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歯科矯正「実質無料」が“治療中断で健康被害” 150人余が提訴

2023-06-06 20:46:51 | ニュース
https://www3.nhk.or.jp/                                                                                     NHKnews
歯科矯正「実質無料」が“治療中断で健康被害” 150人余が提訴
2023年6月6日 19時19分 IT・ネット
実質無料で歯科矯正ができるとしてモニターの契約をしたのに高額の費用を払わされた上、治療を中断され歯並びが悪くなるなどの健康被害を負ったと主張して全国各地の女性など150人余りが歯科医院などにあわせて2億6000万円余りの賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。
訴えを起こしたのは、東京や福岡などで展開する歯科医院に通っていた女性など150人余りで、6日に裁判所に訴状を提出したあと記者会見しました。

弁護士などによりますと、女性などは3年前から去年にかけて「歯科医院のモニターになれば報酬を支払うので、マウスピースを使った歯科矯正を実質無料で行える」と誘われて都内の会社と契約を結んだということです。

しかし報酬の支払いが滞り、多額のローンを抱えることになったうえ、ほとんどの歯科医院が閉院して治療が中断されたため、かえって歯並びが悪くなるなどの被害が生じたと主張して、歯科医院や契約を結んだ会社などにあわせて2億6000万円余りの賠償を求めています。マウスピースを使った歯科矯正はマスクで口元が隠れていたコロナ禍に目立たず矯正ができるとして若い女性たちを中心に人気が高まりました。

この歯科医院などをめぐっては同様の被害を訴える患者たちがことし1月にも東京地裁に訴えを起こしていて、原告の数はあわせて300人あまりにのぼっています。原告の20代の女性は「矯正のために歯を削られ今も歯がしみる状態で、これからどうなるのか不安だ。1人では何も出来ないと思っていたが、ほかにも同じような被害を受けている人がいることを知り、自分も訴訟に参加することにした」と話していました。

会社側「歯科医師が全責任」 歯科医師「自分は関係ない」
 患者と契約を結んだ会社「THE GRANSHIELD(グランシールド)」は、NHKの取材に対し、弁護士を通じてことし4月下旬に文書で回答し「モニター顧客と締結した責任ある契約については支払い、疑義のある契約については今後慎重に対応を検討していく方針です。歯科医院の治療内容については歯科医師が全責任を負っているため、コメントする立場にありません」としています。また今回の訴えについては「訴状はまだ送達されておらず、コメントできる状況にない」としています。伊藤 歯科医師一方、ともに被告となっている歯科医院「Dental Office X(デンタル・オフィス・エックス)」で歯科矯正を担当していたとされる伊藤剛秀 歯科医師はこれまでの取材に対し「会社の社長たちと一緒に歯科医院をオープンして『利益が出たらその利益を分けよう』と話していたが、会社からは利益を受け取っていないし、運営にも参加していない。モニター制度を始めると聞いた時には『やめろ』と反対したし、その後は歯科医院と関わりを持たなくなったので、自分は関係ない」と話しています。

SNSの「オープンチャット」機能でつながった各地の患者たち
中心となったのは、原告の1人で、東京都内の会社で働く30代の関口亜里紗さんです。

契約を結んだのはコロナ禍だったおととし8月。マスクで口元が隠れている間に歯並びをよくしたいと考えていたところ「歯科矯正のモニターを募集している」という情報をSNSで見て問い合わせました。

対応にあたった男性から「症例を集めるのに協力してくれればモニター代を支払うので、治療費は実質的に無料になる」と言われ、ローンを組んで治療費をいったん全額支払ったということです。当初は順調に矯正治療が進み、モニターの報酬も毎月5万円ずつ支払われていましたが、去年3月、知らない会社から「ウクライナの戦争の影響でモニター代の支払いが遅れる」という連絡が来て、その後、支払いが止まってしまったといいます。

150万円のローンが残っていた関口さんは何が起きたのか真実を知りたいとSNSで検索してみると、ほかにも多くの人が突如支払いを止められ、困っているとつぶやいているのを見つけました。

「この人たちとつながれば何かできるかもしれない」と感じ、SNSの「オープンチャット」という機能を使って匿名で話し合いができるグループを作り、情報を共有しないかと呼びかけたといいます。

参加者は徐々に増え、話を聞いてみると、ほぼすべての人が関口さんと同じ、または系列の歯科医院の患者で、似たような説明を受けてモニター契約を結んでいました。

さらにその後、歯科医院が突然閉院し、治療が中断されたということで、関口さんをはじめ、チャットのメンバーからも歯並びがおかしくなったなどの訴えが相次ぎました。

消費生活センターなどに相談した人もいましたが「仮に会社を訴えても裁判費用のほうが高くなりますよ」などと言われたということで、解決策を見つけられずにいました。

チャットでの話し合いを重ねるうちに、関口さんは集団訴訟を起こせないかと考えるようになりました。

複数の人が一緒に訴えを起こせば、証拠を共有できるほか、裁判にかかる費用も1人あたりの負担を軽くすることができます。ただ、チャットでつぶやいてもこれまでの経緯から疑心暗鬼になっている人もいて「集団訴訟の話も詐欺ではないか」、「あなたのことは信用できるのか」といった心ないことばを投げかけられることもあったということです。

