
これまで日本の悲惨さを見て来ました。
今回は、世界に素晴らしい国々があることを紹介し、その理由も探ります。
それは北欧ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、フィンランドです。
* 北欧の紹介
皆さんの北欧のイメージは、寒い国、フィヨルド、バイキングが強いのではないでしょうか?
北欧の1年の半分は日本からすると冬で、ノルディックスキー発祥の地であり、アイスランドとノルウェーは一部氷河に覆われ、北極圏に近いのでオーロラが見られます。
フィンランド以外は、11世紀頃、世界の海を荒らした勇猛なバイキングの故地でした。
* なぜ、このように自然が厳しい北欧が素晴らしいのでしょうか? 注1
私は30年以上前にスウェーデン、デンマークを企業視察で訪れ、そして2018年にノルウェー、スウェーデン、デンマークの都市を一人で巡りました。
私が北欧を訪れたのは11月と6月で、北部では雪国の風景と、初夏の湖畔や海岸の風景を堪能しました。
* 私が受けた印象
・ 家族や友人との生活を優先 ⇒ 午後4時を過ぎれば帰宅を急ぐ人や、街・郊外は寛ぐ人で溢れる。
・ 人権や環境保護への意識が高い ⇒ 男女格差ほぼ零、男性の育児休暇は必須、活動家グレタの生誕地。
・ 小学生から政治参加 ⇒ 投票率が高く、腐敗政治家がいない。
・ 日本と異なる企業と労働 ⇒ 外注比率が少なく世界に通じる企業が多く、有給休暇が多く、キャリアアップで転職する労働者も多い。
・ 福祉国家 ⇒ 医療・年金・教育・転職・障害者等に手厚い保護がある。
30年を経ても、これらは変わらず、さらに発展し豊かになっていました。
ただスウェーデンだけは、現在、移民問題で国民の不満が募っているようです。注2
* 具体的に良さを見て行きます
「 図1. 北欧5ヵ国は、毎年常連の幸福度ランキングで10以内」
ちなみに、2024年の世界幸福度ランキングで、日本は143カ国中51位となり、順位を下げ続けている。
「 図2. 北欧のGDP(国内総生産:$換算)は増大し続けている」
日本は1990年代から横這い。
「 図3. 男女格差が最も少ない北欧」
日本の順位は、2024年で118位/146か国でした。
「 図4. 高所得ながら格差が少ない北欧」
北欧は高福祉国家の為、税負担が多く、大金持ちに成れない企業家は意欲を削がれているはずなのに、なぜ経済成長するのだろうか?
例えば、大富豪を夢見た海外の天才達は米国に移民し、米国の高成長を牽引している(IT産業など)。
北欧には、その条件が無いのに、なぜ可能なのか?
* 成長と豊かさの秘密
「 図5. デンマークとアイルランド、スウェーデンの国際競争力は最上位」
「 図6. デンマークと日本の比較から見える北欧の良さ」
デンマークは政府、ビジネス、インフラについて、抜群に良いと言える。
デンマークが劣っているのは物価と租税政策ぐらいで、日本が優位なのは雇用ぐらいです。
この連載の20話でも示したが、デンマークと比べ日本の悪さがよくわかる。
「 図7. 北欧は世界で最も腐敗していない国」
図6で、日本の競争力が低い理由に「政府の効率性が悪い」がありますが、これは腐敗度と関係していると思われる。
北欧のように国民の意向が政府にストレートに届き、政策が国民の為に行われているなら、今の日本のようにはならなかっただろう。
「 図8. デンマーク企業の方が、日本より小規模」
日本の企業では従業員数50名以上が5.2%あるが、デンマークだは1.2%と少ない。
また従業員数0人が半数を占めている。
つまり個人企業が多い。
これは何を意味するのだろうか?
