ー 懸 垂 ー
懸垂が8回できるようになった。
大抵は公園の桜の枝にぶら下がる。腕の曲げ伸ばしに調子を合わせて枝がしなるから割と楽である。
家に自作の鉄棒があるけれど、冬場は鉄の感触が厭で敬遠気味。
公園の樹の枝にぶら下るのは保存上よろしくないと、ひょっとしたらご注意を賜るかもしれないが、その枝は高さといい、太さといい、うってつけである。桜にしたところで、ただボーッと突っ立っているだけでは退屈だろう。
先日、近くの医大の学生らしいのが3人、グラウンドで野球のノッキングをしていた。そこへ公園事務所の係らしいのがやって来てやめるように注意をした。誰もいない広いグラウンドの端の方を使っていただけなのに。見て見ぬふりという選択もありそうなものだが所詮石頭、期待する方が無理である。
それはともかく、枝にぶら下るには理由がある。介護のご厄介になるのが厭だからである。現在65歳以上では18.3パーセントが要介護らしいが、75歳以上になると31.5パーセント、およそ3人にひとりが要介護状態になる(産経新聞 2022.12.18)。
単独世帯も多い。厚労省の2021年国民生活基礎調査によると、高齢者の単独世帯は49.3パーセントにのぼるという(同)。寝たきりになったらだれが介護してくれるのか?
歩けなくなることの不自由さは足を骨折したことがあるから身に沁みている。家の中ではけんけんしながらテーブルから椅子、椅子からカウンターと伝い歩きだった。スーパーに行くときは軽の後部座席に松葉杖を放り込み、店内ではカートを前に進めながら、他の客に杖を蹴飛ばされないように用心しなければならなかった。
だからうちでは雨でも降らないかぎり家内とふたりで外に出る。田んぼの中の道を歩き、公園で懸垂をやる。夫婦そろって歩いている人はほかに二組いる。日に2回歩く人もいる。― 転ばぬ先の桜かな。ー