その施設にいる看護師から先日連絡があり、母の片方の乳房に異変が生じていると。
おそらく乳房内にシリコンを長年入れていたことが原因で、乳房の肉がおかしな増殖の仕方をして2段に分裂し…
さらに手術痕からリンパ液が染み出しているそうです。
施設から大病院に連れて行かれて検査をした結果、悪性腫瘍でないということは分かり、傷口を消毒しながらガーゼを当てる処置を続けることになりました。
もともと最初に倒れたときに、急性期病院で「お母様、両方の胸に乳房再形成、あるいは豊胸手術をしてらっしゃいますね」と言われました。
シリコンが入っていて手術痕があると。
家族には全く寝耳に水のこと。
その時は豊胸、あるいは乳がんになって乳房を切除したことがあるのかもという風に言われました。
その後転院したリハビリ病院でも検診の結果同じことを言われ。
それから移った施設でもまた同じことを言われました。
何度医師に言われても、そのとき父はまだ、頭はしっかりしていたのに事実を受け入れませんでした。
「そんなわけない」「俺は聞いてない」「医者なのに何だかよくわかんねえこと言ってたな」
という具合で。
母もまた、その時その時で、身体検査されるのを異様に嫌がって…
「延命治療よ」「いやだ」とろれつの回らない舌で言い続けていました。
今考えると胸にシリコンが入っていることが家族に対しても絶対の秘密で、墓まで持って行きたいことだったのだなと。
がんだったのか美容整形としての豊胸手術だったのかはともかく、結局家族全員が、彼女にとって信用して全てを打ち明けられる存在ではなかったわけで…
母の人生は孤独だったのだなと思います。
そして、妻の体のそんな重大なことをこの歳になるまで全く知らなかった父は、なんとうかつな夫だったのかとも思います。
仮に乳がんだったとしたら、なぜ夫に隠したのか? 夫でいながら、妻のがん手術と乳房再形成に全く気付かない、なんていうことが有り得るのか?
私には、全く理解できません。
(もっともシリコンが「両胸に」あるというのは、がんの後の再形成としては不自然に思えます)
美容整形としての豊胸なのだとしたらそれは、おそらく結婚前にしたものなのでしょう。
今87歳の母が若かったころ、豊胸手術というのがそんなに一般的なものだったのかどうか、私には分かりませんが…
いったい何のために?胸が小さいことへのコンプレックス?
当時の一般の若い女性は、そのぐらいで美容整形や豊胸手術をしていたのでしょうか。
少なくとも宮城の田舎でそれが普通に行われていたとは考えにくいので、おそらく東京に出てきてから行ったものでしょう。
また…
当時豊胸手術の技術レベルがどの程度だったのか分かりませんが、夫でありながら、全く気付かないということがあるのでしょうか。
下世話な話ですが、触って全然気付かないようなものなのでしょうか。
私という人間が結婚後すぐさま出来た子どもだという話は聞いていて。
子どもが出来た後の長い長い結婚生活のほぼ全部が、全くのセックスレスだった様子なのも、察していますけれど。
それはもしかして、母が胸のことを知られたくなかったからというのもあるのでしょうか。
いったいどういう夫婦なのか。
この歳になって我が親たちが、得体の知れない、気味の悪い人たちに思えて来ました。
美容整形や豊胸手術そのものが悪いと言っているのではないです。
そういうことを、60年以上も、親兄弟にも配偶者や我が子にも隠しているということ、そして夫なのに全く気付かないということ。
それが気持ち悪いと思うのです。
子どものころは私も親をそういう観点から見たことがなかったし、その後はなるべく距離をとって付き合って来たのですが…
親たちが老い衰えて、世話をしなくてはならなくなったら、いろいろなことが、二人の素顔が見えて来た。
それは、どうやら子として私が思っていたのとは、全く違う顔だったらしいということ。
両親ともに、普通以上に自己中心的な人たちだったということ…
私に対しても含めて、誰からも隠している秘密があるということ…
(母に関しては、我が子に対しても孫に向かっても、自分の幼少期や青春時代の思い出話を全くしたことがないし。これって普通ですか?)
そして面倒くさいことにはちゃんと向き合わず、全部あと回しの上、最終的には逃げてしまう、いい加減な人たちでもあったということが分かりました。
何だか身体の力が抜けて行くような気が…。
まだまだこれから、知らなかったいろいろな問題が噴出して、息子として後始末に苦労しなければならないような気がします。
親ガチャというのは、やっぱりあるんじゃないでしょうか?
そしてさらに、母の胸のCTスキャンをした際に、肝臓に「何か」があることが発覚したそうです。
悪性腫瘍と断言は出来ないけれど、精密検査のために造影剤を入れての検査をするから…
病院に提出する同意書にサインしてほしいと言われ、施設に行って説明書を読み、サインして来ました。
大事なことなので、父にも報告したのですが、ピンと来なかった様子。
言ったことは、紙に書かないと数分、というか10秒後にすべて忘れてしまう状態なので、もう全く憶えていないと思います。
考えてみると父が認知症になってきたのには、母に関する都合の悪いあれこれを、もう認識したくないという意識も関係しているのかも。
思えば私が深刻ないじめに遭っていたときの対応も含めて、家庭で困ったことがあるとすぐに逃げる人だったので。
逃避としての認知症、というのもあるのかもしれません。
私も、もう精神的にも体力的にも疲れました。
こういう苦労、我が子にはさせたくないですね、絶対に。