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田舎ぐらし(191)

 ー 年寄りの冷や水 ー
 
 

 お昼少し前、支度をして近くの運動公園にあるグラウンドへ向かった。
野球帽にTシャツ、薄手の長ズボン、運動靴という恰好である。

 グラウンドに入る。例によって人っ子ひとりいない。ふとスタンドの端を見ると同年配の Kさんの顔が見えた。しばらくぶりである。定年後工事現場の安全管理の仕事に係わり、社員研修を担当している。

 「少々暑くても外に出て体を動かした方がいいですね、子どもの頃はしょっちゅう川に泳ぎに行ってたものです」と言うと、K さんも「私もよく川を向こうへ泳いで渡りました。溺れかけたことも2・3度ありましたよ。」と応じた。

 そんな怖い思いをした人が35度を超えようかという日にスタンドでウォーキングをしている。子どもの頃の無鉄砲は大人になっても治らないものらしい。
 
 話が “ 今どきの若者 ” に及ぶ。 K さんが今どきの若者はすぐに会社を辞める、と苦笑した。なぜ辞めるのかというと、辞めてもすぐに次の仕事が見つかるからだそうである。コンビニの仕事なんかいくらでもあるらしい。

 それじゃぁ、老後が困るだろうにと言うと、そんな先のことは考えていないのだという。カサブランカのハンフリー・ボガードにそんな台詞があった。

 さて、年寄りの冷や水の開幕である。まずサッカーコートの長辺を速足で向こうへ行く。歩いて帰る。これを数回。次いで同じことをトコトコ駆け足でやる。行って帰るたびに水を飲む。これだけ。それでもシャツは汗でびっしょりになる。

 年寄りの冷や水と笑われる心配はない。なにしろ、グラウンドには誰もいない。家内は横にいて、同じことをやるがこっちは青息吐息、笑う余裕などない。

 
 
 

 

 




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