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PFAS 東京 多摩地域の住民に血液検査 “約2.4倍の血中濃度”

2023-06-08 23:09:23 | ニュース
NHKnews
PFAS 東京 多摩地域の住民に血液検査 “約2.4倍の血中濃度”
2023年6月8日 19時14分 環境
有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」をめぐり、専門家と市民団体が、東京・多摩地域の住民を対象にした血液検査で、平均で、国の調査のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたとする結果を公表しました。
「PFAS」は、人工的につくられた有機フッ素化合物の総称で、このうち、「PFOS」と「PFOA」と呼ばれる2つの物質は、アメリカの研究などで有害性が指摘されています。

沖縄県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などで国の暫定的な目標値を超える値が相次いで検出されたことを受け、京都大学大学院の原田浩二准教授と市民団体は、アメリカ軍横田基地のある多摩地域の住民650人を対象に血液検査を行い、8日、立川市で開いた記者会見でその結果を公表しました。

それによりますと、検査を受けた650人で検出されたPFOSとPFOAを合わせた平均値は14.6ナノグラムで、これは国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値の2.4倍にあたるということです。

PFOSとPFOAの合計の平均値が高いところでは自治体別で、
▽国分寺市で23.2ナノグラム
▽立川市で19ナノグラム
▽武蔵野市で15.8ナノグラムなどとなっています。

原田准教授は「沖縄などに続いて、多摩地域でもこうした結果が出たことから、全国的な問題だと捉えて、国や自治体が、しっかりした調査をしてほしい」と話していました。
検査受けた住民「健康に影響がないかどうか早期発見に努めたい」
8日の会見には、血液検査を受けた住民も参加し、検査を受けたいきさつや結果の受け止めについて話しました。

国分寺市に45年間住んでいるという友田絹子さん(75)は、検査でPFOSとPFOAの合計で、27.7ナノグラムの血中濃度が検出されたということです。

友田さんは「多摩地域は地下水がおいしいというので、それを使った水道水をずっと飲んできました。検査結果を聞いて、『ずいぶん高い』と感じたので、すぐに直接飲むのをやめ浄水器をつけました。国などには詳しく検証してほしい」と話していました。

また、国立市に30年ほど住んでいるという浜みゆきさん(70)は、PFOSとPFOAの合計が20ナノグラムを超えていたということです。

浜さんは「引っ越してきた時に、この地域の水道水は、井戸水を混ぜているので、おいしいと言われ、安心して使っていました。孫たちも近くに住んでいて、子どもたちの健康が心配です。結果も平均より高いことがわかったので、健康に影響がないかどうか早期発見に努めたいです。国や行政には、きちんと対策をとってほしい」と話していました。有害性が指摘されている化学物質を含む「PFAS」をめぐり、専門家と市民団体が、東京・多摩地域の住民を対象にした血液検査の平均で、国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたとする結果を公表しました。なぜ多摩地域で調査を行うのか?調査結果はどのようなものなのか、まとめました。
Q.1
化学物質の「PFAS」。一体どのようなものなのか?
A.1
有機フッ素化合物「PFAS」は、人工的につくられ、自然界には存在しない物質の総称で、4700種類以上あるとされています。水や油をはじき、熱に強いことから、テフロン加工のフライパンや食品のパッケージなど様々な製品に使われてきました。このうち「PFOS」「PFOA」と呼ばれる2つの物質は、アメリカの研究で有害性が指摘されています。こうしたことを受け、今、国内ではこれらを使用した製品の製造が禁止されています。国は、飲料水とするには、PFOSとPFOAが、1リットルあたり50ナノグラム以下(1ナノグラム=10億分の1グラム)を暫定的な目標値として設定しています。一方、アメリカでは、PFOSは0.02ナノグラム以下、PFOAは0.04ナノグラム以下を基準とすべきとしていて、わずかでも検出されるべきではないとする考えです。

Q.2
今回の血液検査は、なぜ多摩地域の住民が対象に?
A.2
市民団体と共同で調査を行った京都大学大学院の原田浩二准教授は、沖縄県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などでPFOSなどが検出されたことから、去年、周辺住民の血液検査を行いました。
多摩地域にも、横田基地があり、周辺の井戸水などから検出されていることから、市民団体と共同で実態の把握を進めようと、今回の調査を行ったということです。

