このひとつ前の記事で触れた、私の生涯で一番の親友にして心友のFがイタリアから来日しています。
まもなく帰国してしまうのですが…
その帰る家の敷地(とても広大な)と、そこから見える風景が、こんな感じなのです。
湖があって、敷地内に森があって清冽な小川が流れていて、野生動物がいっぱいいて、アルプスの峰々が一望できる。
そんな、地上の楽園のような場所なのです。
私が住んでいる、ちっぽけなマンションとは比べようもない。
羨ましいとも思えないぐらい。笑
しかも家はここだけではなくて、ミラノやその近郊の街にも、いくつもアパルタメントがあるという。
まあ…貴族ですね。
でもお爺さんは戦前のイタリア共産党の大物で、あのファシズムの創始者ムッソリーニとも知り合いで…
ムッソリーニと対立して国外に亡命することになったという、ちょっと特別な家なのです。
ちなみに彼の妻はさらに高位の貴族で、中世初期に、ヴェネツィアに初めて移住した7つだか8つだかの家の一つの出身。
ヴェネツィア本島のほか、リド島にも家があるほか、本土に「お城」まで持っているという人。
すごい美人ですが、お高くとまった雰囲気など全くなくて、陽気な「イタリアのマンマ」そのものなんですけど。
そして生物学者であり、また幼児教育の世界では国際的な権威で、スイスの私立学校の校長を今務めています。
(イタリアにある夫の家から毎日国境を越えて通勤しています)
で、一昨日Fと夕食を共にしたのですが、彼が日本に住んでいたころ、何度も美味しいワインと食事を共にした…
いわば「ワイン仲間」のことを思い出して、帰国する前に挨拶しておけたら……というのでその人に連絡しました。
そうしたら、そのワイン仲間「I氏」も「Fちゃんが帰る前にぜひ会っておきたい」と。
Fが日曜日にイタリアに帰国してしまうので、時間がなくて食事会はセットできませんでしたが…
I氏の会社まで、今日私とFで出向いて、1階の応接サロンで1時間ほど、お茶しながら歓談しました。
実はこのI氏、日本で一番有名な某ゴシップメディアを擁する出版社の、社長なのです。
自民党の大物政治家も、野党の議員も、高級官僚や財界の大物も…
そして芸能人に至るまで、ゴシップをあぶり出しては、タブーも容赦もなく「〇〇砲」をぶっ放す。
いま話題になっている、某芸能事務所のボスの、未成年の少年たちへの性的虐待を…
あらゆるメディアがタブーにして触らなかったのを何十年も前に暴き、また最近やっているので知られています。
その「砲台」のある基地の、最高司令官みたいなものですね。
この世に何も怖いものがないかのような(アメリカ政府-CIAを除いてかな?)豪胆なところがある反面…
広範囲にわたって教養の深いインテリで、洗練された趣味人でもある、I氏。
そういう部分で、まさに「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」みたいな、万能の才人であるFと気が合ったのでしょう。
とくにワインに目がないというところで、この分野でも天才的な舌と鼻を持つFをリスペクトしているみたいです。
I氏とお近づきになったのは、最初は十数年前、私がもといた出版社の先輩の紹介でした。
それから何冊か、あちらの会社から本を出させていただいたのですけれど…
そのうちFと一緒に、不定期に「ワイン会」「食事会」を開く、お友達モードになってしまって。
それからは、会っても仕事に関わる話をしないのが、お互いに暗黙の了解みたいになっていました。
都内のイタリアン・レストランで集まることもありましたけれど…
一番多かったのは、Fの家にそれぞれお薦めのワインを持ち寄って、Fの手料理を振舞ってもらう、という形。
そして、それが一番楽しかったです。
写真のアーカイブを見ていたら、その当時の写真がいくつかありました。
ひとつを除いて、たしかフリウリ地方の郷土料理のお店に行ったときの写真かと思います。
私には、いいワインを買ったり飲んだりする財力はもうないので…
今となっては、思い出でしかないのですけれど…
今日会ったら、I氏が「次にFちゃんが日本に来るときは、ぜひまたワインと食事の会をしようよ!」と。
Fは今年の終わりごろに、また来日する予定なので、そのときみんなで集まるブッキングを任されてしまいました。
まあ、たまには贅沢も良いでしょう。
いつまで生きられるか分からないんだし。
気になったのは、Fが半年余りの時間を経てやってきた日本の様子を見て…
「街にいる人の元気や活気が、ますますなくなったように感じる」
と言っていたこと。
イタリアも問題だらけなのだけれど、あちらの方が、人々の顔に未来への希望と熱気が見えると。
二週間ほど滞在して、日本ではもうビジネスをする余地はないんじゃないか、とも言っていました。
90年代までは、ミラノの主要なショッピング街は、日本人で埋め尽くされていたのに…
いまはほとんどが中国人で、いくらかの韓国人。日本語を話す人は、もうほとんどいなくなってしまったと。
広い世界への興味や、好奇心、情熱を失って、身の回りの小さな世界に籠ってしまったような日本人の姿。
小津安二郎や溝口健二の映画に魅せられたのがきっかけで、日本文化に憧れて…
親日家としてどっぷり沼にハマって、結果的に、30年近くも日本に暮らすことになったFにとっては…
「こんなに悲しいことはない」と。
私も悲しいです。
彼が年末にまたやってくるころ、日本は、少しは活気を取り戻せているでしょうか。