このブログを読んでいる方のほとんどが中高年の方だと思うので、いまどきのアイドル事情など知らないし…
そもそも興味ないよ、というご意見がほとんどだと思います。
でもそこには、今のわが国の現状と弱点が如実に現れていて、興味深いし「うーん」と考えさせられる部分があるので…
しばしお付き合い願えないでしょうか。
まず、今の日本のアイドルの本流になっているのが「〇〇坂46」という一連のグループであることはご存じだと思います。
そして少し芸能事情を知っている方なら、最近韓国のいわゆるK-popアイドルが日本にも進出して人気になっていて…
「坂系」をはじめとする日本のアイドルにも、脅威になっていることは聞き及んでおられるかと思います。
年末の紅白歌合戦にも韓国のアイドルグループが出たりする時代ですよね。
韓国のアイドルには、男性アイドル=ナンジャドルと、女性アイドル=ヨジャドルがありますが…
BTSなどのナンジャドルも、そしてBLACKPINKなどのヨジャドルも、世界中の音楽チャートを席巻する勢いです。
女性アイドルグループのメンバーにも、シャネル、ディオール、カルティエ、フェンディなどハイブランドのアンバサダーとなって…
ワールドワイドな「アイコン」として、大スターになっている人物がたくさんいます。
(日本人でそうしたアイコンに選ばれるのはモデルさんか役者さんで、アイドルはいないですね)
当然ながら彼女たちの場合は、収入面でも日本のアイドルとはけた違いの待遇を受けています。
たとえて言えば、日本のプロ野球=NPBの選手と、米国の大リーグ=MLBの選手ぐらいの差があるのです。
そして最近は、大谷翔平がMLBで大活躍しているように、日本人の女性アイドルでもK-popグループの中心メンバーとして…
活躍する人が出てきています。
一方国内で人気の女性アイドルグループで、海外で成功している例はほぼありません。
かろうじて「BABYMETAL」というヘビーメタルバンドが(アイドルではないですが)以前から人気なのと…
「新しい学校のリーダーズ」(これもアイドルの範疇ではないでしょう)が海外ツアーを成功させているぐらいでしょうか。
なぜ日本と韓国で、これほどまでに差がついてしまったのでしょう。
韓国のアイドルは国際化して大ブレイクし、日本のアイドルはガラパゴス化して世界では受け入れられない。
もちろん「言葉の問題」があって、韓国アイドルは流ちょうな英語を話すというのもありますが…
彼女たちの曲そのものは、歌詞の大部分が韓国語なので、そこは通じていない。それでもウケている。
へたな分析をするよりも、双方の楽曲のMVをちらっと見比べてみるだけで、一目瞭然かと思います。
まずはK-popの人気グループのひとつ「BLACKPINK」の、YouTube再生回数17億回をカウントした曲「BOOMBAYAH」から。
では変って、いま一番売れている和製アイドルグループと思われる「乃木坂46」のMVのうち…
MVの再生回数でおそらく1、2を争う数字(8760万回)を叩き出した「インフルエンサー」をご覧ください。
どうですか?メンバーたちの見た目も、曲調も、演出や美術も、全然違ったでしょう?
まずなにより、乃木坂のみなさんは髪色がみんなそろって黒もしくは、ごく暗い色で、派手なメイクもしていないですね。
基本的に全員が「清楚風」で、なんなら「処女性」を感じさせる、おとなしそうな「女の子」で統一されている。
いうまでもなく「見た目は」ですが。
これは日本人の「男の子」が求める理想の恋人像を反映しているのだと思われます。
一方でBLACKPINKは髪色もさまざま、サイケデリックな衣装とメイクで、結構「暴れて」いる。
こちらは男性目線というより、女性が「かっこいい」「あんなふうに弾けてみたい」と思う見せ方です。
「ガールズクラッシュ」などという呼び方もされる売り方ですが。
現に、こうした「ヨジャドル」が日本に来て行ったライブの映像を見ると…
まず登場した瞬間の観客の反応が、日本の女性アイドルみたいな「うおー!」ではないんです。
「キャーッ!」という女性の歓声がほとんどを占めている反応。
「女が惚れる女」という感じなんですね。
ただ北米やヨーロッパなど、彼女たちがワールドツアーを回ったところでは…
男性ファンも半分ぐらいいたみたいです。
曲調が今風のエレクトロポップにヒップホップを混ぜた感じで、世界的にウケるものであるのは確かですが…
日本人以外の男性には「かっこいい女」で「ちょっとじゃじゃ馬」なぐらいが魅力的に見える人の方が多いのですね。
なにより日本のアイドルは、日本人以外の男性から見ると「子どもにしか見えない」ので、少しもセクシーじゃないそうです。
