≪第98回全国高校野球選手権大会≫
- 予選展望9 関東(2) -
【茨城】(参加100校)
100の物語を紡ぐ夏。本命・常総を包囲するライバル霞ケ浦、明秀日立。名門石岡一、日立一の快進撃はあるのか?!
◎ 常総学院
〇 霞ヶ浦 明秀日立
△ 石岡一 水戸商 藤代 常磐大
▲ 鹿島学園 土浦日大 つくば秀英
県大会出場校はちょうど100校。この100校が挑む熱い夏になりそうだ。実力的には、投手陣の層が厚く全国でも屈指の総合力を持つ常総学院がNO1だろう。エースの鈴木が故障で戦列を離れたが、その間に速球派の樫村に加え、倉田が成長し、戦力的には分厚さを増した。打線はもとより県下NO1の破壊力を持っており、例年通り候補筆頭の座は揺るがない。対抗は夏に実績を残す霞ケ浦。昨年悲願の初優勝を遂げて甲子園の土を踏んだが、過去6年間で5度の決勝進出と、『夏の強さ』はピカ一のチームだけに、今年もしっかりと仕上げてくるはずだ。今年のエース飯村も、例年通りの好投手。そしてこのエースを中心にしっかりとした守りで、ロースコアのゲームをものにする安定した試合運びが売り物だ。打線は例年よりもむしろ破壊力があり、戦力は整っている印象だ。今年は期待されながら今一つ実績を残せていない明秀日立は、どんな戦いをするのか。常総学院へ挑戦状をたたきつけるには、エース細川やスラッガー糸野などの素質の高い選手が本領を発揮しなければならないだろう。金沢監督がどこまで仕上げてきたのかが見もの。春は関東大会に初出場して『全国のにおい』を少しかぐことができた石岡一。県内屈指の伝統校が、初めての夏を狙っている。エース高崎はなかなかの好投手で、勢いに乗れば初の甲子園も夢ではない。
伝統校の水戸商、そして夏に強い藤代などは県大会の波に乗れば、こちらも上位進出の可能性は十分。面白いのは常磐大。1・2年生がほとんどのチームで、若さの爆発に期待。鹿島学園は、元日大監督の鈴木監督が就任。名門の土浦日大には、取手二優勝メンバーで、下妻二では指揮官として甲子園経験のある小菅監督が就任した。両校ともに面白い存在になってきそうだ。
【栃木】(参加64校)
作新学院の6連覇に待ったをかける、文星芸大付・青藍泰斗・白鴎大足利・佐野日大・国学院栃木の五銃士たち。
◎ 文星芸大付 作新学院
〇 白鴎大足利 青藍泰斗 佐野日大
△ 国学院栃木 矢板中央
▲ 宇都宮商 宇都宮南 真岡工 栃木工
『夏の王者』作新学院の牙城が、六年ぶりに崩れる予兆があり、大会は混迷を極めるかもしれない。作新学院の五連覇の最大の要因は小針監督の積極的な采配に乗って繰り出す鋭い攻撃力。夏の勢いに乗って、どこも止められない攻撃力で他校を蹴散らしてきたのがこれまでだったが、どうも今年はその攻撃が機能しない。力はあるので、かみ合って来れば十分に連覇の継続は可能だが、どうか。逆に長い沈黙を破り名門復活を狙うのが文星芸大付。作新学院が復活するまで、ずっと県内の高校球界を引っ張ってきた名門だが、ここ数年は力を落とし覇権争いに絡めずじまいで、甲子園への”欠席”は8年を数える。今年は素材のいい3年生がそろった戦力で、秋準優勝、春優勝を飾っている。エース佐藤良の安定感は抜群で、しっかり試合を作って打線の爆発を待つスタイルだ。白鴎大足利も優勝圏内。水野・井沢の両エースが相手をしっかりと抑える。青藍泰斗も投手2枚看板が自慢。しかしこちらも打線の破壊力が足りない。悲願達成には、打線が波に乗る必要がある。毎年好選手をそろえて候補筆頭に上がる佐野日大は、今年はここまで音なしの構え。しかしながら全国で注目を集めるスピードスター・五十幡を中心に、機動力をからめた打線の力は一級品。ただ例年マウンドに君臨する”エース”の存在がないだけに、継投を含めて何とか失点を最小限にとどめて上位校との勝負に持ち込みたい。国学院栃木は昨夏準優勝。名門復活には、もう一段の戦力アップが必要か。宇都宮商、宇都宮南の
宇都宮勢の巻き返しも期待。
【群馬】(参加65校)
”あの夏”以来、前橋育英が華麗に復活?!健大高崎、桐生第一の実力校が鋭く追い、レベルの高さが際立つ夏。
◎ 前橋育英
〇 健大高崎 桐生第一
△ 樹徳 前橋工
▲ 伊勢崎清明 前橋商 東農大二
ここ数年毎年言っていることだが、高校野球における群馬県のレベルアップは本当に著しく、今年も関東で最も高いレベルの激戦になりそうな雰囲気だ。”あの夏”以来3年ぶり2度目の夏を狙う前橋育英は、今年は戦力アップに成功。春の関東大会を制し、全国屈指のレベルのチームになった。チームの”顔”は破壊力抜群の打線。県大会6試合で8本塁打を叩き込んだ破壊力抜群の打線は、全国制覇時以上と評判だ。投手陣はなんと6枚の駒をそろえる。関東大会で横浜を1失点に抑えたエース佐藤に加え、関東一戦完封の皆川、花咲徳栄戦2失点完投の吉沢など、だれが投げても全国一流の打線に好投できる投手陣は、それぞれが競い合ってさらに力を伸ばしている。ズバリ全国制覇が可能な戦力だ。追っていくのは3連覇を狙う健大高崎と選抜出場の桐生第一。両校ともに全国レベルの戦力で、前橋育英打倒に燃える。健大高崎は相変わらずの機動破壊に活路を見出す。かなり県内のライバルには研究されつくされている感もあるが、それでも本番にこの”飛び道具”が威力を発揮するのは間違いないところ。エース石毛や2年生の伊藤など継投をカラーとする投手陣に一定の目途は立った。あとはいかに機動力以外のところでの打力を引き上げることができるか。しかし前橋育英との直接対決での相性の良さは大きなアドバンテージ。青柳監督は本番での逆転に自信を見せる。期待された選抜でふがいない戦いを見せた桐生第一は、その後遺症からまだ立ち直れていない。エース内池を擁し、打線も一級品など潜在能力は光るだけに、夏に向けてもう一度チームをリセットできるか。この3強が大会を引っ張るが、後続陣もなかなかの実力派がそろう。秋の県大会を制した樹徳は、ここ数年復活して優勝争いに顔を出してくるようになった。一昨年、昨年と確実に階段を上ってきている感があり、今年は狙いを92年以来の甲子園に定めている。名門の前橋工は、かつての勢いを取り戻したい。今年は戦力がなかなか整ってきている。かつてならば今年の戦力で十分に甲子園が視界に入ったが、レベル急上昇の現在の県大会で、果たして勝ち進めるのかどうか。このところすっかり県大会上位の常連に躍り出た伊勢崎清明は、今年も戦力は充実。何度も跳ね返されている苦手の健大高崎対策はいかに。その他では名門の前橋商、東農大二に高崎商などが上位を狙っている。
【埼玉】(参加163校)
大票田の埼玉の熱き夏。『浦学絶対』崩れ、両手で足りない有力校がぞろぞろ。
◎ 浦和学院 花咲徳栄
〇 春日部共栄 聖望学園 上尾
△ 本庄一 埼玉栄 川越東
▲ 市川越 山村学園 狭山ヶ丘
浦和学院の絶対王者という看板がやや傾きかけている印象の今年の大会は、波乱が演出されるかもしれない。ここ5,6年ほどの浦和学院の
チームとしての充実ぶりは際立っていた。埼玉はおろか『関東に敵なし』の実力をそない、その目は完全に全国制覇一点を見据えていた。そのため県大会は『単なる通過点』でもあったわけだが、昨年から”取りこぼし”も多くなり、県内各校にも『チャンスあり』のマインドが広がりつつあるのを感じる。その浦和学院。エース榊原は安定感のある好投手だが、大事な試合で今一つ結果を残せていないところが心配の種。夏を見据えて森監督は1年生を含め、6,7枚の投手をかわるがわるマウンドに挙げて経験を積ませてきた。その成果を夏に見せたい。打線は昨選抜メンバーの諏訪、幸喜などを中心に、1年生を抜擢するなどこちらも底上げを目論む。実力ではやはり県内NO1であることに間違いはない。2季連続の甲子園出場で、絶対的エース・高橋を擁する花咲徳栄は、秋春ともに県大会では決勝で浦和学院に惜敗。しかしこの試合では高橋を投げさせておらず、夏の決戦に向けて目論み通りと思われた。しかし、その肝心の高橋の調子が上がってこない。高橋が万全なら浦学との対戦でも『花咲徳栄優位』と言えるのだろうが、果たしてどうなるか。打線は破壊力こそないものの、細かい野球で得点力は高い。春日部共栄、聖望学園の両強豪は、今年は投手陣に不安を抱えているため打線で勝負。本庄一、埼玉栄も見据えるのは甲子園のみ。名門復活を期す上尾が久しぶりに甲子園を狙える位置に上がってきた。甲子園をつかめば32年ぶり。かつて『公立王国』だった埼玉も、いまや私立強豪勢の独壇場の様相。かつては甲子園にその名をとどろかせていた上尾。選抜での高松商の華麗なる復活と同様、上尾が復活すればオールドファンが歓喜することは間違いない。
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