第93回全国高校野球選手権大会 予選展望4
【滋賀】(参加54校)
今年も2強のライバル対決が濃厚。連覇狙う戦力充実の北大津に近江が挑む。
◎ 北大津
〇 近江
△ 滋賀学園
▲ 八幡商
去年甲子園を席巻した北大津各打者の強烈な振りの鋭さ。今年もその打線は健在で、試合数を上回る本塁打数は圧巻の一言。今年の狙いはずばり全国8強以上。エース岡本のテンポのある投球が今年も見られれば、戦力的に県代表の座は揺るがない。岡本投手は、昨年の甲子園で見せた超高校級のフィールディングの良さも自慢。今年も聖地で見てみたい投手だ。さて、このライバルに一歩後れを取るとはいえ、ライバルの近江も戦力を充実させてきている。春の県大会でエース石田が復活。北大津とガチンコ勝負に持っていけるだけの布陣を整えつつある。近畿大会で天理・西口に抑えられたように、好投手を完全に攻略できるほどの力はないが、細かい野球を組み合わせて得点力アップを狙っている。2強が大きくリードする展開だが、スキを狙いたいチームも数多くある。その筆頭格は、一昨年の代表滋賀学園か。かつて”大阪学園”と揶揄されたこともあるほど、いい素材が大阪はじめ近県から集まることには定評があるだけに、力勝負を挑めば負けない迫力を持つ。あとは夏に向けていかにチームが一体となれるか。秋に優勝した八幡商は、エース吉中の頭脳的な投球で名門復活を狙う。結果を残す綾羽、これも名門の比叡山、近江兄弟社、光泉などが上位進出を狙っている。
【京都】(参加78校)
初めての夏狙う立命館宇治が一番手。京都外大西、福知山成美の常連組も虎視眈々。
◎ 立命館宇治
〇 福知山成美 京都外大西
△ 龍谷大平安
▲ 塔南 京都成章
立命館宇治が初めての夏に挑む。春の県大会を制して近畿大会のガチンコ対決で大阪桐蔭を破った力は本物。エースは昨年の春の選抜を経験した川部ではなく、同じく左腕の福本に。安定感は抜群で、激戦の夏を制する力は十分に持っている。あとはやや他校に劣るといわれる打線の爆発待ちか。対抗する2校は、ほとんど差がなく追っている。先ず実力NO1と言われる福知山成美。一昨年、昨年と不祥事続きで夏を経験していない今の3年生が意地を見せたいが、勝ちあがっていく経験が不足しているのが不安材料。戦力的には、エース津田の右腕でしっかりと守り、振りの鋭い打線で後半勝負がチームカラー。夏向きのチームではあるので、どのような戦いぶりを見せるか。2年連続の甲子園を狙う京都外大西は、昨夏の甲子園メンバーが7人も残り、経験値は高い。佐藤・松岡・溝口と揃う投手陣の厚みで、他の有力校から一歩抜け出したい。2年ぶりの夏を狙う龍谷大平安も今年は充実。ドラフト候補にも挙がりそうな2年生バッテリーを軸に狙いを甲子園に定める。そのほかでは、秋優勝、春3位の塔南も悲願の甲子園に照準を合わせる。府内屈指の実力を誇る駒月捕手に注目。名門の京都成章までを候補に加えておく。
【大阪】(参加187校)
力で言えば大阪桐蔭。経験値が勝る履正社が3連続を狙えば、戦力充実のPLも負けてはいない。
◎ 大阪桐蔭
〇 履正社
△ PL学園
▲ 大商大堺 太成学院
ここ数年の構図は今年も変わらない。大阪桐蔭、履正社、PL学園が今年も3強を形成し、他校を大きく引き離しているのが現状だ。3強の中では、やはり大阪桐蔭の戦力が充実しているのではないか。このチームで甲子園、また近畿制覇ができていないのが不思議なほど、大阪桐蔭の戦力は充実している。196センチの長身を誇る2年生の藤浪が今年の夏は本格化してきそうな気配。好調ならば全国どこのチームとやってもまず3点以内には抑えてくれる剛腕だ。左腕の平尾に戦線離脱中の中野の復活があれば、投手陣の層はものすごく厚くなる。打線は問題ない”例年レベル”まで上がってきているので、西谷監督も全国制覇を視野に入れ始めたか。そうはさせじと腕をぶすのが、選抜4強の履正社。こちらも安定感抜群のエース飯塚にシュアなバッティングを見せる海部・石井・坂本の攻撃陣など、スキのない陣容を整えつつある。大阪桐蔭との直接対決を制さなければ甲子園はない、との気迫で大阪大会に臨む。PL学園は毎年1年生のスーパールーキーが話題になるが、今年も2人ほど先発メンバーに入ってくることが予想されている。ここのところ力の対決で上の2強にやや遅れを取っているが、ここら辺で巻き返したいところだ。春の府大会3位ながら近畿大会で決勝まで進出した大商大堺は、一発が期待できるチームだ。上位との対戦まで持っていきたい。太成学院にはエース今村が控える。実力校相手にどんなピッチングを見せるか。公立の星・汎愛は春の府大会で準優勝と躍進。しかし夏の甲子園を狙うにはやや力不足か。
【兵庫】(参加162校)
やはり報徳を1番手に据える。差なく追う神戸国際大付属と東洋大姫路。加古川北にも期待。
