ラブ★コン+

裸足で帰るっちゅうんは思ったより大変やった
電車の中でみんなにジロジロ変な目で見られたし

帰ったら帰ったで…
おかんに開口一番靴の事を問い詰められた。

『あっちゃん　あんた靴どうしたん!』
『靴…あーぁやった。』

説明するんめんどかったし…
説明したところで靴は返ってけーへんねんし

あぁ…もぅええやんけ

『やったって…誰にあげたん　あんな汚い靴』
『知らん…』

『知らんって…なぁ　あっちゃん!!』

おかんからのうっとーしい攻撃から逃れ
部屋のベットにダイブした。

ポケットから携帯が落ちる。
メールを知らせるランプがついてたけど

待ち人からやなかった…

もしかしたら『敦士くんやっぱりあなたが…。』とか
『今からでも付き合ってくれる』とか
『お誕生日一緒にお祝いさせて…』なんて

神崎が…

ってオレ未練がましいやんけ…

もう神崎とは終わった。
何度も納得したハズやんけ…

納得…

納得した。ハズ…。

そうオレは

フラれて一緒に行くはずやった海坊主のライブも断られた
誕生日やから最後に…なんて女々しい事いえんかったし

なにより神崎は全く海坊主に興味なかった
ちゅうよりどっちかゆうと苦手やってんて…

オレの予定では…

今日は神崎と海坊主ライブの感想を言い合って
誕生日おめでとう…ってプレゼントの一つでも
貰えるはずやってん…はず…。

中尾からの励ましの言葉に励まされんと
ただ『オレなんて…』と凹んで不覚にも泣いてしもた。

その様子を見られてたってハズいけど…

あっ…
靴あげたんは　あの背の高い女の子

あの子って…なんかオモロかったなぁ(笑)
見ず知らずのオレに『どうしたん?』なんて声かけてきよってん

普通知らんオトコが凹んで泣いてても知らんふりするんが
人情ってもんやのになぁ…
かっこ悪いっちゅうねん。

ライブ中…
壁にもたれてぼんやり海坊主見とったら
目の前に白い手がにゅーっとあらわれた。

その手がなんか助け求めとるように見えたから引っ張った

『ありがとう』って感謝されたけど
別にそんなんどうでもよかった。

よかったんや…。

どーでも…。


せやのに　その子は　でっかい背とおんなしぐらい大きい声で
『何があったか知らんけど元気出して』って叫びよってん

只でさえ大きい声が
丁度音楽が途切れた瞬間やったから　会場のみんながオレらに注目

ついでに海坊主も注目してくれた

『この子今日誕生日やねんっ』ってどこで仕入れたんや?
彼女の言葉に会場は♪ハッピーバースディの大合唱

オレにとって忘れられん海坊主との思い出が出来た事は感謝や
彼女も海坊主大好きらしい

海坊主好きな奴に悪い奴はおらんってほんまやな

ライブも終わって

ふと…
彼女の視線が泳いだ。なんか探しとるんか?
『どうしたん?』って聞いても『べつに』ってゆうてたし
友達でもなんでもないしオレも早く帰りたかったし

出口へと進んだ

その時目の前の二人組の男が手に片足だけの女もんのサンダルを手にして
ゴミ箱へとほおりなげてた。

女もん…。
会場におった女って彼女ぐらいしか…

あっ…　もしかして…

ゴミ箱からサンダルを手にして会場へと戻った。


『どーしよ…』

彼女は床に座り込んでた。足元見たらやっぱ片方のサンダルがない

『なぁ　もしかしてこれ探してんの?』

オレが声をかけたら涙目でこっちを見つめてきた。

『あーこれ…ってボロボロのベトベト　はかれへん。どうしよー』

せやなこのサンダル
みんなに踏まれてボロボロやし上からジュースやら酒がかかってて
ベトベトで臭い。こんなん履いて帰られん…。

『オレの靴でよかったら履いて帰りぃや』
『へっ?』

『裸足で帰るよりええんちゃうか?』
『けど　あたしが履いたら自分は?』

『あーオレはええねん。裸足で帰りたいそんな気分やから(笑)』

靴は捨ててくれたらええからって
彼女にゆうて　今度こそ帰ろうと背中向けたら

『ま…待って　えっとちょい待ってな…えっと…』

スカートのポケットを思いっきし探って
そこから何かを取り出して手渡してきた。

これって…あめちゃん?

いちごみるく　
(丸くってちっこくってさんかくなアレな)

『たんじょうび　おめでと!』

知らん子やったけど…
おめでとうって言われて素直に嬉しかった。

神崎からのプレゼントも言葉もなくて凹んでたオレやのに
あめちゃんひとつ誕生日プレゼントとして貰った事がめっさ嬉しかった。

だから裸足で帰ることが苦にもならんかってん…。
彼女から貰った　いちごみるくをポケットから取り出し机の上に置いた。

『けどポケット探って出てきたんが
　　あめちゃんって大阪のおかんか(笑)あはははは…』


★★★

誕生日から数日後

今日は　舞戸学園の入学式。


『あっ…』

ふと机の上を見るとあの時のいちごみるくが乗っていた
封を開けて口に入れると

あまーい苺の匂いが広がった。
ガリガリと噛み砕くと元気がみなぎってきた気がする

せやな

オレも高校生になるんやから
いつまでもフラれた事でうじうじ凹んだりしてられへんし
バスケ部に入って学園生活エンジョイしたる(笑)

凹んでたら中尾とのぶちゃんにいぢられてまうし
楽しい事　あたしらしい出会い

オレの未来は未知数に広がってんねん

『よっしゃっ!!大谷敦士　今日からがんばるでーーーー!!』



end