アクアコンパス3 続編

アクアコンパス3が容量一杯になったので、こちらで続きを開始します。

働くとは、何か 18

2025-02-25 08:31:10 | 社会

 

これまで16話と17話で、日本の「働く人」の惨状をデーターを使い、海外と比べました。

今回は、経済的な面から、惨状を読み解きます。

これから、日本が如何に貧しくなっているかを確認します。

 

 

* 所得は伸びているのか?

 

「図1. ここ30年間、所得は横這いです」

 

これは二人以上の勤労世帯のデーターです。

実収入は若干増えているのですが、税金と公的保険料等(緑棒)が増えた事で、可処分所得(使える金)がまったく増えていないのです。

30年間にわたる実収入の落ち込みは、私達に何をもたらしたのか?

 

 

* 先ず、なぜ日本経済は我々の収入を増やさなくなってしまったかを簡単に見ておきます。

 

 

「図2. 一人当たりGDPの日本の順位(黒線)、は2000年から低下し続け、現在、世界の26位まで落ちた」

 

人々は、この間の順位低下、更なる没落を予想し、自信を無くしてしまっているのだろうか?

 

ただ単に、他の先進国が次々と日本を抜き去るだけで、日本の成長が鈍化しているとは言え、まだ豊かなはずだが。

 

面白いことに、順位が落ちた時期「赤」は人気の首相が活躍していた時期と重なる。

2000年~2007年は小泉氏と安倍氏の政権、2012~2017年はまた安倍政権でした。

2012年以降は、安倍政権の大規模金融緩和の結果として、為替が80から160円/$の円安となり、今まさに生活を直撃している。

順位低下に連れて、海外と比較して私達の収入や資産が目減りし、特に最近は海外の品物を買い難くなっている。

私にとって腹立たしいのは。ここ20年の間に、同じ内容の海外旅行費が2倍になった事です。

 

順位上昇期「茶⇒」は、80年代後半から起きたバブル景気が主因でしたが、91~93年にバブルが崩壊し、その後の救済処理が災いして、日本はいまだに衰退し続けている。

 

不思議な一致なのですが、順位が頂点になる直前の1987年は、行革を謳う国鉄民営化(JR誕生)の年で、これにより巨大労組・労働者政党(社会党)が崩壊した。

その後、日本の順位は横這いから衰退へと向かい、何かが瓦解し始めた事を暗示している。

言い換えれば、繰り替えされた行革は、日本を奈落の底に突き落としたのではないか?

切り捨て縮小型の行革(構造改革)は経済をダメにすると警告を発していた学者もいた。注1

ちなみに順位が反転上昇している2009~2012年は民主党政権でした。

 

 

* 所得が減っていく中で、何が起きているのだろうか?

 

 

「図3. 明確に格差が拡大している」

 

ジニ係数は、数字が大きくなるほど格差が大きくなり、0.5以上は深刻な状況と言われている。

格差拡大が始まる80年前半は、中曽根政権(82~87年)と重なるが、これは英米と軌を一にしていた。

この連載を見て頂いていると分かると思うのですが、日本はずーっと「働く人」に非情な国であり、さらに80年代から追い打ちが掛かっているのです。注2

 

 

* 日本の所得格差は、海外に比べて多いのか少ないのか?

 

 

「図4. 格差はアングロサクソンの米英とイタリアよりましだが悪い」

 

これは当然です、非正規が多く、正規・非正規や男女、企業規模別で賃金差が多い国なのですから。

 

ここで一つ質問です。

「今後、経済格差は縮小すると思いますか?」

イエス、ノー、横這い?

 

答えは、益々拡大します。

説明はいずれしますが、最大の理由は米国で共和党のトランプ政権が誕生した事です。

日本政府は、余程の事が無い限り、現状の政策を踏襲し、米国に従うでしょう。

 

 

* 金持ちと貧乏人の行く末は?

 

「図5. 日本の金持ちと貧乏人は共に、所得を減らしている」

 

既に見たように所得格差は拡大しているが、金持ちと貧乏人が共に貧しくなっている。

つまり、貧しい人はより貧しくなっていることになる。

しかし、所得上位数%については米国と同様に、より豊かになっているでしょう。

 

 

* 所得が減る中で、国民は消費を伸ばしているのだろうか?