それまで匿名でやりとりしていた関口さんですが、信用してもらうために顔や名前を明かしてオンラインでの説明会を繰り返し開き、裁判への参加を呼びかけました。その結果、これまでにおよそ300人が原告になることを決意。費用も1人あたり5万円ほどで抑えられたということです。

関口さんは「矯正をして思い切り笑えるようになりたかったのに、歯が気になって笑顔も作れません。治療費が返ってきただけでは足りないと思っています。自分1人では限界がありますがいろいろな人が集まることで限界を超える情報を得ることができました。1人で困っている人がほかにもいるのではないかと心配しています」と話しています。
SNSでつながり訴訟へ 弁護士「被害者救済へ新たな可能性」
消費者被害に詳しい佐々木幸孝 弁護士は「これまでの消費者トラブルでは被害者は砂をまいたように散在していて、1人ではどうしていいか分からず泣き寝入りせざるを得ないことも多かった」と指摘します。

消費者トラブルの多くは被害者どうしのつながりがないため、集団訴訟を起こす場合には弁護士などが被害者を探し出し参加を呼びかけることが一般的で、今回のように被害者みずからがつながり、訴訟を起こしたケースは珍しいということです。

被害者が被害回復を訴えられる制度としては、佐々木弁護士が副理事長を務める「消費者機構日本」など国の認定を受けた消費者団体が被害者に変わって訴訟を起こし救済をはかる制度が7年前に設けられましたが、賠償金を確実に支払える相手でないと制度の活用は難しいのが実情だといいます。

佐々木弁護士は「いまの制度には限界がある中で、見ず知らずの被害者どうしがSNSでつながり訴訟に発展させた。被害者救済に向けた新たな可能性を感じさせる」と話しています。
「美容医療サービス」に関する相談 近年増加傾向に
国民生活センターによりますと、歯並びを良くしたいなどの目的で行われる歯科矯正を含む「美容医療サービス」に関する相談は近年、増加傾向にあるということです。

去年4月から12月末までに寄せられた相談は2464件で、前の年の同じ時期の1853件に比べ率にして30%余り多くなっています。

歯科医師などでつくる日本矯正歯科協会の和島武毅 会長は「コロナ禍でマスクで口元が隠れている間に歯並びを治したいと歯科矯正をする人が増えていると感じている。一方で、中には歯科矯正に関する専門的な知識や経験が乏しい歯科医師もいて、トラブルになるケースもある。矯正治療を受ける場合には担当の歯科医師から治療費などについて十分な説明を受けてほしい」と話しています。 

先週末の大雨 100年に1度より頻度が低い「まれな雨」

2023-06-06 06:42:13 | ニュース
先週末の大雨 100年に1度より頻度が低い「まれな雨」
2023年6月6日 5時38分 気象
記録的な雨量を観測した先週末の前線による大雨で浸水被害が相次いだ愛知や静岡、茨城や和歌山では、その地域にとって100年に1度よりも頻度が低い「まれな雨」だったことが防災科学技術研究所の分析で分かりました。
「防災科学技術研究所」は観測された雨量がその地域にとってどの程度珍しいか、具体的には「どのくらいの期間に1度起きるか」を過去のレーダーによる解析データなどから計算し、珍しさの度合いに応じて6段階に評価した結果をウェブサイトで公表しています。

それによりますと、東日本と西日本の多いところで総雨量が400ミリから500ミリ前後に達し、各地で浸水被害が相次いだ先日の大雨で、東海地方では3日午前3時までの24時間雨量が豊橋市や浜松市を含む愛知県東部や静岡県西部を中心に6段階のうち最も珍しい「100年に1度よりも頻度が低い」まれな大雨となっていたことが分かりました。

また関東甲信でも3日午前3時までの24時間に、茨城県で100年に1度よりも頻度が低いまれな雨となった地域があったほか、埼玉県南部や東京23区でも5年から30年に1度程度のまれな雨となっていました。

さらに、近畿でも川の氾濫が相次いだ和歌山県北部を中心に、2日午後1時半までの6時間の雨量が100年に1度よりも頻度が低い大雨となっていました。

豪雨災害の被害実態に詳しい静岡大学の牛山素行教授は「どれくらいの雨量だと災害が起きるのかは地域差が大きく、例えば24時間雨量なら数倍の単位で違うため雨の絶対量だけでは危険度が十分わからない。その地域にとってめったにない雨になっているかを知ることは防災上有効で、このウェブサイトや気象庁のキキクルなどでも危険性を知ることができる。これからの大雨の季節に、こうした情報を活用してほしい」と話していました。
防災科学技術研究所