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同人サークルA-COLORが北海道をうろうろしながら書いているブログです

スピーク

2012-01-28 18:41:33 | 映画-2012年

「廃墟ホテルに行ってみた?」

「廃墟を訪れた撮影スタッフが厄介ごとに巻き込まれる主観撮影(P.O.V.)によるホラー映画」という、「オレのために作ってくれたの?」っていうぐらい興味津々なテーマの映画です。

主観撮影って賛否両論ありますがオレは好きです(もちろん、ダメな映画もありますが)。
特にお気に入りは『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』です。
ゾンビを動画で撮影して、ネットでアップしてみんなで共有しちゃう、あの感覚や世界観が好きなんです。

廃墟に関しては、我々A-COLOR的に廃墟を舞台にしているってのがタマランです。
廃墟って、もちろん実際に訪れるのが一番楽しいのですが。
物理的な距離や費用、倫理的・法律的に立ち入りにくい場所でも、動画で見せてもらえるというのはすごく嬉しいし、見ていて楽しいです。
自分が行くことのできない世界を動画にして見せてくれるんですからね!

『スピーク』は、この2つを融合させたというのだから面白くないわけがない……と思っていました……。

以降、感想はネタバレありで。

主観撮影によるモキュメンタリー(ドキュメンタリー的手法のフィクション)は相性が良く、『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』や『REC』といった名作があります。
『スピーク』もモキュメンタリー風のホラーという触れ込みだったのですが…この2作と比べるまでもなく、なんともイマイチでした。

何をしに廃墟ホテルに来たんだ

件の心霊ホテルに入って早々、なぜかボールが転がってきて「心霊現象!?」ってなるシーンがあるんですが。
スタッフの悪戯だったとすぐにバラします。
それはそれでいいんですが(画面に映ってないスタッフが、意に沿わず怖がらせるっていうシチュエーションが続いて、うんざりしますが…)。
そのせいで画面の隅をサッと人影がよぎるシーンが、悪戯だったのか心霊だったのか分かりにくくさせています。
「誰も人影に気付かない」っていうのはリアル感があって怖いんですが(カメラマンが、すぐに怪異に気付くのってわざとらしすぎる)。
結局、この人影について誰も検証しようとしないので、物語的にどうでも良い扱いになってしまってます。なんだよそれ。

そもそも「心霊現象の起きるホテルを探索」するはずだったのに、ホテル内を探索すらしません。
ホテル内の下調べもせずに、しかも入ってすぐ近くの部屋でいきなり降霊術を始めてしまう、その無神経ぶり!
(作中の言葉通りならホテル内に入って10分程度で)
廃墟を探索に来たんだから、まずはホテル内を探索するのが普通じゃない?
上映時間が81分なので、とっとと話を進行させたいという事情はわかるけど。
おかげで「廃墟ホテル」そのものが持つであろう、独特のたたずまいや怖さというのはほとんど描かれていません。

というわけで、のっけから話に乗れませんでした。

モロ出しばかりじゃ怖くない…

降霊術に成功しちゃったもんだから心霊現象が彼等に降りかかり、てんやわんやになるんだけど…。

曰く付きの207号室がカラスの巣になってた件は、不潔さも相まってそこそこ不気味ではありました。
(なんで降霊術をする前に、ここを下調べしないのかまったく理解できないけど)
でも、怖いのはこの辺までです。

あとは役者たちが「く、苦しい…! 死ぬ!」みたいな演技をして、テキトーに死んでいくだけ。全然怖くねえし。
挙げ句、ビデオカメラに心霊的なものがガンガン写りこんできちゃうので、すっかり興醒め。
こういうのは、いるかいないかわからないから怖いんじゃないの? モロ見せじゃ情緒も何もない。ってか、冒頭の人影は何だったのさ。

リアリティがないモキュメンタリーは怖くない

それと彼等はホテルに閉じこめられて出られない、という状況なんですが。
ちょいちょい出られそうな場面があります。
たとえば窓が一面レンガに覆われてるというんですが、降霊術をやった部屋は明らかに屋外が見えてるし。そっから出ろよ!
屋外階段に出たら下へは行かず、なぜか上に行っちゃうし(確かに「お守りに日光を当てるため屋上を目指さなくては!」という理由も一応あるんだけど…)。
一応、階段で「下には降りられない!」っていうセリフを吐くんですが、彼等は2~3階にいるわけで、降りようと思えば降りられるでしょ。それこそ死ぬ気になれば。

んで、3階建てのホテルの屋上に出るんですが、茶番を演じた挙げ句、意を決してまたホテル内に戻ります。
屋上に出たんなら、普通は大声で助けを呼ぶとかしないか? ってか、なんでこいつらはケータイ電話を使わない? むしろ屋上からでも飛び降りろよ!

そしてホテルに戻って、なんだかんだがあって全滅して終わります。
特にホテルの因縁がどうのこうのというのはなくて、さりとてホラー的に怖い演出もなく、テキトーに死んでました。

といった感じで、非常に頭が悪そうな脚本と展開なんでリアル感が無く、モキュメンタリーっぽさが台無しになってます。
そのくせ演出の安っぽさだけは、いわゆるモキュメンタリーっぽいので酷い出来でした。

「心霊スポットになっている廃墟に飛び込む撮影スタッフもの映画」といえば、日本では『怪談新耳袋 殴り込み!』シリーズがありますが、こっちの方が断然怖くて笑えて面白いです。
っていうか、すこしはこれを見習えよと言いたいぐらい。

廃墟映画の見所

先にも書いていますが廃墟ホテルを探索してくれません。
なので、じっくりと廃墟ホテルを眺める楽しみはあまりありません。
ただ、ホテルという生活感のある空間なので、カラスの巣になっている207号室の不潔感とかは良い雰囲気でした。
ただし、こういった廃墟ホテルが持つ独特の怖さ、ってのを期待したい人にはオススメできません。

『スピーク』(DVD)
監督:アンソニー・ピアース
出演:スティーヴン・ネルソン、クリスティーナ・アナパウ、ウナ・ジョー・ブレイド、他
点数:4点


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