≪第93回選抜高校野球大会≫
【第6日】
第1試合 中京大中京 2-0 専大松戸
第2試合 仙台育英 13-5 神戸国際大付
第3試合 天 理 4-0 健大高崎
第1試合で1回戦を終え、
今年の選抜もベスト16の戦いに入ってきました。
そして第2、第3試合の勝者は早くも8強入り。
ここからの選抜大会は、
例年の通りあっという間に進んでいきます。
さあ、
そんな中注目された第3試合。
注目のエース・達を擁する天理と、
強打が自慢の健大高崎の対戦となりました。
過去2度の甲子園での対決はいずれも健大高崎の勝利。
いずれの試合も戦前には「天理有利」という言葉が躍っていたのですが、
それを健大高崎が「機動破壊」の戦略を駆使して覆したもの。
「大型チーム」の天理にとって、
健大高崎は戦いにくい相手なんだなあという印象を持っていました。
しかしこの日は、
エース達が見事なピッチングを披露。
秋季大会で猛威を振るった健大高崎打線に完全な力勝ち。
わずか単打2本に抑えこんで完封。
4-0と安定した戦いで8強入りを飾りました。
天理は中村監督に代わって、
豪打の看板のほかに、
しっかりした投手力と堅実な守り、スキを突く走塁など、
総合的な力が高くなってきていますね。
80年代終盤から90年代初めのチーム力がピークの時代に、
近づいてきつつあります。
中村監督自身がこの時代の選手ですから、
「大型」というだけではないきっちりとした野球を、
指向しているのでしょうね。
一方敗れた健大高崎。
豪打と言われた長距離砲を並べた打線は、
達投手の速球に力負けし、
最後まで一度も打球が外野の頭を超えることはありませんでした。
健大高崎といえば、
センセーショナルな甲子園デビューから数年間。
甲子園を「健高ブランド」とでもいうべき「機動破壊」で席巻する様は眩しく、
ワタシは勝手に「次の全国制覇校」の関東トップに挙げていました。
早々に軌道破壊を含めたチームのメソッドの本も刊行され、
ワタシは興味があったので読んだりもして、
ますます「全国制覇近し」の印象を持ったものでした。
しかし数年前から、
健大高崎はその戦い方をガラッと変えてきました。
それまでは走塁にたけた選手たちをずらっと揃え、
「盗塁を仕掛ける」
というだけではなく、
「相手の嫌がる走塁をどんどん仕掛け、相手を走塁から崩していく」
というチーム方針が徹底されていましたが、
現在の健大高崎は走塁に関しては他のチームとほとんど変わらないぐらいの「仕掛け」しかしてこず、
打力で相手を崩していく野球に代わりました。
これまでの甲子園での戦いで確立していた「機動破壊」は、
戦う相手に勝手に警戒を呼び起こさせ通常のマインドでの戦いをさせないという、
ある意味「ユニフォームで戦える」ような状態まで引き上げていました。
甲子園という独特の球場の雰囲気も相まって、
健大高崎の選手が一人でも塁に出ると、
球場全体がそれだけでざわざわし始め、
その雰囲気に相手が飲まれてやらなくてもいいミスを犯す。。。。。。
相手が崩れれば崩れるほど、
慈悲もなく走塁を次から次と仕掛けていく恐ろしい野球。
あるいは膠着状態においても、
ひとつの出塁から相手に「何かやってくるのでは・・・・・」との疑心暗鬼を生ませ、
虎の子の得点を奪い取っていく。。。。。
そんな「機動破壊」の戦い方で、
健大高崎は相手に大いに恐れられていたと思います。
しかしその立役者だったコーチがチームを去り、
「機動破壊」はしなくなったのかできなくなったのか?
一昨年の秋、そして夏の甲子園代替え試合、
去年の秋、そしてこの選抜。
明らかに「打撃偏重」にシフトした健大高崎の戦い方を見るにつけ、
ワタシは「惜しいなあ」という思いを強くしています。
「強く振れる打線」というのはいいとは思うのですが、
そこに自分たちで積み上げて確立した「機動破壊」をうまくミックスしたら、
いったいどんなにすごいことになっていただろうと思ってしまうわけです。
青柳監督は何か、
「機動破壊を手放したわけではない」というような談話を話すことも多いのですが、
昨年、そして今年の戦い方を見るにつけ「機動破壊は手放した」としか見えないんです。
そもそも青柳監督自身が、
走塁偏重ではなく打撃で相手を粉砕する野球を、
好んでいるのかもしれませんけどね。
これが本当の「青柳野球」なのかもしれません。
しかし機動破壊はただ足が速いだけではなく、
相手のスキを鋭く突くという面で、
非常に野球力の高い戦い方となっているイメージがありました。
健大高崎というとかつての広商、松山商や明徳のように、
「全員の野球IQが高く、スキなく野球力の高いチームだな」
そんなイメージがついていたように思います。
しかし今年のチームの戦い方は、
「とにかく全選手が強く振ることだけを意識している」
という事しか感じられず、
この日の達投手のような投手と当たって力負けした場合、
まさに「打つ手がない」状態に陥ってしまうように見えました。
「う~ん、戦い方がなんだか少し・・・・・」
と思ってしまいました。
機動破壊が徹底されたかつての健大高崎なら、
いったいどうやって達投手の攻略をしていっただろう。。。。
そんなことが否応なく頭に浮かんできたりしていましたね。
ブリブリ振り回して、
好投手にはからっきし。。。。。。
なんだかプロ野球のどっかの球団が、
オリックスの山本投手と対戦している図が、
浮かんできたりもしました。。。(おっとその対決、今日やるんだった~)
このような戦い方で頂点を目指すのは、
なんだか今まで来た道と違う道を見つけた結果、
遠回りになってしまった・・・・・・・となるような気がしないでもないですね。
栄冠を手にするには、
昔の池田、PL、智辯和歌山、大阪桐蔭や履正社のような強力な突き抜けた打線を作るしかなくなるんじゃないかな?
それってかなり難しいことじゃないかな?
そんな気がしています。
「機動破壊で全国制覇」
ワタシはそれを夢見ていたので、
昨日はなんだかちょっぴり残念な気持ちになってしまっています。(昨日に限ったことではないですけど)
まあ、
「高校野球のチームのピークは10年ぐらい」とも言いますから、
今後どういう歴史を紡いでいくんでしょうね。
期待して待つことにします。