Q.3
結果は?
A.3
検査を受けた650人で検出されたPFOSとPFOAをあわせた血中濃度の平均値は14.6ナノグラムで、国がおととし、全国の3地点で行った調査の平均値のおよそ2.4倍の血中濃度が検出されたということです。10人以上が検査を受けた20の自治体のPFOSとPFOAをあわせた平均値は以下のとおりです。
     人数 PFOS+PFOA平均値
国分寺市  84 23.2
立川市   47 19.0
武蔵野市  23 15.8
あきる野市 19 15.2
調布市   21 14.2
国立市   62 14.0
府中市   47 13.9
小平市   28 13.8
西東京市  29 13.4
昭島市   50 13.0
武蔵村山市 40 12.8
福生市   24 12.3
青梅市   19 12.3
小金井市  22 12.2
東大和市  17 11.6
羽村市   23 11.5
三鷹市   13 11.5
日野市   33 10.8
瑞穂町   18 9.6
八王子市  13 7.3

Q.4
検出されているのは横田基地周辺だけなのか?
A.4
都の環境局や水道局などは、地下水や井戸水、水道水の調査を定期的に行っていますが、多摩地域に限らず、都内各地で、国の暫定の目標値を超える値が検出されていて、調査の結果を、ホームページで公開しています。
PFASはかつて、幅広い用途に使われたことから国は「環境中に残っているケースが多いと想定される」としています。

Q.5
各地で検出されているとなると、不安を感じる人も多いと思うが、都はどのように対応しているのか?
A.5
都は、国の暫定目標値の1リットルあたり50ナノグラムを超えているところがないか計測し、超えているところがあれば、監視体制を強化したり、井戸からの取水を停止したりして対応しています。また、専用の電話相談窓口(03-5989-1772 平日:午前9時~午後5時)を設けています。都によりますと、5月1日からスタートした窓口には、1か月間(5月31日まで)で、およそ400件の相談があったということです。
《主な相談内容》
1自分の住むところの水道水に、どの程度含まれているのか。
2浄水器を取り付けたり、ペットボトルの水を使用したりした方がいいか。
3健康への影響はどの程度あるのか。

1や2について、こうした相談は全体の半分程度を占め、最も多いということです。窓口では、自分が住んでいる地域を伝えれば、都水道局が調査を行ったデータをもとに、その地域の浄水場や蛇口の水道水の検査結果を聞くことができるということです。3については以下のように説明を行っているということです。
▼PFOSやPFOAは日本国内では健康被害は確認されていない。
▼免疫系や血液中のコレステロールの値などへの影響が指摘されているが、どの程度の量でどのような影響を及ぼすかは、現時点で明らかになっていない。
▼国で科学的根拠に基づく議論が進められていて、この議論の状況をもとに正しい情報を提供したいなど。

国としても、不明な点が多いことから、ことし1月、国の専門家会議を立ち上げ、現状の把握を進めています。不安を払拭するためにも早急に議論を進め、適切な情報を発信していく姿勢が求められています。 

新型コロナ 今の感染状況は? 5類移行1か月

2023-06-08 21:17:08 | ニュース
NHKnews
新型コロナ 今の感染状況は? 5類移行1か月 AI予測 SNSでは
2023年6月8日 19時47分 新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染者数、「全数把握」が行われて最後に発表されたのは5月8日でした。

【5月8日 厚生労働省の発表 全国で9310人、東京都は1331人】

感染症法上の位置づけが「5類」に移行して1か月。

いま、感染者数は、いったいどのくらいになっているのでしょうか。

AIによる予測やSNSへの書き込みなどの分析から、“コロナの現状”が見えてきました。
AIで予測 東京都の感染者 6月2000人 8月は6700人とも
東京都で最後に感染者の実数が発表されたのは5月8日の1331人です。

今、東京都ではいったいどのぐらいの感染者がいるのでしょうか。

名古屋工業大学の平田晃正 教授のグループは新型コロナの感染者数やワクチン接種や感染による免疫の効果、社会活動の活発さを示す「飲み会」や「バーベキュー」といったSNSの投稿の数などを元に、AIを使って感染者数の予測を行っています。