実際は「坂系」日本のアイドルよりも、多くのヨジャドルの方が年齢は下なんですけれど。意外なことに。
ちなみに子どもっぽい女の子を「多くの」男性が魅力的に感じるのは、日本独特の現象みたいですよ。
もちろん「幼い少女性」を求めるロリコンやペドフィリア(小児性愛)の男は外国人にもいるのですが、ごく少数です。
以前テレビに「典型的イタリア人」みたいな立ち位置で出ていたパンツェッタ・ジローラモという人がいました。
(ちなみに私は知り合いです)
彼がバラエティー番組に出て、5人ぐらいの女性アイドルの写真を見せられて「ジローさん誰が好み?」と訊かれたとき…
ジローラモは困惑した顔で「でもこれ…ぜんぶ子どもですよね?」と言って、ちょっと周りを慌てさせていました。
イタリア人は好色だから(失礼な偏見です)それが好む女の子は?という興味だったのでしょうけど…
「みんな子どもだから、好みとかそういう対象じゃないでしょ!」と思われてしまったという。
実際は、二十歳を過ぎた女の人が多かったのですけれどね。
なので全員黒髪(か暗いカラー)で清楚さをアピールする日本のアイドルは、海外では「子どもグループ」と思われてしまう…
というのが、まず、海外では売れない大きな要素でしょう。
あとは、人数が多すぎること。
あれだけ多くの人数がそろって同じ動きのダンスをするのは、海外の人からするとちょっと気持ち悪いみたいですよ。
私の親友のイタリア人「F」の息子は、外見は金髪ですが日本生まれで、秋葉原なんかにも通うアニメオタクで…
「アイドル声優」にも詳しかったのですけれど、46とか48とかの、グループアイドルには興味ないと言ってました。
いわく。なんだか見てると「北朝鮮とかのマスゲームを思い出しちゃって、気味悪くなる」と。
「あと、ひとりひとりの個性が際立たなくて、なんか面白くない」とも言っていました。
なるほど。日本人は小学校の運動会などからもう、マスゲーム的な動きを叩き込まれているので違和感がないけど…
そういう経験をする国(日本、北朝鮮、中国ぐらいでしょう)以外の人から見ると、すごく異様に見えるらしいです。
全く同じ動きで踊って気持ち悪くないのは、せいぜい10人前後ぐらいまで、みたいですね。
これも、日本のアイドルが海外でウケない理由のひとつでしょう。
それからもう一つ。純血主義。
韓国のヨジャドルのグループには、日本人のほか、アメリカ人やカナダ人、タイ人、ニュージーランド人など様々な国の人がいます。
黒い肌の人もいます。
最近は、一人も韓国人がいなくて全員が外国人、というグループまで出て来ました。
ひるがえって日本のアイドルグループは、たいがい「純血主義」で、ほぼ日本人ばかりです。
子どもっぽ過ぎること。大きな集団すぎて外国人の目から見ると没個性に見えること。マスゲーム調のダンスがキモチワルイこと。
純血主義であること。
これに関してはアイドルなどだけでなく、日本の会社員に関しても、あまりに純血過ぎると思います。
海外支社はともかく、日本のオフィスに外国の社員が少なすぎる。
海外企業はワールドワイドに人材を集めて多国籍チーム化しているのに、ほぼ純血で、太刀打ちできるのでしょうか。
それこそ、外国人選手を全員排除した場合の日本のプロ野球球団と、メジャーリーグのフルメンバーチームと試合したらどうなるか。
これは日本人集団の病理なのかも。
あとは、それに加えて曲調が世界の潮流から離れていて、日本でしか通用しないこと、でしょうかね。
子どもっぽい女性、おとなしい女性が男性に好まれる。そして女性自身もそれに合わせて自分を演出する。
これは、日本社会のジェンダーギャップ(男女格差)がものすごく激しいことと、関係しているのではないかと思います。
おとなしく言うことを聞いてくれて「おぼこい」清純な女の子がいい…
そしてできれば自分より頭がちょっとだけ弱くて、自分より稼げない女性と付き合いたい、結婚したいという願望。
それは日本の男の、一種の病弊みたいなもので、それが社会のジェンダーギャップを保持しているのではないでしょうか。
それと、四十人を超える大グループを好むというのは、日本人の男女の潜在意識の中にある…
大勢の人の中に、多数派の中に入って、埋没したい、同化したいという願望の反映なのではないかと思います。
個性を発揮し「私」を主張したいという傾向の強い、グローバルスタンダートと言って良い人間の願望とは、ずれている。
そうした日本社会そのものの特徴が、アイドルの在り方にまで現れて、結果、世界では通用していないのではないか。
そんな風に思うのです。
いかがですか?
