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田舎ぐらし(88)

ー 年寄りの冷や水 ー


 

 少し体を動かそうと、家内といっしょに運動場へ向かった。 観覧席の最上段の通路に上がる。上には屋根があって通路は日陰になっている。
いつもはたんぼの間を30分ほど歩いてからここへ来てスクワットや速歩をやるが、今日はたんぼの30分は省略。とにかく暑い。。

 こんな猛暑日に出てくるなど、年寄りの冷や水と言われるかもしれない。はじめは年寄りと冷や水の組合せがわからなかったが、年寄りが冷水をかぶるのは体によくないというところから来ているらしい。吉田兼好も「力衰へて分を知らざれば病を受く」と言っている(「徒然草」第131段 )

 要するに、「分」つまり身の程をわきまえろというわけだ。
それじゃぁ、病気にならないためには身の程を大きくすればいいということになる。大きくならないまでもせめてこれ以上小さくならないようにと、田舎に引っ込んで以来何年もここに通っている。

 観覧席から見下ろすと、グランドの向こう端からこちらへ歩いてくる人が見えた。杖をついている。足が悪そうである。すぐに歩行訓練だとわかった。それにしても速い。みるみる観覧席の下まで来ると驚いたことに20段はある階段を上り始めた。一番上まで来ると今度はそろそろと降りていく。気温がもう少しで40度C に届きそうだという日である。

 訓練といえば、以前、女子アナウンサーが主催する発声法のセミナーに参加したことがある。声の出し方を教えてもらおうと思ったのである。講師は、「実は私、脳梗塞で声が出なくなったんですよ」と言い、「懸命に発声トレーニングをして仕事に復帰できました。」と言った。

 病気や怪我で体の機能がいきなり低下することがある。だからといって、体も脳も使わなければちぢこまってしまう。体験からいうと、骨折して二か月ギブスをつけていたふくらはぎの筋肉はもう何年も経つというのにいまだに突っ張ったままである。トレーニング不足だったにちがいない。これ以上体力を落とさないためには足腰を鍛錬するしかない。

( 次回は ー もの言わぬ子 ー )

 




 
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