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* 今回は、日本の「働く人」の惨状をデーターから読み解きます。
既に、国鉄やJRの惨状を見て来ましたが、これは他の民間企業にも通じます。
多くの方は慣れてしまっており、その異常さに気付かないでしょう。
日本と各国との比較データーを見れば、驚きの姿が見えて来ます。
* 日本の「働く人」(国民)の惨状は以下の三つ
・職場のストレスが多い。
・生活に豊かさを感じられない。
・今も将来も幸福とは思えない。
おそらく麻生や竹中のような人なら、不満は贅沢だ、貧乏から抜け出すにはもっと頑張れと言うだろう。
* 先ず、満足度の推移を見ます。
「図1.日本では、一人当たりGDPが伸びても、満足感があまり増えていない」
1990年からGDPの伸びが鈍化しているのは、バブル崩壊の後遺症が長引いている為です。
2002年と2009年のバブル崩壊で失業率が高くなった為に、大きく満足度の低下が起きている。
結果的に、満足度は横這いになった。
皮肉屋は、「人は欲張りなので、物が豊かになっても満足しないだけさ」と言うかもしれない。
確かめてみましょう!
* 日本の幸福度は世界で何番目?
「図2. 世界幸福度調査で、いつも日本は先進国内には入れず、156ヵ国中50位辺り」
保守系マスコミは、この調査が欧米基準に偏っていると難癖を付け、この結果を否定しょうと懸命です。
また北欧を暗いイメージで語る傾向がある。
しかし、欧米と価値観が異るメキシコや台湾、カタール等は大概30位以内に入っており、北欧3ヵ国はいつもトップを独占している。
この調査は国連が行っており、GDP、社会的支援、健康寿命、自由度、寛容さ、政府の腐敗度から算出されている。
* 以下の二つのデーターから、日本は経済力の割に薄幸の国かもしれない。
* 日本の自殺が教えてくれる事。
「図3. 日本の自殺率は、先進国38ヵ国中6位と高い」
日本の自殺率は非常に高い。
この図は2019年のデーターだが、図5の茶線、最も失業率が低い年に当たる。
つまり日本では最も自殺率が低いはずなのに、順位が高いのです。
自殺は、経済不況(失業)や精神文化、社会の影響を受けるが、日本は以前から高い状態が続いている。
* 各国の年齢別自殺者数の違いから、日本の特異な状況が見えて来る。
「図4. 日本の勤労世代は若年や老齢世代よりも自殺率が高く、他国と明確に異なる」
この図は2011年のデーターだが、図5の赤線、最も失業率が高い年に当たる。
これは、働き盛り世代に過度な精神的負荷がかかり、精神疾患(鬱等)を多発させ、やがて自殺へと至る事を示唆している。
以下に続くデーターはこれを補強している。
韓国で自殺が多いのは、高齢者です。
* 失業率の変化が教えてくれる事
「図5. 日本の男性失業率の変化」
この図で、2002年と2010年に失業率が前後に比べ約3%増えたが、図1の満足度も前後に比べ15%と大きく低下している。
欧米の失業率は4~12%と日本の2倍で推移しているが、図2で欧米の幸福度は日本より高い。
つまり日本では、図1が示すように不景気になり失業が増える事は「働く人」にとって大きな問題となっている。
おそらく、これは失業が長期にわたる事と、前職と同水準の再就職の困難さが家族を含め苦しめるのだろう。
* 日本では、男性の自殺が失業と関係している。
「図6. 失業率が男性の自殺率に強く影響している」
別のデーターから日本女性の自殺率は失業率とあまり関係が無い。
別のデーターからスウェーデンやイタリア等では、失業率と自殺率には相関が無い。
つまり日本の男性だけが失業や転職で過度な負担になる労働環境や社会構造になっている。
* 各国の失業率と自殺率から見えて来るもの。
「図7. 日本の低失業率と高自殺率が他国と比べ際立っている」
この図は2010年のデーター。
赤線は、図6の失業率と自殺率の推移を重ねて表示している。
赤線のように右上がりの直線は、失業率と自殺に強い相関があることを表しているが、この図だけでは他の国については不明です。
相関がなければ、失業率が増減しても自殺率は横の直線になる。
* 日本人は本当に失業に対して不安を感じているのだろうか。
「図8. 勤労世代ほど、失業に強く不安を感じている」
日本の勤労世代は異常なほど失業に不安を感じているが、なぜだろうか?
失業により、失業期間中の収入減、再就職の困難さ、たとえ再就職しても待遇確保の困難さが付き纏う。
日本の男性に失業による自殺が多い事を考えると、日本の雇用環境が他国に比べ劣っている事が示唆される。
* 失業(転職)を不安視する理由があります。
「図9. 日本は、他国と比べて転職後の賃金アップのチャンスが少ない」
これが、日本人が失業に対して強い不安を抱いている理由の一つでしょう。
* 日本人にうつ病は多いのだろうか。
「図10. 日本人のうつ病は年々増加し、男性は働き盛りでもっとも増える」
他の情報により、日本の精神疾患が他国より多いことが判明している。
また働き盛りの男性ほど、うつ病(精神疾患)が多い事は、男性の自殺率の多さの理由だろう。
女性は年齢と共に増加し、ほとんど減る事が無い。
* 日本では、仕事にストレスを感じる程度は他国と比べてどうだろうか?
「図11. 仕事にストレスを感じている日本人は31ヵ国中、男性2位、女性4位です」
つまり職場・仕事がうつ病を増加させている元凶であり、これが自殺を多発させ、幸福度や満足度の低下を招いていると言える。
上記11個のデーターから、日本人は先進国中もっとも薄幸と言える。
・「働く人」、特に男性は、他国より群を抜いて強いストレスや失業の不安を感じ、自殺することが多い。
・ 国連の幸福度調査において、日本は長年、先進国水準に入る事が出来ない。
・ ここ30年ほど、日本人の満足度は上がらず、精神疾患は上昇傾向にある。
* 問題提起
なぜ日本は失業率が低いのに、失業の増加に連れて自殺が増えるのだろうか?
これは日本特有の現象と言って良い。
様々な要因があるだろうが、おそらく最も災いしているのは、雇用形態でしょう。
これは、日本が企業内組合、御用組合が主であり、職業別組合が脆弱で、さらに年功序列が崩れている上に、首切りが容易になった事が大きい。
さらに現在、産業構造の変化が起きつつあるが、上記の理由で、日本ではこの変化に対応して「働く人」の転職がスムーズに出来ない。
これは、多くの場合、失業・転職が生活の低下を招くことになるからです。
こうして「働く人」が苦しむことになる。
「働く人」を簡単に首にする事で、産業構造の変化に合わせるべきだと上流国民は言うが、益々「働く人」が悲惨な状況に陥ることになる。
転職を促すのであれば、これに対応した雇用形態、労働組合、転職援助等が必須です。
この点でも北欧では進んでいるからこそ、幸福度とGDPが高いのです。
次回に続きます。
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