政府はマイナンバーカードの普及に躍起である。肝いりのマイナポイントは、チャージ額はクリアしたが、コロナ禍もあって、利用額はクリアできていない。期限が延長になってホッとしている。3月から、マイナンバーカードが健康保険証として使えるようになったと広報されている。現状、マイナンバーカードには、問題点がいくつかあって、また、問題になる点を追加するのかと思う。
マイナンバーカードには、2種類の電子証明書が格納されている(できる)。分かりにくい政府の呼称をそのまま使うと「利用者証明用電子証明書」と「署名用電子証明書」である。問題点は、後者の電子証明書である。この中には、個人を識別する4情報(氏名、住所、生年月日、性別)が含まれている。問題点の一つは、住所が含まれていることに起因する。このため、引越しをして住所が変わると、マイナンバーカード内の電子証明書を書き換えなければならないという手間が生じる(※)。この電子証明書の書き換え装置はどこにでもあるというものではなく、以前、マイナンバーカードの前身である住基カードの頃、たまたま、支所で住所の変更をしたところ、電子証明書の書き換えは本庁でないとできないと言われ、わざわざ本庁までいって電子証明書を書き換えてもらったことがある。今でも、余分な手続きが必要で、窓口が違ったりして、不便極まりない。そもそも、署名用電子証明書の仕組みとして、「住所」は必須ではない。署名した文書を解読した時に、「氏名」があれば十分である。
※「利用者証明用電子証明書」には、住所が含まれていないので、住所変更してもそのまま使える。一方、マイナンバーカードには、券面記載事項も格納されているので、住所変更時には、この書き換えも必要となる。偽造防止に必要ということになっているが、これも使い道が殆どがないので止めて欲しい。今のマイナンバーカードの使い方はスマホで写真を撮って送るというのが一般的なので、券面記載の変更で十分である。
一方、この署名用電子証明書の使い道は殆どないのが現状である。以前は、e-taxによる確定申告において、確定申告書の送信時に、この署名用電子証明書による署名を要求されたが、最近は、IDとパスワードに切り替えられ、マイナンバーカード自体が必要ではなくなった(IDとパスワード発行時には必要)。さらに指摘すると、なんらかの手続きにおいて、電子証明を求められ、この署名用電子証明書を利用すると、個人を識別する4情報(氏名、住所、生年月日、性別)がダダ漏れになる。その様子は、ここに紹介されている。したがって、余程信頼がおける送付先に書類を送る時にしか、この署名用電子証明書は利用できないのである(使ってはいけないといっても良い)。前記の確定申告書の送付時には、そもそも送付する確定申告書に住所や生年月日が記載されているので「署名用電子証明書」内の情報自体は不要である。
結論として、「署名用電子証明書」から、「住所」は除いて欲しいものである(生年月日、性別も)。こんな基本的な問題を放置している状況で、マイナンバーカードが健康保険証として使えるようになった場合に、デリケートな健康情報が、ダダ洩れにならなければよいが。