータを用いて、静岡市、駿河区、長泉町のものを作ってみました。
※静岡市のコーホート図(5細別階級毎に5年間で増減した人数を示したもの)
静岡市は全体の人口は減少(723,323→716,197)していますが、大学生・就職期(20~24歳)を除けば人口が流入していることがわかります。但し、グラフには載せていませんが、高齢者の減少(基本的に死亡によるものと思われる)が大きいため、全体では人口減となっています。
※駿河区のコーホート図
その静岡市の一部である駿河区では、実は人口が増えていて(208,055→213,059)、グラフを見ればわかる通り、大学生の世代と子育て世代(30~39歳)の流入が多くなっています。駿河区には大学が多いこと(静大、県立大、英和学院大)と、恐らく、駅周辺に作られたマンション等に子育て世代が転入してきたこと(確信はありませんが)等が背景にあるように思います。但し、45歳以降の世代が流出していることから、駿河区にしばらくいてから転勤や自宅購入等の為に転出、あるいは、高齢者の中には、別に住む子供のところに引っ越すという方もいるのかもしれません。
※長泉町のコーホート図
最後は、今なお人口増加が続き、出生率も高いことで知られている長泉町です。長泉町も大学生・就職期を除けばほぼ人口は流入か若干の流出です。注目すべきは早期の子育て世代(25から34歳)の流入です。長泉町は出生率が高い(2012年の合計特殊出生率は1.99)のですが、それはこのグラフを見る限り、結婚して子供を産み育てたいと元々考えている世代が、子育てがしやすい長泉町に他地域から流入してきた結果として現れた数字の可能性が高いと考えるべきでしょう。
つまり、以前から長泉町に住んでいる方が町の政策によって結婚や出産、子育てに目覚めたということであれば、その政策を他の自治体も実行すれば、県全体の出生率を上げることにつながるはずです。しかし、コーホート図や、長泉町の出生率の推移(継続的に上昇しているわけではなく大きな変動あり)を見る限り、そうとは言いにくいと考えられますので、長泉町で出生率が上がっているのだから他の地域でも出来ると考えるのは少し早計ではないかと思います。
この点については、人口減少対策特別委員会で指摘し、より客観的な分析をするよう要請しました。
※平成26年8月8日 人口減少対策特別委員会
コーホート分析にご関心がある方は、ぜひ、次の根本教授の著書をお読み下さい。
お読み下さり、ありがとうございます。
追記:
国会議員秘書時代の先輩から伺って、埼玉県滑川町のコーホート図も作成してみました。
※滑川町のコーホート図
人口が増加し続けている滑川町ですが、長泉町とは違い、子育て世代だけでなく、高校生、大学生の世代や、40代、50代も流入しています。池袋から電車で1時間程のところながら自然も豊富ということで、通勤や通学が可能な、東京や周辺のベッドタウンとして発展しているようです。町内もしくは周辺に大きな工場等が出来て転勤してきた人もいるのかもしれません。
「コーホート分析」というと難しく聞こえるかもしれません。自分も以前はそう思っていましたがそんなことはありません。簡単に説明すれば、ある集団(コーホート:ここでは5歳階級別)の動きに注目した分析です。例えば、0歳から4歳の子供は5年たてば5歳から9歳になりますから、「5~9歳の人口」から「5年前の0~4歳の人口」を差し引けば、その世代の人口の流出入の数がおよそわかります。そしてその数を結んで折れ線グラフにすると、地域の構造が見えてきます。
本日(8月8日)、県議会の人口減少対策特別委員会が開催されるということで、議論の参考にしようと思い、2005年と2010年の国勢調査のデータを用いて、静岡市、駿河区、長泉町のものを作ってみました。
※静岡市のコーホート図(5細別階級毎に5年間で増減した人数を示したもの)
静岡市は全体の人口は減少(723,323→716,197)していますが、大学生・就職期(20~24歳)を除けば人口が流入していることがわかります。但し、グラフには載せていませんが、高齢者の減少(基本的に死亡によるものと思われる)が大きいため、全体では人口減となっています。
※駿河区のコーホート図
その静岡市の一部である駿河区では、実は人口が増えていて(208,055→213,059)、グラフを見ればわかる通り、大学生の世代と子育て世代(30~39歳)の流入が多くなっています。駿河区には大学が多いこと(静大、県立大、英和学院大)と、恐らく、駅周辺に作られたマンション等に子育て世代が転入してきたこと(確信はありませんが)等が背景にあるように思います。但し、45歳以降の世代が流出していることから、駿河区にしばらくいてから転勤や自宅購入等の為に転出、あるいは、高齢者の中には、別に住む子供のところに引っ越すという方もいるのかもしれません。
※長泉町のコーホート図
最後は、今なお人口増加が続き、出生率も高いことで知られている長泉町です。長泉町も大学生・就職期を除けばほぼ人口は流入か若干の流出です。注目すべきは早期の子育て世代(25から34歳)の流入です。長泉町は出生率が高い(2012年の合計特殊出生率は1.99)のですが、それはこのグラフを見る限り、結婚して子供を産み育てたいと元々考えている世代が、子育てがしやすい長泉町に他地域から流入してきた結果として現れた数字の可能性が高いと考えるべきでしょう。
つまり、以前から長泉町に住んでいる方が町の政策によって結婚や出産、子育てに目覚めたということであれば、その政策を他の自治体も実行すれば、県全体の出生率を上げることにつながるはずです。しかし、コーホート図や、長泉町の出生率の推移(継続的に上昇しているわけではなく大きな変動あり)を見る限り、そうとは言いにくいと考えられますので、長泉町で出生率が上がっているのだから他の地域でも出来ると考えるのは少し早計ではないかと思います。
この点については、人口減少対策特別委員会で指摘し、より客観的な分析をするよう要請しました。
※平成26年8月8日 人口減少対策特別委員会
コーホート分析にご関心がある方は、ぜひ、次の根本教授の著書をお読み下さい。
「豊かな地域」はどこがちがうのか―地域間競争の時代 (ちくま新書) | |
筑摩書房 |
お読み下さり、ありがとうございます。
追記:
国会議員秘書時代の先輩から伺って、埼玉県滑川町のコーホート図も作成してみました。
※滑川町のコーホート図
人口が増加し続けている滑川町ですが、長泉町とは違い、子育て世代だけでなく、高校生、大学生の世代や、40代、50代も流入しています。池袋から電車で1時間程のところながら自然も豊富ということで、通勤や通学が可能な、東京や周辺のベッドタウンとして発展しているようです。町内もしくは周辺に大きな工場等が出来て転勤してきた人もいるのかもしれません。