平田教授らはことし4月、東京都の1週間平均での一日当たりの感染者数について、さらに感染力が強い変異ウイルスが現れず、夏ごろには人出がコロナ前の水準に戻る想定で予測したところ、しばらく増加が続くものの急増はせず、6月上旬には2000人程度で横ばいになるという見通しを示していました。感染者数の定点把握のデータを分析すると、5類に移行してからの1か月間、感染者数はおおむね事前の予測と同じ傾向で推移しているということで、この要因について平田教授は「第7波や第8波で多くの人が感染したため免疫が維持されていて、急激な感染拡大は起こりにくい状況だったと考えている」という見方を示しました。さらに、今後の感染者数について7月に人出がコロナ前の水準に戻る想定でAIを使って予測すると、東京都の感染者数は6月中旬から下旬にかけて増え始め、
8月中旬には、
▽マスクの着用率が50%の場合はおよそ4400人
▽20%の場合はおよそ5300人
▽マスクの着用率が20%で変異ウイルスの「XBB」系統のうち感染力が強いものが増えるという想定では、およそ6700人となったということです。平田教授は、気温が上がってエアコンの使用が増えて換気が不十分になることや、免疫は徐々に下がってくること、それに人々の活動が活発になることから、今後、感染リスクは上がるとしています。

一方、平田教授は5類への移行に伴って毎日の感染者数が把握されなくなり予測の精度は下がっているとしていて「複合的なデータを利用できる環境を構築することが重要だ」と話しています。
全国の感染者数 民間の推計で約3万5000人に
 全国では、感染者数は今どのぐらいなのか。

最後に実数が発表された5月8日の全国の感染者は9301人でした。

新型コロナの感染者数を民間の医療データベースのデータをもとに推計している製薬会社のウェブサイトによりますと、7日時点での全国の感染者数は一日当たりおよそ3万5000人と推計され、最後の実数発表の3倍以上に増加しています。

ウェブサイトはアメリカの製薬会社モデルナの日本法人が運営していて、民間の医療情報データベースに登録された全国およそ4200の医療機関のデータをもとに、専門家の監修を受けて推計した全国や地域ごとの感染者数を毎日掲載しています。

また、医療機関を訪れて検査を受けた人のうち陽性だった人の割合、陽性率は28%と、およそ1か月で10ポイント上がったとしています。
“のどが痛い” “熱がある” ツイート投稿 毎日約500件も
 SNS上でも感染が拡大しているとみられる兆候があります。

東京大学生産技術研究所の豊田正史 教授らのグループは、NTTデータがまとめたツイッターのデータをもとに、新型コロナに関連するとみられる投稿の数を分析しています。症状に関するツイート数(青い折れ線)と陽性者数の推移それによりますと、のどの痛みと発熱を訴える投稿の数は4月から増加し、4月上旬には1週間平均での一日当たりでおよそ250件、5類に移行した5月から6月にかけてはおよそ500件となっています。

去年初めからの「第6波」や去年夏の「第7波」、それに去年秋からことし初めの「第8波」では、のどの痛みと発熱を訴える投稿の数と感染者数の増減の傾向はほぼ一致していて、豊田教授は現在の状況について「すべてが新型コロナの感染者というわけではないと思うが、新型コロナ自体は増加傾向にあると考えられる」と指摘しています。
“飲み会開催”推測されるツイート投稿 毎日1000件前後
リスク行動関連ツイート数(折れ線)と陽性者数の推移また、これまでは飲み会が開かれたと推測される投稿が増えると感染が拡大し、その後、投稿が減少して感染状況も落ち着くという動きを示していましたが、ことしに入って以降、増加傾向が続き、春先からは一日当たり1000件前後と去年からの1年間で最も高い水準となっているということです。豊田教授は「人々の行動は平常に戻っていると考えられ、しばらくは増加傾向が続くのではないか。5類に移行したあと、人々が感染者数に注意を向ける機会が減っている。日々の変化が見えるデータをできるだけ多く提供し、状況に応じた感染対策を自分で決められるようにすることが重要だ」と話しています。 

ロシアの軍事侵攻 どう終わらせる?カギは“主要国”以外!?

2023-06-08 10:05:31 | ニュース
NHK国際ニュースラビ
ロシアの軍事侵攻 どう終わらせる?カギは“主要国”以外!?

「インド、特に私は個人レベルで解決のためにできることは何でもする」
G7広島サミットで、招待国として参加したインドのモディ首相はウクライナのゼレンスキー大統領にこう伝えました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻はいつ終わるのか。
連日、ウクライナ側の反転攻勢に注目が集まるなか、今後の出口戦略の1つのカギとなりそうなのが、インドやブラジルなどの「グローバルサウス」と呼ばれる国々です。
このモディ首相の言葉を聞いて、ある会議を思い出しました。
今春、日本で開催された「東京会議2023」です。
10か国の専門家が激論を交わした会議で見えた“プーチンの戦争”終結のカギを探りました。
(国際部記者 野原直路 / 能智春花)
東京会議2023とは
ことし3月23日から3日間、都内のホテルで開かれた国際シンポジウムです。
外交に関する調査などを行う日本の非営利シンクタンク「言論NPO」が、2017年から毎年開いています。その時々の世界の問題について、各国の国際政治などの専門家が集まり、議論してきました。
「東京会議2023」(2023年3月)
最大の特徴は、参加国の顔ぶれです。欧米諸国だけでなく、インドやブラジル、シンガポールなど、さまざまな地域から識者が参加しています。
世界各地で対立や緊張が高まる中、「主要国」の立場だけでは見えてこない、多様な視点で議論や提言をすることが狙いです。
ことし参加した国は?
公開された討議には、アメリカ、イギリス、インド、シンガポール、デンマーク、ドイツ、ブラジル、フランス、カナダ、日本の計10か国から11人の専門家が参加しました。