 

「図6. 実に悲しいのですが、国民は消費を抑え続けている」

 

本来は、貧しい人ほど最低限の消費が必要なので、消費は減らせないはずなのですが、日本では異常な事が起きています。

2回消費税が上がっているのですが、その上昇分3+2=5%に対して、その2倍に相当する10%も、国民は消費を押さえる事になった。

これが安倍政権下でのデフレが止まない理由です。注3

 

 

* なぜ国民はここまで消費を減らしているのだろうか?

 

 

 

「図7. 国民は、消費を節約し、せっせと黒字(預金等)を増やしていた」

 

グラフでは収入は増えているが、インフレで相殺されているので、実際は実収入は増えていない。

その中で、増える非消費支出(橙色:税金・保険料)を支払い、将来の不安から黒字(緑、預金等)へと廻し、消費を押さえているのです。

これがデフレの正体です。

この黒字の内訳のほとんどは、元金保証の貯金で、証券投資は非常に少ない。注4

したがって、多くの国民は、日本の現実と将来を悲観しており、消費が増えず、結果的、経済が上向かないとも言えます。

 

しかし、現状で国民に楽観的になるべしと言うのは、酷です。

政府の「働く人」に対する追い打ちをかける過酷な仕打ち、産業界の癒着と腐敗構造が続く限り、国民が防御体制を獲るのは自然です。

一時、アベノミクスで言われた「インフレ期待が経済を好転させる」とした理論が如何に馬鹿げているか、もう理解しても良いのではないだろうか?(稀に起こる事もある)

きっと草葉の陰で、ほくそ笑んでいるだろう、「産業界・財界は円安で大儲けし、予定通り」だと。

 

 

* 格差が収まって来ているのなら良いではないか?

 

「図8. 2012年、相対貧困率は上昇していおり、米国に次いで高い」注5

 

これを見て、米国がまだ上にいるので少しホットしたでしょうか。

しかし、相対貧困率が上昇傾向にある事に注意して下さい。

このまま行けば、米国と同じような社会の分断が起きるかもしれません。

 

 

「図9. 2021年、現在の日本の相対貧困率は、米国を抜き、発展途上国に近づいている」

 

 

「図10. 2012年以降、相対的貧困率は低下しているが、子供9人一人が貧困」

 

別のデーターから日本の貧困率は酷い状態にあることが分かります。

2018年、日本のひとり親の50%が貧困状態にあります。

2021年、日本の17歳以下の貧困率は14%であり、G7で真中でした。

 

 

* 何が分かったのか

 

・ ここ30年間、所得が伸びず、税金・保険料が増える中で、国民は将来を不安視し、貯蓄に益々精を出すようになった。

 

・ 数々の切り捨ての行革、バブル崩壊と処理ミス、増税と無駄遣い、消費控え、円安が経済を衰退させている。

 

・経済格差は、今、落ち着いているとは言え、高止まりし、貧困が増大している。

 

・トランプの誕生で、経済格差はさらに拡大期に入るだろう。

 

実に、悲しい日本の姿です。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

注1. 「誤解だらけの構造改革」小野善康著、日本経済新聞、2001年刊。

 

注2. 80年代から、欧米中心にサッチャー、レーガンらの新自由主義経済が吹き荒れ、今に続いており、トランプ再選で、さらに新自由主義の完成に向けて、金持ち優先、それ公務員や「働く人」の切り捨てが、さらに酷くなるでしょう。

 

注3. 消費増税は消費を減らし、増税はその額の何倍かになってGDPを数年掛けて減らす事になり、これを乗数効果と言います。ここでは簡易に乗数を求めます。グラフから5%の合計消費増税により、数年後には消費は10%減になったので、乗数は2倍(マイナス)になっている。実は、消費増税分を政府が効果的使えば、そのプラスの乗数効果は先程のマイナスより大きいので、本来ならGDPは上昇に転じるのですが、長年そのようになっていない。残念ながら腐敗し不透明な政府では、どこかに消えて行ったか、仲間の懐にでも入ったのでしょう。

 

注4. ここ数年、NISAが普及し始めていますので、株式投資が増えるでしょうが、2025年現在、まだ僅かです。将来、増えて来ると、資産格差拡大と金融危機不安が増すでしょう。

 

注5. 相対的貧困率とは、国や地域における経済格差を測る指標で、所得が集団の中央値の半分に満たない人の割合を指します。

 

 


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