さあ、2年ぶりに迎える夏、
第103回全国高校野球選手権大会が、
各地方大会で開幕を迎えます。
自他ともに認める”高校野球おやじ”のワタシにとっては、
まさに「待ちに待った」という言葉がぴったりとあてはまる、
『甲子園の夏』です。
昨年は各地方での「独自大会」の開催と、
中止となった選抜出場校による1試合限りの「交流試合」が関係者の努力によって開催され、
何とか全国の高校球児たちに「高校野球生活の締め」の機会を与えてくれました。
しかしながらやはり、
高校野球生活の締めはこの「全国高校野球選手権地方大会」こそが・・・・というのが本筋であることは間違いありません。
全国の高校球児、
各学年に5万人ほどがいると思われますが、
このうち9割以上が、
アスリートとしての本気の野球は高校野球が最後という球児たちです。
ほとんどの球児が小学生のころから野球に親しみ、
長く野球にたくさんの時間とエネルギーを傾けてきたと思います。
その集大成としての甲子園予選、
これこそが彼らの長きにわたる「目指すべき大会」なわけです。
その「本当に大切な大会」が、
コロナという化け物によって中止に追い込まれた昨年。
昨年の3年生の無念は察するに余りありますが、
その無念の思いを一番近くで見て、聞いて、知っているのが今の3年生、そして2年生だと思います。
先輩たちの無念を背負ってというと大げさに聞こえるかもしれませんが、
そんないつもとは違う強い思いで臨む、
今年の夏の大会だと思います。
どうか全国の高校球児たち、
とりわけ「自分たちの代の大会」となる3年生の球児には、
頑張ってほしいと思います。
大会が始まるまでは勝ちだけを目指し鍛錬をし、
前だけを見て日々を過ごしてほしいですが、
大会の後はきっと、
「勝ち負けだけがすべてじゃなかった」
ことに、どの球児もが気が付くことでしょう。
そうやってみんな、
大切な時間を過ごしてきたのです。
そのことが必ず、
人生の糧になることでしょう。
頑張ってください。
100年の歴史を持つ全国高校野球選手権大会。
記念大会であった100回大会を区切りとして、
新たな道を刻み始めて、
今年は2回目の大会となります。
高校野球も、
近年はより選手の体調面に配慮して、
延長タイブレーク制、投手の球数制限の導入、
大会休養日の設定など、
新時代に向けての新機軸を次々に打ち出しています。
選手たちにとっては、
過去と比較して高校野球ならではの「過酷さ」はかなり取り払われて、
試合しやすい環境が整いつつあるという実感があります。
まあ、
かつてとは気候が全く違って、
真夏に1試合を行うだけでも厳しいという状況になっていることは間違いありませんが。。。。
我々の高校生の時代(昭和)は、
30度以上で「暑い~」と言っていて、
32度を超えると「もうだめだ~」なんて言っていたものです。
地方大会はもとより8月の甲子園でも、
必ず最高気温が30度を超えない日があったものです。。。。
中には昭和52年とか55年のように、
連日のように最高気温が30度を下回った大会なんて言うのもありました。(正式な記録を見たわけではありませんのであしからず。)
今年はこのコロナ禍に加えて、
東京オリンピックも開催されるという、
ある意味「特別な大会」と言える大会となりました。
まあ、
3年前が100回大会、
去年が大会中止ですから、
毎年「何かが起こる」といっても過言ではないかもしれませんが。。。。。。
いずれにしても、
2年ぶりの大会に、
「観る側の人間」としても心躍っています。
「令和最初のセンバツ」となった選抜甲子園では、
東海大相模がエース石田の超絶なピッチングを軸に、
守り勝って3度目の優勝を飾りました。
高校野球界の盟主であり「1強時代」を続けている大阪桐蔭に対して、
「東の横綱」として存在感をアピールする大会となりました。
そして「1週間に500球」という投球制限が初めて導入された大会で、
その500球に到達する前に、
天理・達や中京大中京・畔柳などの「スーパーエース」が次々にその投球に変調をきたし敗れ去っていったという事が、
とても印象に残った大会となりました。
そんな中で今年の夏の大会が始まります。
東京、大阪を中心に6月20日まで、
緊急事態宣言下を過ごしたチームが多いのが今年の地方大会の特徴。
東京では都立高が分散登校、部活禁止を基本的施策にしているので、
いったい都立高は夏の大会、試合ができるのかが心配になってしまう状況です。
また沖縄では、
登校もままならずに高校野球の予選も日程が繰り下げられました。
また都立高と同じく県立高は、
登校もままならずでしたから練習にも支障をきたしたことでしょう。
優勝候補の筆頭に上がる具志川商は、
大丈夫なのか?というのがワタシの心配です。
全国的に見ると、
センバツでまさかの初戦負けを喫した「絶対王者」の大阪桐蔭の巻き返しが、
全国の注目度No1でしょうね。
東海大相模、明豊、智弁学園、中京大中京などの実力派選抜組に対して、
センバツに出なかった高校の巻き返しも注目されています。
特に高知の「ドラ1間違いなし」のエース森木が最後の夏を迎え、
「県内絶対王者」の明徳義塾を破り初の甲子園を手にすることができるのか?
