最も印象に残った球児
19.長野
上田 佳範 投手 松商学園 1991年 春夏
甲子園での戦績
98年春 1回戦 〇 3-2 愛工大名電(愛知)
2回戦 〇 2-0 天理(奈良)
準々決勝 〇 3-0 大阪桐蔭(大阪)
準決勝 〇 1-0 国士舘(西東京)
決勝 ● 5-6 広陵(広島)
夏 1回戦 〇 6-2 岡山東商(岡山)
2回戦 〇 8-3 八幡商(滋賀)
3回戦 〇 4-3 四日市工(三重)
準々決勝 ● 2-3 星稜(石川)
長野と言えば松商学園。
今も昔も変わらない、
長野県高校野球の代名詞ともいえるこの学校は、
戦前の第6回大会から甲子園に出続け、
今もその力を維持し続ける稀有な存在です。
しかし戦後、
ワタシが高校野球を見始めてからというもの、
しばらくの間【松商学園】といえば初戦敗退の代名詞。
実際75年から6年連続で夏の甲子園に出場するものの、
なんと6連敗。
中には、2年連続の開幕試合敗退という悲しい出来事もありました。
85・86年とセンバツで直江投手を擁し久しぶりの白星を挙げるものの、
2勝目は遠いという戦いぶり。
松商学園という名前に、
”強豪”という響きはありませんでした。
しかし、
彗星のように現れたエース上田と強力打線で、
松商学園が見事に『古豪復活』を告げた年がありました。
1991年です。
エースの上田は、
秋の大会では不安定な投球を続けていたため、
センバツ前の評判は高くはありませんでした。
そして初戦の相手は強豪の愛工大名電。
相手エースはあのイチロー。
しかしこの時はまだ”イチロー”ではなく、”鈴木投手”という『そこそこの』投手でしたがね。
初戦でこの名電を破り波に乗った松商学園、
次にあたったのがゴリゴリの優勝候補筆頭・天理でした。
この当時の天理は、
まさに全盛期。
前年夏に2度目の全国制覇を成し遂げ、
この年は、
『近年では夏春連覇にいちばん近い』存在と見られていました。
エースの谷口(元巨人)は190センチの身長から140キロ超の速球をビュンビュン投げ込む本格派。
そしてそれを支える打線も強力で、
『死角なし』と見られていましたので、
松商学園の苦戦は必至と思われました。
ところがふたを開けてびっくり!
松商は初回に2点を先制すると、
後は上田がスイスイと投げ続け、
あっという間に天理を手玉に取ってしまったのでした。
見事な完封劇でした。
この時の上田投手。
速球、変化球のキレは抜群。
そしてそれ以上に低めへのコントロールは、
満天下をうならせるに十分でした。
どんな打線が来ても、
ちょっと打たれそうにない投球でした。
天理の次は大阪桐蔭。
今をときめく大阪桐蔭も、
この時のセンバツが甲子園初登場。
しかしながらこの大阪桐蔭のエース和田投手。
初戦の仙台育英戦でノーヒットノーランを達成した好投手で、
大会に入ってからの評価はうなぎのぼり。
当然この試合も【大阪桐蔭有利】と言われました。
しかし、しかし・・・・・
強敵になるほど燃える上田が、
今度もまた見事なピッチング。
強打の大阪桐蔭をまたも5安打に抑え完封。
この試合の後、
選抜の話題は『上田一色』になっていきます。
準決勝でも難敵の国士舘を完封した上田。
1回戦の2回から、
35イニング無失点という記録を作って勇躍決勝に臨みました。
決勝の相手は広陵。
正直に言うと、
波に乗っているとはいえワタシは『広陵のどこが強いのか』よくわからない状況でした。
投手がいいわけでも打線が強力なわけでもない。
しかししぶとい。
それがこの広陵のチームだったと思います。
2年前に同じ広島代表で選手権を制した広島商と、
よく似たチームでした。
【松商学園の悲願の選抜初優勝】
という見出しが、
ワタシの頭の中では踊っていました。
しかし、
やっぱり試合というのはやってみなければわからない。
連投で明らかに球威が落ち制球もままならない上田は、
終始この日は苦しみ続けた投球でした。
それでも援護する打線が気合いで5点を奪ったときには優勝もちらつきましたが、
終盤広陵打線につかまり同点に。
そして9回には、
ライトに入っていた上田の頭上を襲うフライに上田が追い付けずにサヨナラという、
なんとも悲しい結末となってしまいました。
捲土重来を期して臨んだ夏の大会。
上田の調子はセンバツに比べると今一つ。
しかしグレードアップした打線が彼を支え、
チーム力アップで臨んだ夏でした。
1・2回戦を快勝して臨んだ3回戦。
上田は四日市工の好投手・井出元と投げ合いました。
『いつ果てるともしれない投げ合い』
これがこの試合を形容するに、
一番ふさわしい言葉でしょう。
7回に3-3となってから決着の16回まで、
まさに両投手の『一歩も引かない』投げ合いは、
観客を魅了しましたね。
世の中的にはこの90年代前半から中盤にかけてというのは、
高校野球への人々の興味が薄らいできていた時代だと思っています。
その前の時代のキラ星のようなスターたちに比べ、
出てくる選手もなんだか今ひとつ地味で・・・・・
というような時代でした。
(次に甲子園が燃え上がるのは、松坂登場の98年だと思います)
しかしそんな中にも、
こんな『熱い感動』を与える試合があった。
それを思うと感慨深いものがありますね。
この投手戦の決着は、
1死満塁からの、
井手元が打者・上田に投じたサヨナラデッドボールでした。
延長戦でのサヨナラ・デッドボール。
78年の1回戦、
仙台育英vs高松商戦以来の決着でした。
肩に当たって倒れ込んだ上田がすっくと起き上がって一塁に向かう後ろで、
井手元の落胆と松商ナインの歓喜が交錯した、
いつもながらのコントラストを醸し出すシーンでした。
松商はこの激闘を制して準々決勝へ。
しかしここで、
同じ北信越の星稜に足元をすくわれてしまいます。
上田の疲労は、隠しようもありませんでした。
春のセンバツと同じく、
『なんで松商は、ここでこのチームに負けてしまったんだろう』
というような終わり方でした。
この年の松商。
やっぱり上田がやられたら……というチームだったんですね。
それだけ大きな存在だったのだと思います。
上田の卒業してから20年の月日が経ちますが、
松商学園はまた、
元の『出ると負け』のチームに戻ってしまったかのような歩みを続けています。
(その後の甲子園での戦績は2勝8敗)
チーム力はどの年も変わらないとは思いますが、
いかんせん各年のチームには『上田がいなかった』ということなんでしょうね。
上田のような好投手を擁し、
また甲子園に『里帰り』する日を楽しみにしています。
伝統のユニフォーム、
大好きです。
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3 コメント
コメント日が
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- Unknown (Unknown)
- 2012-10-12 18:51:11
- 有難うございました。
- 返信する
- 感謝 (なる)
- 2012-10-12 18:52:10
- 有難うございました。
- 返信する
- Unknown (まめちち)
- 2012-10-13 18:41:21
- コメントありがとうございました。
- 返信する
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