「 図9. 北欧はベンチャーキャピタルが活発」
これは重要で、この傾向は米国にもあるが、日本には無いものです。
ベンチャー事業が多く生まれると言うことは、競争力を無くした旧産業は市場から消え、その従業員は新たな産業へと転職して行くことになります。
ここで、デンマーク等の北欧は、その力を発揮します。
政府は、産業転換と転職を当然とみなし、労働者の休職中の給付と再教育システムを構築し、手厚く転職を支援しています。
米国や日本は、産業転換と転職について、自由競争として個人の責任に課し、セイフティーネットを設けていない。
この事が、米国の低所得者の不満増大による社会分断と日本企業の停滞を生んでいる。
北欧では、働いてからもキャリヤアップの為に勉強するのは当たりまえだが、日本人は学校を卒業すれば、勉強する人は稀です。
私が30年以上前、企業を訪問して驚いたのは、従業員200人ほどの企業(騒音計メーカー)が、世界に数ヵ所支社を持ち、世界相手に事業を展開していたことでした。
実は、北欧の企業の特徴は、小さいながらも世界を目指し、「1つのニッチな分野に深く特化している」点です。
従って、日本のように低賃金で仕事を貰う下請け零細企業は無く、メーカーは部品を下請けに出すことも無いと言うわけです。
北欧では、小学校を終えるまでに母国語以外に2カ国語を学ぶ。
また高校から大学等に進学する前に、外国や就業の経験を経て、進路を決める事を奨励している。
このような事が、事業の国際展開を支え、貿易額はGDPの65%にもなっている(日本は32%)。
* この帰結が、以下の成果を生んでいる
ニッチを目指す企業は多種小ロット生産になるので、従業員はベルトコンベヤー等に急かされずに仕事をする事になる。
この事も、人に優しい作業環境が実現出来る理由でしょう。
「 図10. 北欧の労働生産性は日本の1.3~1.8倍」
作業はのんびりしているように見えるが、生産性は高い。
この理由は、高付加価値商品を生み出しているからです。
つまり独創性のある、高く売れる商品を提供しているからです。
「 図11. 労働時間は短くなり、休日が増えるデンマーク」
賃金が高く、労働時間が短く、長期休暇が取れ、ストレスの少ない、働く人に取って夢のような国が北欧なのです。
ここでは要点だけしか長所とその理由を説明していませんが、実に細かく、幸福度を向上させるシステムを日々改善し続けられているのです。
それもこれも、地方と中央の政府、労働者代表と企業代表とがタッグを組んで、責任と変革を担っているからです。
これは私がスウェーデンの地方都市、カールスタッドを2018年6月初めに訪れた時の写真です。
平日の4時を過ぎて、街を歩いていると、仕事を終えた人々が、通りに溢れ出した。
上の写真の左、川沿いのレストランのテラスは、友人連れや夫婦らで満席になり、ビールを呑みながら歓談していた。
下の写真、若い女性達が水着姿になり、上の写真の数百m上流のウッドデッキで日光浴を始めた。
このような光景は北欧三ヵ国、いずれも同じでした。
毎日残業に追われている日本では考えられない光景でした。
次回に続きます。
注1. フィンランドを除く北欧は、ヴァイキング精神(アイスランドのように全員が平等に国を治める)が息づいており、それが平等を重視する高福祉国家へと向かわせたと言えます。またヴァイキングは残虐な略奪者と言うよりは、生活の糧を得る為に、遠隔地との交易を目指した開拓精神豊かな航海士と言えます。また北欧はバルト海で大陸と隔てており、西欧からの干渉受ける事が少なかった。一方、フィンランドはロシアからの干渉や脅威に晒される中で、民族を事にするがスカンジナビア半島の北欧同士として、歩みを一にして来た。この事が、大戦後、共産主義では無い、自ら作り出した高福祉国家へと共に進ませ、現在に至った。大戦時、北欧はドイツやロシアの侵攻を受けたが、中立を唱えていたことにより、被害は軽傷で済んだ。また北欧は寒冷地の為、農作物に恵まれず、生活は苦しかったので、かつてスウェーデンから米国への移民が多い時代があった。こうして北欧は、技術優位、国際貿易、教育重視の政策を生んだと言える。
注2. 北欧は、近代以降、人道支援と中立を謳い、小国ながら西欧から独立を早くに認めてもらっていた。そしてPKO(国連平和維持活動)に積極的に参加して来た。また移民・難民の受け入れには積極的でした。かつ移民・難民の受け入れ体制(教育と就職)は西欧に比べ優れたものでした。しかしスウェーデンは、ここ10年の間にアジア(特に中国)からの移民が急拡大し、治安の悪化を招き、社会には不満が蓄積しているようです。
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