に注目が集まっています。
戦力の充実したチームが全国各地にみられていて、
レベルの高い大会になりそうな予感があります。
今年もまた、
2年ぶりに夏の大会の予選展望を書けることを、
本当にうれしく思っています。
さあ、はじまりますよ!!
ということで、
今年も地方大会の展望を。
≪第103回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望1 北海道・東北地区 -
【北北海道】(参加校73チーム)
過去2年覇権を争った、旭川大・滝川西・クラーク国際・白樺学園が4強。
◎ クラーク国際 旭川実
〇 旭川大 白樺学園
△ 武修館 遠軽 帯広大谷
▲ 帯広農 滝川西 旭川竜谷 中標津
旭川実が秋の道大会で準優勝。優勝した北海のエース木村と0-1というしびれる投手戦を繰り広げたエース田中が健在で候補の一番手に上がる。そして春の道大会で4強に進出したクラーク国際が同じ位置に躍り出てきた。クラーク国際の看板は打力。長打力で突き放すというよりも、シュアでキレのある打線で得点を重ねるというスタイルだ。2度目の頂点を狙うためには、大会で投手陣を含めた守りの整備をもう一段レベルアップさせたいところか。旭川実は田中頼りにならないで戦えればチャンスは広がっているとみる。その旭川実を春の地区大会で破った旭川大は、同大会初戦では選抜出場の北海を破り、秋の優勝・準優勝校を連破。波に乗るかと思われたが続く準々決勝では優勝した札幌日大にサヨナラ負けで上位進出はならなかった。しかしきちっとした戦いぶりで、夏に向けての自信を得たのは大きい。もともと一昨年まで2大会連続出場中で、夏に仕上げる術を心得ているだけに、本命の2校とは寸分の差もない感じだ。昨年好チームを作って選抜出場を果たした白樺学園は、今年はここまで苦戦が続いている。投手力は昨年よりは多少落ちるものの、菊池、原田の両輪で賄えそう。打線もそこそこ力を持っており、大会の波に乗ることができれば、今年も狙えるチャンスはある。この4校がどうやら抜けている感じの大会になりそうだが、面白いチームを挙げるとすれば武修館や遠軽が例年通り好選手をメンバーに揃え、一発逆転を狙っている。昨夏21世紀枠で甲子園の交流試合に登場して勝利を挙げた帯広農は、夢よもう一度と鼻息は荒い。
【南北海道】(参加101チーム)
絶対的エース木村擁する北海に、春の全道大会制した札幌日大がどこまで食い下がれるか。
◎ 北海
〇 札幌日大
△ 東海大札幌 駒大苫小牧 北照 北海道栄
▲ 札幌静修 札幌大谷 札幌一 札幌国際情報 知内
ここのところ北海道の高校野球のレベルがぐっと上がって、また全国制覇を狙えるチームが毎年登場してきている。それとともに大会の盛り上がりもすごく、特に南大会は勝ち抜いていくのが非常に大変な激戦区と化している。そんな中今年も、北海に全国一流レベルの匂いを感じることができる。その源は、なんといってもエース木村の存在。センバツでは開幕試合で惜しくもサヨナラ負けを喫したが、この負けが木村をさらに大きくするのではないかという思いは強い。その木村は北海道では春の1回戦まで57イニング連続無失点を記録。いい仕上がりで夏を迎えることができれば、無双して甲子園をつかむ可能性は十分にある。打線はまだまだ全国レベルとまではいかないが、選抜時よりは仕上がっている模様で、振れてくる夏を迎えればさほど心配はないだろう。この北海に「全国制覇」の夢を乗せるのもまた一興だ。追っていく中では、春の全道大会を制した札幌日大が一番手か。その制覇から1か月も経たないうちに夏の陣が始まる北海道の夏は、春の勢いを生かせれば面白い戦いができそうだ。