バレンタインDAY

『あの…大谷先生』


同僚の山崎先生が　オレに紙袋を差し出してきて
『よかったら貰ってください』 と押し付けてきた

今日なんか特別な日やったっけ？
頭を抱えて考えこんどると

山崎先生がおっきな声で笑った。

『もー　ほらっ今日はバレンタインやないですか
　　 だからあれですよ アレ…』

という事は　これってチョコレート

『ええんですか?オレにこんなん…』
『ええですっ むしろ…『ほな　もうとくわっありがとうっ』』

どうせ義理やろし…

せっかくくれるとゆうたもん『いりません　ボクには決めた人が』なんて
押し返すほうが自意識過剰(マイティと読む)やんけっ

とにかく

袋の大きさから見て義理チョコやと確信したオレはありがたく頂く事にした

それだけの話

義理

義理と人情のチョコレート
山崎先生は他の先生やらにもあげたやろうし

それだけの話

帰ったら小泉と半分こでもして食おか(笑)

★★★



『ただいま 』
『お帰りぃ　おつかれー』

独り暮らしのアパートが　今日賑やかなんは小泉がおるから
今日中にどうしても渡したいもんがあるということで仕事帰りに来てくれた

『あぁ　ほんまつかれたっ　どっこいしょっと…』

おっさん臭く炬燵に足を突っ込んだら

『そんなお疲れな大谷には　コレっ』

小泉はオレに正方形のでっかい箱を差し出した
その箱からは甘い匂いがする

『? 』
『あんな　あたし今日チョコケーキ焼いてん』

『チョコケーキ?』

『ほらバレンタインやんかぁ…
その大谷うっかり(笑)チョコケーキすきやし
だから千春ちゃんらといっしょに… 』

小泉は真っ赤な顔して『美味しないかもしれんけど…』と呟いた

不器用な小泉が焼いたチョコケーキか(笑)

『ありがとう
あっ箱開けたらチビとかうんこマーク入って 』

『入ってへんわ！
あれはたまたま遥が！ 』

初めて貰ったチョコを思い出して思わず返した

『もぉ変な事思い出すんやから』
『そりゃ思い出すわ。アレは衝撃的やったぞ
チョコ投げられてデコに命中するわ開けたら』

『だからそれはこっちへ置いて　忘れててよ』
『いや　あのインパクトは凄かった』

『もうええやんっ　しつこい男は嫌われんで』

なんていいながら小泉はぷいっと横を向いた
そんなしぐさが可愛いなんて思うけど絶対ゆうたらん

『…ごめん　ほんまありがとうめっさ嬉しい 』
『わ…わかったらええねんっ』

先ご飯食べるそれともチョコ食べる?と聞いてきた小泉に
ちびーっといぢわるな言葉を投げてみた。

『なあ小泉　ところでこれは本命『本命や　開けたらわかる』 』

さっさと開けろと促され箱を開けると
ハート柄のチョコケーキのテッペンになにやら文字が書いてあるんが見えた

チビやうんこマークではなく
本命らしく

かわいく すきやんとか？ 書いとったりして…



ぁー


書いてある文字を見て溜息ひとつ

『小泉…　残念や　これ本命ちゃうやろ』
『何が残念なん　こんなにはっきりと書いてあるのに…』

『ほな　これなんて書いてあんねん』
『書いてって大谷先生のくせにこんな簡単なもん読めんの？』


いや読めるねん
これはオレのクラスの生徒でも読めると思う


内容としては　まあある意味間違えやないちゅうか

『大谷っ』
『んー』

オレが口ごもっとると

『最近の先生はー しゃないあたしが読んだる これは…』

『これは?なんて読むんや』

『これは…だい…えー　い…?』

口に出しかけた小泉の顔から冷汗が引き出とる

『ごめんっ　大谷　あんな…』

小泉が書きたかったんは

大好きという言葉

けど実際は


犬好き


『おしいおしいなあ 　なんかが一個多い(笑) 』
『うー　けど本命やもんっ』


実際オレ犬使い大谷やし(笑)


『わかっとるって　ありがとう(ちゅっ…)』


そんな今年のバンタイン。





<おまけ>

『このチョコケーキうまーーーー』

『へへんっ♪あたしもやればできんねん』

『あっせや学校でチョコもろたから半分こしようぜ』

『えっ? う…うん』