『はぁ…しんど』
天井を見上げたままため息ひとつ。
突然のゲリラ雷雨に打たれ帰ってきて
すぐ着替えんかったんが悪かったんか ぶったおれて
熱に侵される事3日目
♪ピピッピー
デジタルの体温計は飽きもせんと３７．５という数字を表示しよる。
数時間振りにベッドから起きて冷蔵庫からドリンク剤を取り出し
すきっ腹へそれを一気に流し込んだ。
いま 何時なんやろ…
ぼんやりとする頭 きっと時間感覚も麻痺しとる。
寝てばかりのせいで 散らかり放題の部屋が空しいって…
あたり前…やな。(笑)
『大谷ぃー生きとるかぁーー。』
彬が縁起でもないこと言いながら部屋を尋ねてきた。
『おぅ…なんとか…』
『お前 一旦風邪ひいたら長いしなぁ…あっリサちゃんに連絡したん？』
『してへん…。』
『してへんの？ぶっ倒れとるから看病してくれーリサって?』
『…あかん。』
『大谷？』
『熱に浮かされて何するかわからんし…』
高校の時無意識で ちゅーするぐらいのオレや…
ひとり暮らしの部屋にしかも 今度はなんかしようと思う彼女来たら…
前例があるだけ自信がない。
かわいそうな大谷におかゆ作っていったると彬はゆうてくれた。
寂しかったら電話してこいよーって アホか(笑)
『大谷。やっぱリサちゃんに連絡したほうが…』
『ん。熱下がったらな』
オレの代わりにコンビニバイトに入るという彬は
お大事にって言葉を残して帰って行った。
なんか…
ひとり世界から取り残されたようで…寂…ってあかんあかん。
オレ 風邪で気ぃ弱くなってる…
再びベッドに横たわって 枕元に置いとる携帯電話を握った。
やっぱしんどい…こんな時はリサにおって欲しい。
ここ3日。
リサが忙しいという事で逢わずにすんでた。
メールの交換だけを2回。
咳は止まらんし、鼻声やし酷い状態で電話をして
風邪ひいたってリサに変に心配させたない…って今まで我慢してきた。
我慢も限界。やっば声聞きたい。
リサの番号をコールしようとした時…
♪マジ ハンパない電話だぜっ…
反対に電話が かかってきた。
『もし…『もしもしぃー大谷ぃ 生きてるぅーーーーーー!!!』』
何日か振りに聞くリサの声…
それが生きてるとかなんでやねん(笑)
『縁起悪い』って言おうとした時に込み上げてくる咳
『えっとな…さっき彬君に聞いたで…大谷風邪なんやろ?』
『お…おぅ』
彬の奴。ほんまおせっかいしくさって…
『大丈夫?あした土曜日やし あたし看病に行くでっ』
『ええって…来んで…風邪伝染ってらあかんし…』
来んでええ…。とか言いつつも
本音は、リサに看病なんかされてみたかったりもする。
『気にせんといてっ あたし行く!!任せなさいっ』
ほな…頼むわ。と言いそうになって心ん中のオレがストップかけた。
大谷 よぉー考えてみぃ。3日間風呂に入ってない 髪はボサボサ
部屋は(彬が片づけたとはいえ)散らかり放題。
こんな所に彼女呼ぶんなしやろ?
それに…
熱に浮かされて何かしたらあかんやろ?
言われてることはもっともな事。
後ろ髪惹かれながらも
『あかんって…気持だけありがたくもろとくわ。』と誤魔化した。
それから少しだけ話して…
リサの声聞いたら ちびっと気分が楽になった気がしてた。
彬曰く『大谷はリサちゃんにメロメロやからな』らしい。
『大谷。今日はちゃんと暖かくして寝てな。』
『おぅ…ごめんな せっかく…』
『ええよ。長々ごめんな おやすみ。』
『おやすみ。』
終始心配声のリサとの会話が終えて窓の外を眺めたら
真ん丸な月が浮かんでた。
『ちびっと…もったいなかったなぁ。』
リサの申し出を断ってしまった臆病な自分を布団に押し込んだ。
・・・・・
『ん… 朝…』
昨日は そのまま眠っていたらしく
カーテンの隙間からのぞく眩しい太陽の光で目を覚ました。
昨日より少し気分はマシなものの
まだ熱っぽい。
開けっ放しにしてあった玄関のドアが開いた。
どうせ彬の奴がバイトあけに寄ってくれたんやろう。
起き抜けの状態で玄関に来たオレの寝ぼけた頭は
訪問者を見て 一気に覚めた。
『おはよー やっぱ心配やし来てみた♪』
そこには 申し訳なさそうに立つリサ
『あ゛ーやっぱ迷惑やったら あたし帰るけど…』
なんて 後退りするリサを
『待てって…』
オレは引き留めた
リサが来てくれて嬉しい反面
ボロホケロな自分を見せてしまった恥ずかしさに今なら死ねるなんて思った。
『大谷?』
『部屋散らかっとるし その…あーそれで良かったら…』
『そんなんより大谷が心配やの。』
end
<おまけ>
『大谷 熱は?』
『なんとか昨日よりまし…』
『今日はあたしが朝まで看病するから』
『へっ?』
『おかんもそうしぃって…』
あかん オレめっさ熱あがりそうや