注目されたのが、会議2日目に行われた公開フォーラム。ウクライナの軍事侵攻から1年が過ぎる中、現状と今後について議論を交わしました。
論点① ロシアと停戦交渉すべきか?

ロシアと停戦交渉すべきか、否か。このテーマは、欧米と「グローバルサウス」を代表する国々で、その立場が割れました。
「いまは交渉の時ではない」
ウククライナに多額の軍事支援を続ける欧米の識者の多くは、こう訴えました。
安易にロシアに妥協して停戦しても、再びロシアによる軍事侵攻を許しかねない。その危機感から、徹底的にウクライナ支援を続けるべきだという立場でした。
“まだ停戦交渉をすべきでない”
アメリカ 外交問題評議会シニアバイスプレジデント ジェームス・リンゼイ氏
「軍事侵攻の平和的な決着といっても、その中身が極めて重要です。侵略をしたロシアに利益をもたらすような内容では、非常に危険な前例を残すことになり、私たちは後悔するでしょう。外交の機は熟していません」



デンマーク ラスムセン・グローバルCEO ファブリス・ポティエ氏
「現時点では軍事的な解決策しかなく、外交や政治で解決できるとは思えません。プーチン大統領は、みずからの支配が非常に強力であると同時に、もろいことも理解しています。ロシア国内で彼の立場が弱まった時、政権を維持しつつも、なんらかの形で敗北を受け入れなければならないと思います」


また、第2次世界大戦を引き合いに出して、戦争はそもそも一方が完全に疲れ切るまで、交渉が始まらない場合もあると指摘したのが、ドイツの専門家です。
ドイツ国際政治安全保障研究所 ディレクター ステファン・マイヤー氏
「戦争は交渉によってのみ終わらせられるという事実はありません。ドイツや日本のように、軍事的敗北によって戦争を終えることもあります。今は交渉の時ではなく、われわれは、ウクライナを支援し続ける必要があります」


ウクライナが受け取ったと表明した イギリスの主力戦車「チャレンジャー2」
“停戦交渉すべき”
一方、こうした姿勢に「待った」をかけたのが、「グローバルサウス」の“代表格”としての立場を築きつつあるインドの専門家でした。ロシアの軍事侵攻は許容できないとしつつも、停戦に向けた交渉を、いつまでも先延ばしにはできないと主張したのです。
インド オブザーバー研究財団 理事長 サンジョイ・ジョッシ氏
「みなさん交渉のときではないといいますが、ではいつが交渉のときなのでしょうか」
「私はインド政府を代表している訳ではありませんが、『グローバルサウス』の人たちの間でどんな議論があるかという観点で発言します。ロシアを弱体化させた上で交渉のテーブルに着かせるといっても、それはいったい、いつになるのでしょうか。ロシアは世界で11位の経済規模を誇る国です。弱体化させるには、何年も何年もかかります。『サウス』の国々はこの戦争を憂慮しています」


欧米とロシアとの対立で戦争が長引くほどに、侵攻に伴うインフレによって途上国の苦しみも続いてしまう。ウクライナ以外の国々が被っている痛みにも、目を向けてほしいという訴えでした。
もう1人、別の見解を示したのが「グローバルサウス」を代表するブラジルの専門家でした。
ロシアを軍事的な敗北に追い込めば、ロシアの「暴発」を招くのではないかと懸念を表しました。
ブラジル ジェトゥリオ・ヴァルガス財団総裁 カルロス・イヴァン・シモンセン・レアル氏
「もしロシアが敗北すれば、核兵器を使って対抗するかもしれません。それは危険すぎる賭けです。とても残念なことですが、もっとも安定した解決策は、『こう着状態』になることです」


ロシアによるICBM発射実験(2022年)
論点② 経済制裁は続けるべきか
軍事侵攻が始まって以降、欧米などが続けるロシアに対する経済制裁。
続けるべきか、否か。これについては、各国で意見が分かれました。

“経済制裁の継続を”
経済制裁の効果は表れていて、継続すべき。こう主張したのがイギリスの識者です。
イギリス王立国際問題研究所 グローバル経済・金融プログラム ディレクター クレオン・バトラー氏
「経済制裁は非常に重要な役割を果たすようになりました。ロシアの状況を見ると、優秀な人材の流出や資金、技術の不足など、中長期的に非常に大きなダメージを与えています」


“経済制裁には限界も”
一方で、フランスの識者は、逆に制裁の「限界」に触れ、ロシアの国民自体を追い詰めすぎる弊害を指摘しました。
フランス国際関係研究所 所長 トマ・ゴマール氏
「ロシア国民に対しては、政治的な変化があれば経済制裁の解除もありうると、語りかけていくべきです。なぜ経済制裁が科されるのか、そしてどうすれば解除されるのかを説明せずに制裁を強めれば、ロシア国民を隅に追い詰めてしまいます」


制裁は、戦争を続ける体力を削る上では有効であっても、ロシアの世論に変化を起こすには不十分だという指摘でした。
ロシアの独立系の世論調査機関によると、欧米側の強力な経済制裁にもかかわらず、ロシア国民の多くは軍事侵攻の支持を続けている現実があります。

※「レバダセンター」は政権から「外国のスパイ」を意味する「外国の代理人」に指定され 圧力を受けながらも独自の世論調査活動や分析を続けている
このまま厳しい経済制裁を続ければ、かえって、ロシアの世論を硬化させてしまうのではないかという懸念が示されたのです。
“経済制裁は再考を”
また、インドの識者は、軍事侵攻やそれに伴う経済制裁などの影響が、途上国を中心に世界的に広がっている現状に強い懸念を示しました。
インド オブザーバー研究財団 理事長 ジョッシ氏
「この戦争の影響はウクライナだけでなく、世界の多くの国々にも及んでいます。銀行システムからエネルギー、食料、そして肥料や小麦も、あらゆるものが戦争の道具に使われ、ある種の総力戦の様相を呈しています。これが今回の戦争を、より大きなものにしています」



論点③ 軍事侵攻終結の鍵を握るのは?
去年2月に始まったロシアによる軍事侵攻。まだまだ先行きがみえません。
ただ、いずれ訪れるであろう停戦に向けた動きの中で、どの国が仲介役を果たせるのか。この点については、ある程度意見の一致が見られました。それは、軍事支援を続ける欧米などの「主要国」以外だということでした。
カナダ 国際ガバナンス・イノベーションセンター総裁 ポール・サムソン氏
「新たな国が前面に出てくる時です。世界が多極化している中、この問題について、G7=主要7か国をみても、仲介役になりうる国は1つもありません」



インド オブザーバー研究財団 理事長 ジョッシ氏
「信頼が置ける第三者や仲介者、またはそのグループが必要です。そうでなければ戦争は続いてしまいます」



アメリカ 外交問題評議会シニアバイスプレジデント リンゼイ氏
「ロシアは国連の安全保障理事会で拒否権を発動しています。中国もアメリカなどとの地政学的な競争をやめるチャンスが幾度もあったにもかかわらず、態度を変えず、対立を深めています」



フランス国際関係研究所 所長 ゴマール氏
「インドに特に期待しています。『グローバルサウス』にはロシアに圧力を加え、信頼を勝ち取るチャンスがあると思います」


取材後記
この東京会議では、ウクライナへの軍事侵攻の終結や世界の秩序の回復に向けた「共同声明」がまとめられ、来賓で訪れた岸田総理大臣に手渡されました。

関係者によりますと、共同声明のとりまとめは最後まで難航したといいます。
その中で大事な一文が盛り込まれています。
「政治体制の如何に関わらず、世界が抱える問題を解決しようとする国々と連携しなくてはならない」
冷戦終結からすでに30年以上が経過し、混迷とも言える状況が続いています。
さまざまな政治体制や価値観が存在感を増すなかで、どう世界的な課題に対応していくのか。
この一文には、「主要国」と呼ばれるG7各国だけでなく、新興国や「グローバルサウス」と呼ばれる国々などとも広く協力していくべきだという、問題提起のメッセージが込められたといいます。 まさに世界が多極化している現実を、つきつけられたように感じた瞬間でした。
キーウの独立広場(2023年2月)