◎ 報徳学園
〇 神戸国際大付属 東洋大姫路
△ 加古川北 明石商
▲ 社 育英
大激戦区の兵庫だが、1番手にはやはりエース田村の報徳学園をあげたい。ふがいない戦いぶりで選抜初戦敗退の憂き目にあったチームだが、かなり立て直してきた印象だ。他校にないものは、やはりエース田村の能力と経験。彼が昨夏のように盤石の状態で臨めば、やはり候補筆頭の地位は揺るがないものとなるはずだ。チームの潜在能力ではNO1と言われ続けたのは神戸国際大付属。通算30発の田中を軸に据えた打線の破壊力は県下一。夏の悲願に向け、青木監督も勝負の夏と位置付けている。東洋大姫路は、エース原の存在が心強い。春の県大会で一気に4強進出の原動力となった。実績を残す藤田監督が再就任し、チームは勢いづいている。選抜で足攻を見せて金沢の150キロ男・釜田を崩し話題をさらった加古川北も、当然候補の一角。夏は各校が戦力アップしてくるため力勝負に対応できるかが焦点だが、エース井上を軸に粘り強い戦いぶりができるのがチームの特徴。春は明石商が初優勝をさらった。明石市の公募により採用された狭間監督は、中学野球では知らない人がいないほどの名将。明徳義塾で4度の全国優勝を達成した監督だ。石川・遊学館の山本監督を筆頭にここの所目立つ中学の名将の高校野球進出。狭間監督がこの激戦地を制し甲子園にたどり着けば、話題をさらうことは必至。中学野球必勝メソッドを引っ提げ、高校野球での頂点を狙う。
【奈良】(参加43校)
激震走る天理の出場辞退。智辯1強になるのか、それとも・・・・・。
◎ 智弁学園
〇 郡山
△ 関西中央
▲ 登美ヶ丘
天理vs智弁学園。言わずと知れたこの2強対決。毎年のように繰り広げられるこの宿命の対決は、今年は見られないことになった。過去5季連続の甲子園出場を果たし、春の近畿大会でも優勝を飾っていた天理が、部内の暴力事件でまさかの出場辞退。県大会の行方は、大きく大きく軌道修正されることとなった。ライバルの智弁学園は、春の県大会準決勝で天理と対戦。双方エースを温存させたこの試合で、打線が2-9のコールド負け寸前から大反撃を行い10-11と接戦に持ち込んだことで、打線にも大いに自信をつけた。もとより2年生エース・青山は天理を抑えられる唯一の男として評判の高かった投手だけに、打線の底上げは何よりのニュースだった。その智辯が、天理なき県大会に臨む。果たしてモチベーションはどうか。意識しないところに緩み、よどみはないのか・・・・・・。そのあたりが、今回の県大会の焦点となってしまった。追っていくのは名門の郡山ぐらいだと思われる。郡山にとっては、いつもの年は『どちらか一方には勝ったが、両方を破ることはできなかった』という県大会が多かったので、今年は大チャンス到来と思っているはず。モチベーションを上手く昇華させれば、ひょっとしてということが現実味を帯びる。その他では新顔の関西中央の戦いぶりに注目。メキメキと実力をあげてきており、智弁に挑戦状をたたきつける絶好のチャンスだ。そのほかでは地力のある登美ヶ丘、一条、王寺工、法隆寺国際などの名前もあがるが、智弁の牙城をどこが崩すのかが唯一の焦点の大会だ。
【和歌山】(参加40校)
智弁和歌山が大本命。スライダーで勝負のエース持つチームが波乱を呼ぶか。
◎ 智弁和歌山
〇 箕島
△ 市和歌山 和歌山商
▲ 桐蔭 向陽 南部
智弁和歌山の牙城は揺るぎない。過去15年で13回の甲子園出場の智弁和歌山。この数字、やはり出場校数が少ない和歌山大会ならではだと思う。酷暑の中で5勝で甲子園に出場できる大会と7~8勝が求められる神奈川、大阪、愛知、福岡などの大会とは、根本的に戦い方が違ってくると思われ、その点で智弁和歌山はこの和歌山大会では『絶対に負けない』自信を持った戦い方が毎年できていると思われる。そのため、今年も波乱が起こる可能性は限りなくゼロに近いと思われるが、”絶対王朝”を築く智弁和歌山を倒せるチームは、県内には果たしてあるのだろうか。モチベーションという点からいけば、今年は箕島が最も高い。名将と言われた元監督・尾藤氏が3月に死去。この監督が待ち望んでいた『強い箕島の復活』に、選手全員が燃えていることだろう。智辯和歌山vs箕島の戦いは、どのようになるのか今の時点では予想がつかない。しかしながら、純粋に戦力を比較した場合その優劣は明らか。智弁和歌山が意識過剰になることなく戦えれば、今年も代表の座は間違いないとみるが・・・・・。左サイドの技巧派・大野を持つ市和歌山、スライダーを巧みに投げ分ける東山を擁する向陽などが虎視眈々と1強との対決を待ちわびる。生半可な速球投手では餌食になる智辯打線との戦いに、各校がどんな秘策を持って臨むのか。今年もその牙城は守られるのか。