シベコンチームの皆さんこんにちは。シベコン広報部長のクレタです。
今回も前回に引き続き、2011年3月5日にオーチャードホールで聴いた、
ヴィルデ・フラングのシベコンについて書こうと思います。
前回のテキストは こちら
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/5a/c56cc2d78510a4898cf5dabac22faaae.jpg)
ところで、この演奏会、皆さんはあんなに多くのお客さんが集まると予想していましたか?私はまず当日の聴衆の数に驚いてしまいました。
実を言うと、私はチケットを購入した時点ではヴィルデに対する関心はまだ薄く、ただ、彼女のデビュー盤がシベリウスとプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲で、それが北欧音楽ファンの間で静かに話題になっているのは知っていて、デビュー盤でシベコンを選ぶなんて、日本のヴァイオリニストでは考えられないことなので、よほどこの曲が得意なのか、それとも好きなのか、と思っていました。1月には国内盤がリリースされ、私もアマゾンでそれをチェックしていましたが、私のほしい物リストには、既に前年11月にリリースされたフランク・ペーター・ツィンマーマンのシベコンが登録されていて、自分がまず買うべきはそっちだと思い、購入を見送っていました。
ところが、私のそんなゆるいマークとは裏腹に、当日のオーチャードホールは超満員。
立ち見のお客さんまでいるではありませんか。私はN響オーチャード定期を聴くのは2回目ですが、4階バルコニーの立ち見席に人がいるのを見たのは初めてです。
へぇ~、ヴィルデって、こんなに注目されてるんだ。
え、
ひょっとして、広報部長、乗り遅れてる?
会場のフィーバーぶりを前に、不意打ちを食らった格好の私は、とりあえず手元のプログラムで彼女の情報を補足することに。
プログラムによると、ヴィルデ・フラングは1986年ノルウェー生まれの24歳。ということは昨年度シベコン・チャンピオン( ←個人的見解 )の神尾真由子さんと同い年です。
出身地がノルウェーとあり、なるほど、と納得。それなら彼女がデビュー盤でシベコンを弾くのも頷けます。ノルウェーは国境の南をフィンランドと接する隣国で、民族と言語は異なるものの、両国はともに北欧諸国に含まれ、特有の自然や文化の共通点は少なくありません。たとえば白夜とか、イケアとか。私は北欧に行ったことはありませんが、北欧で暮らす人々には互いに共有するマインドがあるように思います。そしてシベリウスの音楽も、そのマインドとどこかで結びついている気がします。身近な例に置き換えると、日本人は「ハルキ・ムラカミ」を読むにあたり、作者と母国語を共有していますが、それと同様に、北欧人はシベリウスの音楽を自分たちの文化として共有し、東洋人よりも近い感覚で演奏したり鑑賞したりしているのではないか、私はそのように想像します。そう考えると、これからヴィルデが演奏するのは本場仕込みのシベコンで、この演奏会はそれを聴く格好の機会ということになります。北欧音楽ファンならこれを聴き逃す手はありません。
プログラムには、さらにもうひとつ、彼女が注目される理由が載っていました。一般のクラシックファンにとって、目玉はこちらのほうかもしれません。ヴィルデは室内楽のキャリアも豊富で、多くの演奏家と共演しています。中でも特筆すべきはアンネ=ゾフィー・ムターとのデュオで、その演奏活動は2007年から現在まで続いています。ふたりのリサイタルは世界各地で好評を博していて、ヴィルデの公式HPの今後のスケジュールによると、帰欧後はムターとドイツ各地をツアーで回る予定になっています(これは後で調べました)。「ムターの秘蔵っ子」 ・・・ これはN響がヴィルデにつけたキャッチ・コピーですが
、ムターが信頼する若き実力者の真価を見極めよう、そんな思いでやって来たお客さんも多いはずです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/50/b25ffbc5359cbf871116d335a5ca1ce5.jpg)
というわけで、ふたつの意味で注目の演奏会。満員の会場はいつもの3割増し( 当方比 )の熱気に包まれて、なにか特別なことが起こりそうな予感がします。
シベコン広報部長こと、わたくしクレタ、これが普段の演奏会ならこの辺で精神を統一し、極寒の澄み切った空を悠然と滑空する鷲の如き境地に入っているところです。
しかし、一体どうしたことでしょう。
この日は開演のブザーが鳴り終わっても、なかなか心が一点に定まりません。
思った以上に聴きどころ満載のシベコンが、もうすぐ始まろうとしているのに、心は極寒の空を飛ぶ鷲どころか、春の陽気に誘われた蝶々のように、フワフワと落ち着きなく彷徨っているのです。 (つづく)
前へ 次へ
