「お笑いは映画でコントを目指す」
松本人志の第1回監督作品ってことで、いったいどんなもんを撮るんだろう? と興味本位っていうか、怖いもの見たさってカンジで観に行きました。
そういえば、この映画と全然関係ないんだけど、『食い逃げされてもバイトは雇うな』で「第1回監督作品」って言葉は「数字がうまい」と書かれてたっけ。
この表現は一般化されたら、あんまりインパクトがないよね。
んで、映画の感想だけど。けっこう面白かったです。かなり笑えました。
冒頭、ロンゲの松本に向かって画面外の人が質問を投げかけ、それに応答するという、かなり面食らう始まり方をする。
以後、ずっとこの画面外の人は松本に向かって質問を投げかけ、松本は画面外の人=カメラ目線で応答するという手法で進行していく。
後に、この画面外の人は松本=大日本人を取材するインタビュアーであると判明するんだけど。このインタビュアーは一度もスクリーンに登場することなく映画は終わる。
我々観客にとっては、スクリーンの向こうにいるはずなんだけど一度もフレームインしない人。
スクリーンの中の人にとっては、自分たちと同じスクリーンの中にいる人のはずなんだけど、決してスクリーンには映ってこない人。
そのくせ「インタビュー」という形で、積極的に大日本人に関与して、ストーリーを進めていく人。
観客とも違うし、スクリーンの中の人とも違う、第三者的な立場からスクリーンの中に介入する人。
なんとも不思議な立場の人なんだけど、こういう立場の人ってバラエティ番組なんかではよく見かける人だ。
いわゆる楽屋オチというか、制作側でありながらテレビに映っている人に関わってくる人。
この映画は、バラエティ番組的な手法も使った映画ともいえるかもしれない。
その後、大日本人が日々の暮らしをインタビューに答えていく、という形式で淡々とストーリーが進行していく。
ただし淡々なんだけど、日々の暮らしを通じて、「大日本人」という観客にとって謎の存在が徐々に明らかになっていく。
このへんの件に、細かい笑いが散りばめられていて、このへんもシチュエーションコントっぽくて笑える。
んで、怪獣が現れるに至って、ついに大日本人のベールが明らかに――ようするに大日本人というのは、ウルトラマンのような巨大化するヒーローだったのだ。大きくなるから、大日本人なのかね?
このシーンは、妙に不格好なCGとなる大日本人と、やたらと生々しいディティールなCGの怪獣とが戦う。
大日本人と怪獣の対決は、動きの面白さや滑稽なやり取りがあって、けっこうストレートなお笑いだった。
ただ、妙にヌメッとして生々しい怪獣には、やや引いたけど……。ってか、気持ち悪い(笑)このへんも狙いだったのかな?
ちなみに、これらの怪獣はみんなカメオ出演の俳優たちが演じている。
こうして普段の大日本人=シュチュエーションコントと、大きくなった大日本人=ストレートなコントを交互に繰り返しながら、笑いのテンポが上がっていく。
そして、ラスト。
ネタバレになるから、この先は未見の人は注意してほしいけど。
最強の敵を相手にして大日本人が苦戦していると、突然、「ここから先は実写です」とのアラートが鳴る。
そして、怪獣との対決シーンがCGではなく、実写になるんだけど……モロに『ダウンタウンのごっつええカンジ』のトカゲのオッサンばりのチープな作り。
っていうか、ごっつのコントそのまんま。
んで、謎のアメリカンヒーローが身も蓋もないドツキ合いをして、一方的に怪獣を倒す(余談だけど、このやっつけ方が陰惨であまり愉快ではないが)。
そして、一方的にエンド。
「おいおい」と思っていると。
エンドロールが流れる中、吉本の芸人が扮しているアメリカンヒーローたちが、先ほどの怪獣退治にダメ出し反省会をする。
このへんの楽屋オチっぽいノリなんかも、まさにバラエティ番組そのものだ。
そして、このエンドロールを含めてエンドとなる。
なんだか、随分と一方的な終わり方だな~、と思ったのが正直な感想。
まあ、お笑いなんだから物語としてのオチとか、そういうのは求めちゃいかんのかな。
そんな中、ふと思ったんだけど。
わけありの日々の生活を淡々と捉えたり、CGを使ったバトルなんかは、全部、最後のごっつライクなラストバトルのための前振りだったのではないか、と。
んで、ごっつっぽいラストに対して、さらにエンドロールでダメ出し反省会で2段オチを付けた、とか。
とまあ、そんなことも考えたりもしました。
けっこう笑えて、かなり面白かったです。
とはいえ、映画としてみると、う~ん? と首をかしげたくもなる。
そんな作品でした。
っていうか、これ外国の映画祭で上映したらしいけど、外国人にヒーローが関西弁でツッコむというノリが理解できたのかしら?
『大日本人』(映画館)
http://www.dainipponjin.com/
監督:松本人志
出演:松本人志、UA、他
点数:6点
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