タフなエースが試合を作れば、粘りの打線が4試合連続で終盤の接戦をことごとく制した。その勢いは侮れない。名門の東海大札幌は、しっかりした投球ができる投手陣を持つ好チーム。2年生の2枚看板はどちらもしっかりと試合を作ることができる好投手。強豪に競り勝てることができるようになった春に、成長を感じるチームだ。何とか巻き返しを狙う駒大苫小牧は、今年もメンバーには好選手が揃うが、どうしても肝心なところで勝ち切れない大会が続く。佐々木監督としては、現状を打破するための起爆剤が何か欲しいところ。北照は2大会連続の夏を狙う。こちらも今年は最多の部員をそろえて、覇権渡すまじの気迫で戦う。その北照を春破った北海道栄は波に乗って決勝まで駆け上がった。浜中ー小沼の2枚看板は安定していて、組み合わせ次第ではしっかりと勝ちあがっていけそうだ。このあたりが今年の覇権を争いそうだが、その他名門も虎視眈々と浮上を狙っている。面白い野球をする札幌大谷、何度も甲子園の土を踏んでいる札幌一は上位にとっては何とも嫌な相手だ。昨年も含めて2年連続で決勝の舞台を踏む札幌国際情報は、3度目の正直を狙う。春に大ブレークした札幌静修も、圏内の一校と言える。
【青森】(参加53チーム)
今年も八戸学院光星がトップ快走。しかし名門校の急追もあり、予断は許さない。
◎ 八戸学院光星
〇 青森山田 八戸工大一
△ 弘前学院聖愛 八戸西
▲ 東奥義塾 八戸工大二 弘前東
1年のブランクを経ても、夏の県大会の図抜けた候補筆頭が八戸学院光星、それを追う一番手が青森山田という四半世紀続くこの図式は、今年も変わりがなさそうだ。八戸学院光星は、今年も戦力が充実している。秋、春と県大会を連覇。昨年は秋春ともに青森山田の後塵を拝したが、今年は「元の図式」に完全に戻しているようだ。春は準々決勝の青森山田から始まり、センバツ帰りの八戸西、東奥義塾、そして八戸工大一と強豪に対してことごとく接戦を制しての優勝だった。「大勝はできなくとも、接戦でも勝ち切ることができる」ことを県内の他のチームに見せつけたことは、ある意味大勝続きで勝つよりも相手に脅威を与えているかもしれない。2年に懐かしい名前を見つけた。光星学院だった時代に何度も「初出場」を夢見て投げ続けたエース洗平の息子である洗平投手である。エースは右本格派の横山。光星のエースの系譜を継ぐ好投手で、今年も分厚い投手陣と振り切る打線で、全国の舞台での上位進出を狙うチームだ。ライバルの青森山田は、コロナ禍の昨年は秋夏(春は中止)ともに県大会を制して完全復活を印象付けたが、今年はまだ4強にも届いていない。しかしやはり潜在能力は県内ではピカ一で、光星を追う一番手に上がるだろう。光星を破るには、打線が爆発することがマスト。春準優勝の八戸工大一は、打線活発で打ち勝つタイプのチーム。しかし春は投手陣の踏ん張りが今一つだった。聖地に立つためには、投手陣の整備が最も必要か。センバツに出場した八戸西は、大エースの福島がチームの中心だが、彼に頼り切らず、上位で彼をコンディション良く投げさせることができれば春に続く夢も広がってくるはず。弘前学院聖愛は、県内では強豪で知られるものの、気が付けばまだ甲子園の土を踏んだのは一度だけ。常に光星に頭をたたき続けられている状況だが、それを打破するエポックメーキングな年とすることができるか。そのほかでは、名門の東奥義塾が昨年に続いて上位に顔を見せ始めていて、復活の兆しが感じられる。八戸工大二、弘前東当たりもチャンスをうかがっている。
【秋田】(参加41チーム)
毎年好選手を生む近年の秋田大会。今年は明桜のエース風間に注目だ。
◎ 明桜
〇 能代松陽 由利工
△ 秋田中央 大館桂桜 秋田商
▲ 大館鳳鳴 金足農 大曲工 角館 能代
