『で…コレはなんや?』
『カップ…ケーキ みたいな…』
昼休みの教室であたしから貰ったもんを指さす大谷。
その物体は 真っ黒く焦げていて…
お世辞にも<カップケーキ>と呼べるもんではなかった。
今日の調理実習はカップケーキ
クラスの女の子は好きな男の子の為に
一生懸命 そりゃーかーいらしいもんを作ってた。
のぶちゃんも千春ちゃんも愛する彼氏のため…
そしてあたしも…
のはずやったんやけど
何の因果かあたしのんだけこのようなもんになってしもた。
ほんまはあげる気なかったけど
大谷が『どんなんでもええからくれ』ってゆうんやもん。
で…
現在に至る。
『あー ちびーっと失敗して…』
あかん。情けなくて涙が滲んできた。
簡単なケーキも作れん女なんて…
俯いて唸るしかできひん。
『ま…食えんことないし(笑)』
『へっ?』
大谷はあたしの焦げたカップケーキを頬張ってた。
『あかんってムリして食べんくてもええよ 焦げてんのに』
慌てて取り上げようとしたけど
大谷は おっきな口あけて最後の一口をぱくりっと食べた。
『ごちそーさんっ』
『に 苦かったんちゃうん?』
『見た目はアレやけど美味かったし 小泉みたいやしなっ(笑)』
そんな事を言いながら にぃって笑った大谷
『もぉ…』
あたしの胸がきゅんっと鳴った。
end