「娘貞子で、母キャリー」
コックリさんが題材ということで、『学校の怪談』みたいなもんかなと思いながら、ちょっと期待して観にいった。
最初の方は結構怖かった。理由がよく分からなかったし。
でも、凶行の理由が明らかにされるにつれて、ホラー的な恐怖はなくなっていった。
それよりも、むしろ排他的な人間社会のエゴによる社会心理的な恐怖が迫ってきた。
んで、さらに母親が焼かれながらも、盲目の娘の目になっていたという件は、作為的なんだけど怨念が満ちてくるのには充分だった。
ってなわけで、このへんまでの話の筋はわりと好みだったんだけど……。
でも、なんかヴィジュアル的にはホラー映画のヒロイン貞子とキャリーをキャスティングしたってカンジだったし。音や映像の使い方も『リング』や『呪怨』から影響を受けてるな、ってのが露骨だった。
それが悪いってワケじゃないんだけど、もうちょっと新しいモノも見てみたかった。
それと「コックリさんの呪い」っていう正体不明の不気味な原因で人々が死んでいくのが怖かったのに、なぜか最後はコックリさんのお母さんがクリーチャー化して人々を殺し回るってのが、なんか雰囲気ぶちこわしってカンジだったな。
せっかく『リング』に似せたんだから、最後までこういうトーンを貫いてほしかった気もする。
正直、コックリ母さんが出しゃばってきてからは、あんまり怖くなかった。
そういえば観てて気が付いたんだけど。
日本の怪談は「水」がキーワードになっていて、ジメジメと濡れたイメージがあるってのを誰かが言っていた。
幽霊が去った後は濡れているし、平家が沈んでいるのは壇ノ浦だし、お岩も貞子も井戸から出てくる。
それに対して、この映画は「火」がキーワードになっている。
コックリ母さんが焼き殺されるシーンでは、家が盛大に燃えさかっていたし。コックリさんも生きながらに焼かれていたし、祟りを受けた人々もたいていは焼け死んでるし、最後に主人公に至っては爆死(だよね?)している。
こういうのって国民性の違いかな……なんて思ってたら、ラストシーンは雨の中での凶行でしたな。
……なんか、このへん最後まで徹底して作ってほしかったかも。
ああ、それと最後に。
映画の中身とは関係ないんだけど、日本公開にあたっての広報のくだらなさ加減には辟易した。
だってさ、まがりなりにもホラー映画なのに、「若手お笑い芸人の、あの2人がコックリさんに!?」って、悪夢のようなパンフ(?)が出てるんだもん。
おまけに公式ホームページでは、コックリさんのウィジャ盤までダウンロードできる始末。
こういうのって広報も含めて、映画の雰囲気作りをしてほしいよなぁ……と溜息が出た。
『コックリさん』(映画館)
http://www.movies.co.jp/kokkurisan/main/index.html
監督:アン・ビョンギ
出演:キム・ギュリ、イ・セウン、イ・ユリ、チェ・ソンミン、チェ・ジョンユン、ウン・ソウ、他
評価:5点(センスがなさすぎる邦人広報は0点)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます