ヴェネツイア生れのカナレットは、25歳の時にイタリアからドレスデンに移り、その地でザクセン選帝侯・ポーランド国王のアウグスト3世に仕えた。その後、ウィーンのマリア・テレジアやミュンヘンのバイエルン公の宮廷で登用されたが、1767年ワルシャワを訪れ、死ぬまでこの地に留まった。
国王スタ二スワフ・アウグストの依頼で、1767年から1780年の間に、22点のワルシャワ景観画を描き、これらはワルシャワ王宮の「カナレットの間」を覆う羽目板に据えられた。このためこれらは王宮から持ち出されることはなかった。そして第二次大戦後のワルシャワの街の復旧にこれらの画が役立ったという。今回はこのシリーズから5点が出展されていた。
この画はこのシリーズの最初の1枚で、王宮前広場とワルシャワの主要道路であるクラクフ郊外通りの景観画であるが、左手にはクラクフからワルシャワに遷都した国王ジグムント三世の彫像のある円柱が見える。
これはわたしのお気に入り美人画。本来、来歴はどうでもよいはずなのだが、この展覧会の画にはすべて物語を伴っているので、来歴がなんとなく気になる。
●エリザベート・ヴィジェ=ルブラン≪ペラギア・サピエハ(旧姓ポトツカ)の肖像≫1794年ワルシャワ王宮蔵