今回も前回に引き続き、2011年3月5日にオーチャードホールで聴いた、
ヴィルデ・フラングのシベコンについて書こうと思います。
前回のテキストは こちら
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/5a/c56cc2d78510a4898cf5dabac22faaae.jpg)
ところで、この演奏会、皆さんはあんなに多くのお客さんが集まると予想していましたか?私はまず当日の聴衆の数に驚いてしまいました。
実を言うと、私はチケットを購入した時点ではヴィルデに対する関心はまだ薄く、ただ、彼女のデビュー盤がシベリウスとプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲で、それが北欧音楽ファンの間で静かに話題になっているのは知っていて、デビュー盤でシベコンを選ぶなんて、日本のヴァイオリニストでは考えられないことなので、よほどこの曲が得意なのか、それとも好きなのか、と思っていました。1月には国内盤がリリースされ、私もアマゾンでそれをチェックしていましたが、私のほしい物リストには、既に前年11月にリリースされたフランク・ペーター・ツィンマーマンのシベコンが登録されていて、自分がまず買うべきはそっちだと思い、購入を見送っていました。
ところが、私のそんなゆるいマークとは裏腹に、当日のオーチャードホールは超満員。
立ち見のお客さんまでいるではありませんか。私はN響オーチャード定期を聴くのは2回目ですが、4階バルコニーの立ち見席に人がいるのを見たのは初めてです。
へぇ~、ヴィルデって、こんなに注目されてるんだ。
え、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyob_hat.gif)
会場のフィーバーぶりを前に、不意打ちを食らった格好の私は、とりあえず手元のプログラムで彼女の情報を補足することに。
プログラムによると、ヴィルデ・フラングは1986年ノルウェー生まれの24歳。ということは昨年度シベコン・チャンピオン( ←個人的見解 )の神尾真由子さんと同い年です。
出身地がノルウェーとあり、なるほど、と納得。それなら彼女がデビュー盤でシベコンを弾くのも頷けます。ノルウェーは国境の南をフィンランドと接する隣国で、民族と言語は異なるものの、両国はともに北欧諸国に含まれ、特有の自然や文化の共通点は少なくありません。たとえば白夜とか、イケアとか。私は北欧に行ったことはありませんが、北欧で暮らす人々には互いに共有するマインドがあるように思います。そしてシベリウスの音楽も、そのマインドとどこかで結びついている気がします。身近な例に置き換えると、日本人は「ハルキ・ムラカミ」を読むにあたり、作者と母国語を共有していますが、それと同様に、北欧人はシベリウスの音楽を自分たちの文化として共有し、東洋人よりも近い感覚で演奏したり鑑賞したりしているのではないか、私はそのように想像します。そう考えると、これからヴィルデが演奏するのは本場仕込みのシベコンで、この演奏会はそれを聴く格好の機会ということになります。北欧音楽ファンならこれを聴き逃す手はありません。
プログラムには、さらにもうひとつ、彼女が注目される理由が載っていました。一般のクラシックファンにとって、目玉はこちらのほうかもしれません。ヴィルデは室内楽のキャリアも豊富で、多くの演奏家と共演しています。中でも特筆すべきはアンネ=ゾフィー・ムターとのデュオで、その演奏活動は2007年から現在まで続いています。ふたりのリサイタルは世界各地で好評を博していて、ヴィルデの公式HPの今後のスケジュールによると、帰欧後はムターとドイツ各地をツアーで回る予定になっています(これは後で調べました)。「ムターの秘蔵っ子」 ・・・ これはN響がヴィルデにつけたキャッチ・コピーですが
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_en.gif)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/50/b25ffbc5359cbf871116d335a5ca1ce5.jpg)
というわけで、ふたつの意味で注目の演奏会。満員の会場はいつもの3割増し( 当方比 )の熱気に包まれて、なにか特別なことが起こりそうな予感がします。
シベコン広報部長こと、わたくしクレタ、これが普段の演奏会ならこの辺で精神を統一し、極寒の澄み切った空を悠然と滑空する鷲の如き境地に入っているところです。
しかし、一体どうしたことでしょう。
この日は開演のブザーが鳴り終わっても、なかなか心が一点に定まりません。
思った以上に聴きどころ満載のシベコンが、もうすぐ始まろうとしているのに、心は極寒の空を飛ぶ鷲どころか、春の陽気に誘われた蝶々のように、フワフワと落ち着きなく彷徨っているのです。 (つづく)
前へ 次へ