こんな風なのでYouTubeのファンコメントも、ヨジャドルの場合は90%以上が国外からの書き込みです。
一方「坂系」アイドルなどのYouTubeに、海外からのコメントが入ることは、皆無に近いようです。
韓国の芸能コンテンツが海外マーケットを志向するのは、人口が少なくて国内マーケットでは利潤に限りがあるというのもあります。
一方日本の人口は1億2千万人ほどいるので、国内だけの「鎖国的」売り方でもそれなりに儲かる、というのはあるでしょう。
でもその結果、動画の再生回数で、韓国「数億から数十億レベル」、日本「数百万から千万単位」と大差がついてしまう。
芸能プロや製作会社の時価総額では、ゼロ2つ違うくらい、韓国の会社がジャイアントになっちゃっている。
これでは、たとえばMV製作にかけられるお金も段違いになって、結果、コンテンツに差が出てしまう。
先ほどのMVを見ても、韓国のものが「ゴージャス」なのに対して…
日本のものは、厳しいことを言うと、どこか「安っぽく」感じられてしまう。
だから世界のハイブランドのアイコンに、日本のアイドルは、ヨジャドルに比べると選ばれにくいのですよ。
こうやってガラパゴス化するほど、どんどんしょぼく、貧しくなる。
カネがあるのが偉い、なんてわけではもちろんないけれど、このままではちょっとまずいのではないですかね。
かつてアジアいちの経済大国で「金満日本人」とまで言われたのが、どんどん落ちぶれて…
かろうじてGDP世界4位を保てているのは、まだ「人口が多い」からですよ。
それもいまや、減りつつあるし。
もうあと1年か2年でインドに追い越され、その後ほどなく、インドネシアなどにも追い越されるというのが…
IMFの見立て。しかも、相対的にしぼむ速さが、IMFの予測よりも速くなっているという。
まあ経済大国なんて呼称は捨てても、一般国民一人一人がより豊かで健康で文化的な生活を送れれば何も問題ないのですが…
そういう方向に行っていますかね?
アイドルの話から、社会経済の話になりましたが…
ただ海外の男性の中にも、韓国のK-popアイドルみたいなタイプの女性は苦手な人も、もちろんいるのです。
日本には「弱者男性」なんて言葉もあって、それとはちょっと違うかもですけれど…
自分の気が弱くて、おとなしくて、結果「強い女」には怖くて近づき難いというタイプの男性たち。
それなりに数は多いみたいですよ。
彼らは日本のサブカルチャー、その「萌え」要素に惹かれて、そこに「救われて」生きているのです。
でも、そういう人たちも、日本のグループアイドル文化には、なかなかなじめていない。
かえって、アニメ・ゲームの萌えコンテンツの「中の人」である、声優さんに興味を持つ人の方が多いようです。
たとえば我らが「推し」の小倉唯さんのMVのファンコメント欄は、なかなかに国際色豊かだったりします。
そこは、グループアイドルさんのコメント欄と、全然違うところです。
こちらはたぶんポルトガル語。ブラジルのファンでしょうか。
上の方はインドネシアからのコメント。下の方のコメントもデジタルツールで翻訳した日本語で、書いた人は外国人でしょう。
ドイツ語もあります。
もちろん韓国のファンも。先日、韓国のホールを借りてファンミーティングがありました。
下はスペイン語ですね。意外に中南米諸国でも人気があるようです。
それから、中国本土の方、シンガポールの方、フィンランドの方、ロシアの方…
珍しいところでは、アゼルバイジャン共和国からのファンコメントもあります。
英語圏以外からのコメントは、むしろK-popグループより多いぐらいの感じ。
それこそ、ワールドワイドにウォッチングされているようです。
坂系アイドルのYouTubeのコメント欄との違いは、どこにあるのでしょう。
私には言い切れませんが、やはり「大集団」でないところ、そして彼らが好きなアニメと直接結びついているところでしょうか。
それと、小倉唯さん自身が、ヨジャドルの「オタク」なので(特にIVEというグループが推しのようです)…
そういう所から、海外でもウケる秘訣を、もしかすると、仕入れているのかも。
なにしろ、セルフプロデュースの達人ですから。
やり方次第では、小規模であれば海外でのライブ開催も、可能かもしれませんね。
ぜひ、海外に羽ばたいていただきたいものです。ぼちぼちそれを始めてもいるようですし。期待しています。
では最後に、海外にもファンを確保している小倉唯さんのMVのうち、少しK-popコンシャスかな、というものと…
彼女が推している韓国の「IVE」さんのMVを貼っておきます。