「絶望に身をよじれ~」
けっこう、オレってばジョジョファンなんですよ。ガキの頃から、ジョジョの名ゼリフで遊んでたし。他のマンガよりも思い入れは強い方です。
なので、ハッキリ言って観る前から、期待ほどには面白くないだろうなと思ってました。
「原作」に対する思い入れが強ければ強いほど、映像化されれば期待はずれに終わるというのは、これまでにも実証済みだったし。
そして、何よりもジョジョって「マンガ」として完成されてるんですよ。マンガ表現の最高峰に君臨してると言っても過言ではない。
たとえばディオが馬車から降りるシーン。多くのコマを割って、見開きを費やすという、すごく有名なシーン。
ジョジョという物語において、ディオがいかに重要な人物かを印象づける屈指の表現です。
とはいえ、あれを普通に映像にすると、ほんの一瞬で終わってしまう。だからといって、マンガと同じ表現をすればいいってものでもない。
「ディオがいかに重要な人物か」を映像で見せなければならない。表現が問題なのではなく、「ディオ」が重要なのだから。
もう一つ、ジョジョで特徴的なのは擬音の扱い。
「ギャァァーン」とか「ズギュゥーン!」とか、擬音としての(口に出して発音する)面白さもさることながら。
コマの中の絵と同じ扱いで「擬音」そのものが聴覚だけでなく、視覚的な効果を持っているっていうのも、ジョジョのマンガ表現の特徴の一つ。
これも映画で「ギャァァーン」とか「ズギュゥーン!」とか音を出せばいいというものではなく。いかに絵として表された「擬音」の効果を映像化するかが重要なんです。
とまあ、ご託を並べてみたけど。
ジョジョってマンガとしての表現が完成されていて、その表現そのものにファンがついてる部分もあるので、映画が原作を超えるのは至難だろうな、と思いながら観てきました。
……とはいえ、コレはちょっと酷すぎる!
こっから先はネタバレしてるので、未見の方はご注意を。
マンガ表現に変わる映像表現が確立できていないのは、この際、目をつぶるとしても。
それ以外の点が、あまりにも酷い。
・キャラクタの扱いがぞんざい
スピードワゴンが出ないのは、あらかじめ知っていたので、まあそれは仕方がない。
ストーリーの都合上、スピードワゴンが出ている余裕がなかったのも、まあ仕方がない。同様にジャックやストレイッツォたちが出てこないのも、まあ仕方がない。
それなのに、なぜかブラフォードとタルカスのヤラれ役として出てきちゃってる! あの軽い扱いは酷すぎる! あれなら出てこない方が良かった。
そのくせして、お笑いのスピードワゴンがダリオとワン・チェンと、かなり重要なキャラクタをやってるってのが納得いかん。もちろん、うまけりゃ、それでも良いんだろうけどさ……。
キャラクタ達への愛情がまったく感じられない。
・名ゼリフがない
そもそも媒体が違うのだから、マンガ表現が再現できないのは仕方がないと思う。
でも、セリフなら、ある程度は入れられるはず。尺やタイミングの扱いが難しいだろうけれど。
なのに、なぜか名ゼリフはことごとく削られていた。まるで避けるかのように。
なんで?
そのくせツェペリに「波紋入りのバラは痛かろう」ってセリフを言わせてる……そりゃあ死亡フラグも立つよ……。
原作、読んでるの?
・絵が下手
あんまり作画とかそういうのは、よくわからないんだけど。
それにしたって、シロートが見たって絵が下手。
ゾンビに襲われた傷の断面が、ギャートルズの肉みたいになってる。なにこれ?
・展開が無茶苦茶
マンガの長いストーリーを90分に収めるのだから、展開が変わるのは仕方がない。
でも、「なんで?」と首をかしげざるを得ないことが、しばしば。
特に納得がいかないのが、ジョジョがゾンビたちとほとんど戦わないでディオとの決闘に臨んでしまうところ。
おかげで、なぜディオが気化冷凍法で波紋を防御できるのか、さっぱり理由が分からない。
(原作ではワン・チェンやジャックの戦闘結果から、ディオは波紋が血液の流れに関係すると分析している)
というか、気化冷凍法の根拠さえ分からないので、ディオが氷を操れる魔法使いみたいになっている。もう、これじゃあ吸血鬼どころの話じゃないでしょ。
いや、まあ、それでも吸血鬼の能力ということで納得できなくはないけど。
ジョジョとディオのバトルでも、ジョジョが気合いで気化冷凍法を破って、波紋をぶち込んでしまうのだ。
ジョジョの面白いところは、現実的かどうかはさておき、色々な知恵を使って強大な敵に打ち勝っていくところなのに。気合いって、あんた……。
これじゃあジョジョを読んでるとかいう以前に、そもそもジョジョが嫌いなんじゃないの? と思ってしまう。
・太平洋……
エリナとのハネムーンで船でアメリカへ向かうんだけど、なぜか「太平洋」と画面に表示される……もう、何も言いたくない……。
・リサリサ……
んで、ラストではリサリサを助けもせずにエリナは船を脱出。
ジョセフが生まれないぞ~。
2部はやりませんっていう意思表示なのかしら。
そんなわけで気に入らないところを列挙してみたけど、とにかくこの映画を見て感じたのは、作った人たちはジョジョを蔑ろにしてるってこと。
どういう意図があったのかは知らないけれど、原作に対するリスペクトや好意というものがまったく感じられなかった。
これは監督がどうのこうのっていうより。お金を出したり、口を出したりといった、お金の臭いを嗅ぎつけて群がってきた有象無象が、この映画をこんなモノにしてしまったのではないか、と思わなくもない。
とはいえ、こんなものを世に出してしまったのだから、やっぱり作った人たちにも大きな問題はあるともう。
ついでに言うと、二段階に分けていた前売り券制度や、複数回見ないともらえないオリジナルグッズとか、くだらないキャンペーンもやめてほしかった。人をバカにするのもいい加減にしろと言いたくなる。
ジョジョファンとして、ホントに悲しくなる映画だった。
『ジョジョの奇妙な冒険 ファントム・ブラッド』(映画館)
http://www.jojo-movie.com/
監督:羽山純一
出演:小西克幸、緑川光
点数:2点(ジョジョファンなので-1点)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます