最も印象に残った球児
3.青森
田村 龍弘 捕手・内野手 光星学院 2011年 春 夏 2012年 春
甲子園での戦績
11年春 1回戦 〇 10-0 水城(茨城)
2回戦 ● 2-3 智弁和歌山(和歌山)
夏 2回戦 〇 16-1 専大玉名(熊本)
3回戦 〇 6-5 徳島商(徳島)
準々決勝 〇 2-1 東洋大姫路(兵庫)
準決勝 〇 5-0 作新学院(栃木)
決勝 ● 0-10 日大三(西東京)
12年春 1回戦 〇 3-0 北照(南北海道)
2回戦 〇 13-1 近江(滋賀)
準々決勝 〇 5-2 愛工大名電(愛知)
準決勝 〇 6-1 関東一(東東京)
決勝 ● 3-7 大阪桐蔭(大阪)
夏 2回戦 〇 4-0 遊学館(石川)
3回戦 〇 9-4 神村学園(鹿児島)
準々決勝 〇 3-0 桐光学園(神奈川)
準決勝 〇 9-3 東海大甲府(山梨)
決勝 ● 0-3 大阪桐蔭(大阪)
青森県の人たちに『誰か一人高校球児を挙げてください』と言えば、
ほぼ間違いなく三沢高校の太田が上がることでしょう。
日本国民のすべてを熱狂に包んだこの三沢高校。
しかし残念ながら、
ワタシの記憶には残っていません。
ということで、
昭和40年代中盤からを見てみると、
やはり特筆されるのは昨夏、今春、今夏と3季連続準優勝という偉業を果たした光星学院が、なんといっても光ります。
この光星学院が青森山田と並んで青森高校野球界に足跡を残すまでの間、
青森県の高校野球界は、
出口の見えないトンネルの中をさまよっていたといえましょう。
三沢の準優勝の翌年、
1970年から青森県代表は夏の甲子園で実に13連敗。
1989年まで、
歓喜の勝利はお預けになりました。
その後も苦戦は続き、
10年間で3勝10敗という成績で、
活躍を続ける他の東北勢との間に大きな差がついてしまったと感じたこともありました。
しかし99年の青森山田が2勝目の壁を破って8強に進出。
そこから流れは明らかに変わり、
翌00年に光星学院が4強に進出。
01年、03年にも8強に進み、
2強時代で青森の高校野球史に大きな足跡を残しました。
もちろん、
両校ともに主力選手のほとんどは関西を中心とした【野球留学】組。
内外に批判はあるものの、
実績がその批判を封印して、
今では青森県は東北屈指の強豪県へと生まれ変わりました。
そしてその集大成ともいうべきチームが、
去年、そして今年の光星学院。
自慢の強打の中心に座るのが、
この田村龍弘選手です。
入学時から注目されていたこの選手、
体型は小柄でずんぐりむっくり。
まるでドカベンの山田を思い起こさせるようで、
表情も柔らかな『ベビーフェイス』。
それでいて右に左にと痛烈な打球を飛ばす能力はだれにも負けず。
『いいところで必ず打ってくれる』
チームにとっては頼もしい存在です。
内野で出場の2年時から、
3年になってキャプテンの重責を背負うとともに捕手へ転向。
文字通りチームの中心となって、
『陸奥に初の大旗』
の夢を追っていました。
東北初の優勝旗に向かって、
2年夏、3年春、そして3年夏と3季連続で甲子園の決勝に進出なんて、
ちょっとやそっとで成し遂げられるような記録ではありません。
田村は右方向へのどでかいホームランが印象に残っているかと言えば、
ワタシはそうではありません。
最後の夏に見せた『意地の一打』2本が、
深く心に残っています。
まずは準々決勝、
桐光学園のドクターK・松井投手から8回に放った、
決勝のタイムリー。
それまで3打席抑えられていたこの3年生の主砲は、
最後の打席で「心は熱く、頭は冷静に」を見事に実践しました。
冷静な判断で松井の真ん中あたりのストレートを狙った打撃、
頭も技術も、まさに”超高校級”でした。
そして決勝の藤浪との対戦。
追い詰められた9回に、
意地のセンター前ヒットを叩きつけました。
その時も1塁ベース上で涼やかな顔をしていたこの田村選手。
マインドは、プロでも十分に通用するものを持っています。
背が低く余り足も速くない、肩もさほどではないということから、
ややプロでの活躍を懐疑的に見る傾向がありますが、
ワタシは『プロで成功するために最も必要な』気持ちの強さと頭の良さを両方兼ね備えていると思っていますので、
これからが楽しみな選手です。
高校の先輩である巨人・坂本選手のように、
いつか”光星の田村”以上に”〇〇(プロのチーム)の田村”と呼ばれるぐらい成長してくれることを期待しています。
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