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ジェンダー平等 日本125位に後退 政治参加の分野で格差大きく
2023年6月21日 19時39分 ジェンダー
世界各国の男女間の平等について調べた調査で、日本は政治参加の分野で格差が大きく、調査対象となった146か国中125位となり、去年の116位から後退しました。
政財界のリーダーが集まるダボス会議の主催者・世界経済フォーラムは2006年から、「経済」、「教育」、「医療へのアクセス」、それに「政治参加」の4つの分野で、各国の男女間の格差を調べ、発表しています。
最新の報告書が21日発表され、調査対象の146か国のうち、男女間の平等が最も進んでいるのは、14年連続でアイスランドとなり、続いて2位がノルウェー、3位がフィンランドと北欧の国々が上位を占めたほか、4位はニュージーランドとなりました。
ジェンダー・ギャップ指数と呼ばれる独自の数値で評価された各国のランキングです。
最新の報告書が21日発表され、調査対象の146か国のうち、男女間の平等が最も進んでいるのは、14年連続でアイスランドとなり、続いて2位がノルウェー、3位がフィンランドと北欧の国々が上位を占めたほか、4位はニュージーランドとなりました。
ジェンダー・ギャップ指数と呼ばれる独自の数値で評価された各国のランキングです。
※()は前年の順位
1位 アイスランド(1)
2位 ノルウェー(3)
3位 フィンランド(2)
4位 ニュージーランド(4)
5位 スウェーデン(5)
6位 ドイツ(G7)(10)
7位 ニカラグア(7)
8位 ナミビア(8)
9位 リトアニア(11)
10位 ベルギー(14)
15位 イギリス(G7)(22)
30位 カナダ(G7)(25)
40位 フランス(G7)(15)
43位 アメリカ(G7)(27)
79位 イタリア(G7)(63)
105位 韓国(99)
107位 中国(102)
125位 日本(G7)(116)
146位 アフガニスタン(146)
日本は過去最低の順位に
調査対象の国の数には変動があるため単純に比較はできませんが、今回、日本は過去最低の順位となりました。
特に「政治参加」の評価では、女性の占める割合が、衆議院議員では10%、閣僚では8.3%で、138位となり、最も低いレベルになっているとしています。
報告書では、このままいくと世界全体でジェンダーギャップを解消するには131年かかり、特に政治の分野では162年かかるとして、各国に取り組みを強化するよう求めています。
ジェンダーギャップ指数世界平均より低く
調査は「政治」「経済」「教育」「健康」の4つの分野で行われ、それを総合してジェンダーギャップ指数と呼ばれる数値で男女の平等を評価しています。
分野ごとに、数値を詳しく見てみます。指数は、1が男女の完全平等、0が完全不平等となり、数値が低ければ低いほど男女の格差があることを示しています。
日本の4分野を総合した指数は0.647。去年の0.650よりも下がっています。
これは調査を行った146か国すべての国の平均0.684よりも低くなっています。
※全体の平均は人口加重で算出
日本の課題は政治と経済
日本の課題はどこにあるのか、4つの分野別に見てみると、教育と健康の分野では指数が146か国の平均を上回っているのに対し、政治と経済は平均よりも低いうえに去年よりも下がっています。
【政治参画】0.057 対前年比↓(146か国の平均0.221)
元となる主な指数
▽国会議員の男女比:0.111↑
▽閣僚の男女比:0.091↓
▽最近50年における行政府の長の在任年数:0.000→
【経済参画】0.561↓(平均0.601)
主な指数
▽労働参加率:0.759↑
▽同一労働における賃金の格差:0.621↓
▽推定勤労所得:0.577↑
▽管理職的職業従事者の男女比:0.148↓
【教育】0.997↓(平均0.952)
主な指数
▽識字率:1.000→
▽初等教育の就学率:1.000→
▽中等教育の就学率:1.000→
▽高等教育の就学率:0.976(105位※前年は数値なし)
【健康】0.973→(平均0.960)
主な指数
▽出生時男女比:0.944→
▽健康寿命:1.039→
女性議員を増やす制度改革の議論を
女性の政治参加について詳しい上智大学法学部の三浦まり教授は、今回の結果について「各国の指数が上がっているのに対し、日本は下がっており、相対的に見て停滞している。せめて女性の閣僚を3人以上にしないと日本の順位は上がっていかない」と指摘します。
そのうえで「衆議院議員は現職優先、近年は政権交代もないため新陳代謝が起きにくい。その中で女性議員を増やすためには『クオータ制』の導入をはじめとする制度改革の議論をしていかなくてはならない」と話していました。
地方議会は女性議員が過去最多
一方で今回の調査には反映されていませんが、ことし行われた統一地方選挙では、地方議会で当選者に占める女性の割合がおよそ20%とこれまでで最も多くなりました。
三浦教授は、いくつかの要因を挙げたうえで、今後も女性議員が増えることに期待感を示します。
「すべての地域で女性議員の割合が増加しているわけではなく、今後は二極化が進んでいくだろう。ただ地方議会は議員の定数が多く無所属でも当選しやすい。特に女性の首長がいる地域では政治参加の機運が高まっていること、女性を支援しようというネットワークができてきていることなどから、まだまだ地方で女性議員が増える余地はある」
“日本の現状は「もったいない」”
OECD東京事務所の元所長で、スタートアップ企業などに投資するファンド、MPower Partnersのゼネラル・パートナー村上由美子さんは、経済的視点からみても日本の現状は「もったいない」と話します。
村上さん:
「日本は女性の教育や健康の水準が高いという意味で可能性があり、将来を考えるうえでは大きなアドバンテージです。そうした女性たちが活躍できていないのは、とてももったいない。また新たな産業やビジネスを生むイノベーションを作り出すには多様性が必須で、そのいちばんわかりやすい例が男女の比率です」
日本でも一定の規模の企業に対して男女の賃金格差の情報開示が義務づけられるなど、対策は少しずつ進んでいるとしたうえで、今後はそれをどう生かしていくかが鍵になると指摘します。
村上さん:
「経済の大原則は市場が判断して動いていくことです。新たに開示される情報を、市場や投資家、企業の幹部がどうやって企業の価値に結びつけ、活用していくのか。さらにはどのくらいのスピード感を持って動くかが大切だと思います」
「1つの突破口になりうるのは『市場の流動性』だと考えています。終身雇用で勤続年数によって報酬が決まるシステムがまだ主流ですが、出産や育児がキャリアを積むうえでの課題となるケースもあります。そこに企業がメスを入れ、うまく流動化が進めば日本の女性にとって多様な形の活躍が可能になると思います」