それは年末のある日の事。
『ハーイ お疲れ様 オールアップです。』
カメラマンの声が響いてスタジオの片づけが始まった。
リサはモデルさんに用意した衣装の後片付けをしようとしてた時
スタッフの一人江角から声をかけられた。
『おつかれさま リサちゃん。』
『あっおつかれさまです。』
『今からモデルちゃんたちと忘年会兼打ち上げ行くんだけど…リサちゃんも一緒にどう?』
『あたしですか?』
『うん。今年もこれで終わりなんだし…ぱぁーっと行こう。』
たしかに このお仕事終ったら今年は終わり。
相沢社長も直帰してくれていいってゆってた。
けど…今日は…あかんねん。
リサは両手を合わせてごめんなさいのポーズをした。
『悪いんですけど…』
『えーーーー来ないの?なんか用事あるの?』
『用事というか まぁそのような。』
歯切れの悪いリサに相手はぽんっと手を叩いた。
『あっ もしかしてリサちゃん恋人とデートなの?』
『えっと…恋人とは違うくて…』
『そしたら片思いの相手とデート』
『片思い…とかでもなくて』
『もしかして寂しい女の子の女子会?それならオレもそっちに行くよ』
女の子が用事あるってゆうたらなんでそっちの方向しか考えられんのやろ
江角とリサは年に1度か2度会うだけやから
近況とか知らんのは当然。
実は この夏リサは小泉から大谷リサに変わっていた。
江角に 結婚しましたなんて報告もしてなかった。
『えっと…そうやなくて…つまり…』
『つまり? あ゛ーーーーご家族 お母様が病気とか?』
『…はぁ』
リサは頭を抱え黙りこんだ。
ご家族という発想は当たってるけれど…なんで病気とかなん?
ここはハッキリ言いたいけど…
その単語を口にするのはまだ恥ずかしくてしかたない。
『あーリサちゃんオレやっぱまずいこと聞いたよね?』
『別に そーではなくて…』
リサは左手に拳を作って一気にまくし立てた。
『せやから 今日は… お…夫が待ってますから…』
頬も耳も顏も全部真っ赤なリサの声がスタジオに響いた。
それに気が付いた前野が2人の所にやってきた。
『リサちゃん何大きな声だしてんの?』
『あ 前野さん。』
『えーーーーー夫って だんなの事?リサちゃん結婚してたの?』
『…はい』
『いつ?』
『えっと8月に…』
『そうだよ リサちゃんは新婚さんいらっしゃーい♪なんだから
ちょっかい出すなよ。こいつの旦那怖いんだぞー(笑)』
『ちょ…前野さん』
前野のからかい言葉にリサが視線をそらすと江角はニヤニヤと笑った。
『そっかーそりゃ ダメだな、そっかリサちゃんも人妻かぁ…』
ゲラゲラと笑いながら江角は早速別の女の子に声をかけだした。
その姿を複雑な気持で見送っていると背後で震えながら笑い声をこらえてる気配を感じた。
『リサちゃん…お…夫って…一言口にするだけに何分かかった?』
『…』
『かわいいねぇー。新妻…ぷっ…あははははははははは』
前野は思いっきり笑って しまいには壁に頭をつけ泣き笑いを始めた。
end