ここ数年、毎年のように好選手を生む大会としてクローズアップされてきた秋田大会。かつて甲子園で全く勝てない低迷の時期を経験したが、その状況からは脱したようで、活気が感じられる大会だ。その秋田大会、今年の大会で一人話題を独占するのは明桜のエース・風間だ。いろいろと課題もあり「原石」どまりだった昨秋までとは違い、この春はかなり課題を克服して、プロのスカウトをもうならせる投球を披露できるようになった。もともと好選手が集まる環境にある明桜が、3大会ぶりの甲子園を完全に視野に入れた。その明桜も「絶対の大本命」ではない激戦模様の夏の大会になる予感があり、その刺客一番手には能代松陽を挙げる。もともとはその粘りの戦いぶりで甲子園で一世を風靡した能代商をルーツにもち、戦いぶりは継承されている好チーム。特に夏になると力を発揮するチームで、勢いに乗った時の怖さは県内で知らぬ者はいない。下級生時からチームの中心に座る選手が最後の夏を迎え、時は来たとの思いが強いだろう。3年前に選抜に出場して以来チームの強化が進む由利工も有力候補の一つ。よく鍛えられた攻守が目立つチームで、初出場に向けて打線のさらなる強化に励む。今年は秋春ともに4強入りした大館桂桜は創部6年目の若いチーム。一気に覇権奪取なるかに注目が集まる。新興勢力の急伸に黙っていないのが名門勢。秋田商はエース高橋が成長して戦える戦力を整えつつあり、金足農もこのままで終わる気は毛頭ない。一昨年優勝の秋田中央は、この春も決勝まで駆け上がり、連続出場への備えは万全だ。
【岩手】(参加61チーム)
なんといっても注目は花巻東のルーキー佐々木。岩手から全国区へ、その歩みの第一歩となるか。
◎ 花巻東
〇 森岡大付
△ 一関学院 専大北上
▲ 久慈 花巻南 花巻農 黒沢尻工
花巻東と盛岡大付のライバルのたたき合いというここ数年の傾向は変わらないものの、今年は花巻東の戦力がかなり上回っている。秋は県大会4強で敗れたものの3位で出場した東北大会で大ブレーク。4強まで勝ち上がり、「東北の絶対王者」仙台育英相手にも一歩もひるまず、0-1と接戦を繰り広げて自信を付けた。その時のエース菱川が成長してエースに座るが、花巻東らしい投手陣の底上げもなって、今や「誰が投げても変わらない」4枚の投手陣が盤石に出来上がりつつある。そして今一つ長打力が・・・・・と言われた打線に今春、佐々木監督の長男である1年生の佐々木が加わった。この春は県大会で打率5割弱、4本塁打、12打点と驚異のデビューを飾り、菊池や大谷など、かつての大先輩の系譜を継ぐ存在として注目を一身に浴びている。花巻東は、どんなにスーパーな能力を持つ選手でも下級生時に無理遣いはせず育てていくので、今年の佐々木もそこまでの大活躍は期待できないかもしれないが、打線に一本芯が通ったのは確かだろう。果たして彼が、清原や大谷を継ぐようなものすごい活躍をルーキーとしてできるのかどうか。大注目である。しかしそんな花巻東にも、県内での厳しい戦いが待っている。ライバルの盛岡大付は、今年もその強打で勝負をかける。松本や渡辺がしっかりとチャンスを作り、小針、金子などの中軸につなぐ打線は東北屈指の破壊力を誇る。エース渡辺に頼り切りの投手陣をいかに整備できるかが、花巻東を破ることができるかのカギになってこよう。かつて「3強」を形成していながら近年はすっかり「2強」に後れを取ってしまった一関学院は、甲子園のかからない昨年の独自大会で、夏10年ぶりの優勝を飾った。その勢いで今年も「連覇」と行きたいところ。今年も秋春ともに2強の壁を破れないでいるが、伝統である固い守備力を軸に強打の2強に戦いを挑みたい。少し前まで元プロの中尾監督が指揮を執っていた専大北上は、巻き返しを図っている。選手の質は高く、きっかけがあれば浮上も。花巻東が恐れる久慈は、公立ながら質の高い野球をする。相手を圧倒する力はないものの、勝負になるとかなりしぶとさを発揮する。名門黒沢尻工や、花巻地区で踏ん張る花巻南、花巻農などにも期待。
【山形】(参加44チーム)
いつもの4強が激しい争いをする大会になる。そこに新興勢力、創学館がどこまで食い込めるか。
◎ 日大山形 酒田南
〇 羽黒 鶴岡東
△ 創学館 東海大山形 山形中央
▲ 九里学園 米沢中央 山形城北
ここも例年と図式は変わりそうにない。4強といわれる鶴岡東、日大山形、酒田南、羽黒が今大会も中心となりそうだ。しかしながら、昨年まで4強の中から頭一つ抜け出すかという存在であった鶴岡東が今年は若干分が悪そうだ。その鶴岡東、春はコロナ禍で春季大会の出場を見合わせるという不運に見舞われた。すでに回復途上だが、このことがどれだけ今大会に影響をもたらすか。春も経験していないという事で本命のしるしは打つことができないが、それでも潜在能力の高さは抜群。すでに山形を通り越して全国のレベルでも強豪に互角以上に戦える力があるのは実証済み。今年のこの危機をどう乗り越えていくのか。その「鶴岡東不在」の県大会を勝ち抜いたのは名門の酒田南と日大山形。両校の決勝は延長12回にもつれ込む熱戦で、冬場を越して力を付けてきたことがうかがえた。日大山形は秋の東北大会では4強入りをしており、今年のチームにはかなり自信を持っている感じだ。エース斎藤の安定したピッチングに加えて打線も得点能力が高く、スキのない戦力に仕上がっている。一方の酒田南は、1・2年生をチームの中心に据えて活性化を図った成果が出ての県大会制覇。ここ数年はライバル校の後塵を拝することも多かったが、かつての「10年に6,7回は酒田南」の時代に戻るべく、戦力を整えつつある。羽黒は秋、春ともに県大会で上位進出を果たした。その原動力は分厚さのある投手力。かつてから複数投手制を駆使して戦いを優位に運んできたチームだけに、投球制限のある大会こそその力を存分に発揮できるともいえる。さてその4強のたたき合いが例年の県大会の見どころではあるが、今年は面白いチームが新たに参戦してきそうな気配もある。それが創学館だ。春は4強まで進出。打線が看板のチームだが準決勝では日大山形に完封負け。4強の大きな壁に挑む形だが、どんな戦いぶりを見せるか注目される。名門の東海大山形もコロナで春は出場辞退。どう立て直してくるか。
【宮城】(参加66チーム)
”絶対王者”仙台育英の優位は動かず。どのように勝ち抜き、全国制覇への試金石にするか。
◎ 仙台育英
〇 柴田
△ 東北 東北学院 東陵
▲ 聖和学園 利府 日本ウェルネス宮城
絶対の大本命に座る仙台育英は、「普通にやれば負けるわけがない」と言われる夏の県予選に向けても、みじんも気を緩めていない。それというのも、部員全員のベクトルが「全国制覇」というところに向けられているせいだ。この選抜では「優勝候補」に上げられていたにもかかわらず、準々決勝で天理に大敗。ここ数年必ず甲子園で優勝候補の一角に上げられているにもかかわらず、悔しい敗戦を喫して帰ってくることが多い仙台育英。須江監督はその独自の方法論、育成論で一世を風靡する監督だが、甲子園で最後まで勝ち切るためのピースは何なのか、模索している最中だと思われる。彼の率いる仙台育英が智辯和歌山のように「突き抜けて全国制覇を何度もするチームになる」のか、他のいくつもあったチームのように「突き抜けられずに次第にフェードアウトしてしまう」チームとなるのか、ここ数年がポイントとなってくるのは間違いない。「須江育英」が突き抜けて全国制覇まで駆け上がれば、その後何度も全国制覇できるチームに成長するのではないか、そんな予感めいたものもある。その仙台育英に、県大会で敗れる隙があるかといえば、正直「ない」というしかないのではないか。県大会レベルでは「絶対王者」の地位は、まったく揺るぎはないとみている。常時7,8人がしっかりと投げられる投手陣を構成し、それを支える守備の整備は盤石。打線は全国クラスの好投手と当たると苦戦するものの、並の投手ならば二けた得点するぐらいの迫力がある。今年はエース伊藤を中心に松田、吉野、古川ら誰がマウンドに上がっても大丈夫な面々をそろえ、吉野、八巻らを中心とした打線のレベルも全国レベル。死角は、ない。追っていくチームは非常に厳しい戦いを強いられるのは覚悟のうえで、何とかけたぐりをかけて倒したい。その筆頭候補は、選抜にも出場した柴田か。エース谷木が粘りの投球を見せて勝負を後半に持ち込めば、何があるかわからない。そのためには、仙台育英と当たる前に谷木のスタミナを枯渇させないこと。打線が打って援護するか、2番手以下の投手が踏ん張るか。春の県大会で粘りを見せた東北学院は、4枚揃える分厚い投手陣で勝負をかける。幸い上位に行くまで仙台育英との対戦はないので、盤石な状態で決戦に臨みたい。打線もそこそこ打てるので、ジャイアントキリングの上初出場を狙いたい。ライバルの東北は、今年も仙台育英には大きな差を付けられているといわざるを得ないが、「普段より何倍も力が出る」ライバルとの直接対決で、何かしらの活路を見出したいところだ。そのほかでは力のある東陵、開校2年目にして県大会8強進出の日本ウェルネス宮城あたりが面白そうだ。
【福島】(参加68チーム)
焦点は今年もただ一つ。聖光学院の連覇はなるのか?!
◎ 聖光学院
〇 学法石川
△ 東日本国際大昌平 日大東北 福島商
▲ 光南 磐城 安積
夏14連覇の金字塔を打ち立てている聖光学院。近年その王朝にもほころびが見えるのか、と言われていたが、なんのなんの。まだまだ県内では圧倒的に強く「1強」を続ける聖光学院に、スキを見つけるのは難しい。しかしここ数年で県内のレベルは大きくアップ。聖光学院を脅かしてくるチームが出現してきたのも確かで、そういう意味では面白い夏の大会となりそうだ。聖光学院は、今年は「打ち勝つチーム」というかつてと比べるとチームカラーを少し変えて臨むチームになっているようだ。それでも県大会は3回戦から3試合連続完封を達成しており、聖光学院のしっかりした守りと相手に得点を与えない野球は健在だ。全国制覇が近いといわれていたころから比べると少し全体にスケールダウンしたことは否めないが、まだまだ聖光ブランドは高校野球界で、光り輝いている。その聖光に少しずつ迫ってきているのが2校、学法石川と東日本国際大昌平だ。学法石川は佐々木監督が指揮を執り始めて、チーム全体がよみがえった印象だ。すぐに聖光と互角に戦うというわけにはいかないものの、じわじわとその差を詰めてきている実感はあり、いつこの「夏の選手権」で逆転がありうるのか、注目して見ているところだ。一方東日本国際大昌平は、伊藤監督が巧みに選手を操縦して、その力を徐々に上げてきている。19年の春に続き、このチームの秋の大会でも県大会制覇。聖光という鋼鉄の岩盤に少しづつ穴をあけてきている印象はある。さて、今年の夏はどんな戦いを挑むのか。チームは複数かかえる安定した投手でしっかりと試合を作っていくのが特徴。準決勝敗退ではあったが、きっちりと3位決定戦に勝って「3強の一角」という位置は揺るがない。そのほかでは名門で巻き返しを図る日大東北や、昨夏の交流試合で甲子園の土を踏んだ磐城が、今年も好投手を軸に上位をうかがってきている。