やまがた好日抄ーⅡ

低く暮らし、高く想ふ! 
山形の魅力を、日々の関心事を、気ままに…。

矜持

2022-03-03 | 文化的なもの
ロックやフォークを聴いてゐた小生が、ジャズに転向し、そしてクラシックを聴き始めた幾つかは、ブルノ・ワルターのブラームスの4番、イゴリ・マルケヴィッチのチャイコフスキーの6番、そして、ピエル・モントゥーのストラヴィンスキーの「春の祭典」でした。

その「春の祭典」の、初演時のニジンスキーの振り付けによる原典版ともいふべき演出が、いろいろな振り付けを見てもやはりピカイチでした。確か、映画「シャネル&ストラヴィンスキー」でも、小生愛するピエル・モントゥーが初演するシーンがあり、かなりリアルに映ってゐます。

その原典版の演奏を指揮してゐるのが、ロシア人のワレリー・ゲルギエフです。
OGPイメージ

Vaslav Nijinsky - Rite of Spring

Rite of spring premiere at the 1913 year in Paris. Scenery, costumes a...

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彼は、3月1日、ミュンヘン市長によりミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を解雇させられました。
おそらく、世界でもトップクラスの指揮者でせうし、小生はさして好きでもありませんが、名門ミュンヘン・フィルの首席指揮者でしたが解雇させられました。

ロシアのウクライナ侵攻に対して、はっきりと態度を示せといふ市側に曖昧な態度で応じ、かつ、プーチン体制を擁護するかのやうな発言があったらしいとのことー。

ドイツのなかでも特に独立精神が高いとされるミュンヘンの、そこの市長の矜持に胸のすく思ひです。
政治と文化は別物ではありません。むしろ、ある意味一体です。

ミュンヘン市長は、著名な指揮者を手放しても、オーケストラは街のものであるといふ、きはめてシンプルな真理を云ったに過ぎません。






伝説5

2022-02-03 | 文化的なもの
現在、NHKの朝の連続ドラマが一寸話題になってゐますが、その要因は深津絵里の存在・演技にあると思ふ。
『踊る大捜査線』でひょうひょうとした警察官を演じ、『悪人』では、確か金髪の犯人を愛する女性を演じてゐました。

名優だと思ひます。

深津絵里といへば」、JR東海のCMが、まさに伝説ものです。

CM JR東海 X'mas Express 深津絵里 1988年

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バブル真っ盛りのころ、小生はこのCMをリアルタイムで見てゐましたが、とても印象的なCMでした。

余談ながら、なぜ、最近のCMはつまらないのだらうー。
例へば連日流れるビールのCM、どのメーカーのものも「ああ、ウマイ!」「やっぱり違ふ!」程度のものばかりー!
工夫もなければ、キレもない。

JR東海のCMが伝説的なのは、見事にはめた山下達郎の選曲と、まだ若い深津絵里が見せる絶妙な演技力にあるのでせうが、
たった何十秒のなかに、若い恋人同士の刹那の時間を切り取った裁量の見事さなのだと思ってゐます。









「出島遊女と阿蘭陀通詞」

2022-01-25 | 文化的なもの
とても面白い本を読んだ。

「出島遊女と阿蘭陀通詞」(片桐一男/勉誠出版)。


江戸時代の鎖国政策下(近々、この鎖国といふ言葉は消えるかもしれないほど、最近いろいろな調査が進められてゐるさうですがー)、長崎の出島に集ふオランダの商館人とそこへと呼ばれてゆく遊女の話です。
狭い出島のなかに、オランダの商人と長崎奉行下の通詞と、そして遊女たちが小さなユートピアを築いてゐたかもしれない、といふ世界です。

遊女たちが商人たちへ差し出すふみのなんと流麗な文章、そして、その心持ちの素敵なことー。
もちろん、通詞たちが翻訳して渡してゐるのですが、それでも、逢瀬の時には無言といふこともないでせうから、オランダ人は片言の日本語で、遊女たちはうる覚えのオランダ語で話したことでせうー。

江戸時代に、ある意味時代の陰で、悠々と外国語を話したかもしれない遊女たちが力強く毎日を生きてゐたー!
その事実を知っただけでも、読んだ意味がありました。

ちなみに、
かつて山形市にも大きな遊郭街があり、今は飲み屋街になってゐますが、かつても面影を残して今に至る料亭もあります。
小さな路地の先に、客と遊女が待ち合はせに使ったかもしれないといふその店で幾度か飲んだことがありました。
いい悪いではなく、いち時代の名残りとして残ってゆくべきでせう。




浅井三姉妹

2022-01-18 | 文化的なもの
「戦国三姉妹物語」(小和田哲男/角川書店)を読む。


いはゆる、浅井三姉妹の物語です。

時系列的に話は進み、長女の茶々(淀殿)は大阪の陣で非業の死をとげ、次女の初(常高院)は出家して天寿を全うし、三女のお江は二代将軍の正室としてやはり天寿を全うする。

けれど、如何に戦国時代とはいへ、時代の波に翻弄され続けながらも、なんと凄まじい生を彼女たちは生き抜いていったのだらうかー。
当たり前のことながら、余人の及ぶところではありません。

そしておそらく、それぞれが違った生き方を志向しながら、やはりどこかで浅井の血を、織田の血を残したいと必死で生きもがき抜いたその見事さと勁さに感動せざるを得ません。

昨今、奥さんに復縁を断られてあげく自暴自棄になり20人以上の市井の人を道連れに放火自殺した人や、生き方がわからないと電車内で火をつけ市井の人を狙った人や、東大に入れないかもしれないとやけくそで市井の人を傷つけた学生やら、自らの弱さをさらけ出す人々が多いです。

もちろん小生なども、弱さの塊りのやうな人間ですし、弱さをさらけ出すことの大事さもわかりますが、
黙々と一日一日を生き抜くことの大事さをあらためて知った次第です。


「葵 徳川三代」

2022-01-16 | 文化的なもの
12月中旬から一か月ほどかけて「葵 徳川三代」のDVDをすべて見てゐました。
ゲオさんからのレンタルです。


20年ほど前のNHKの大河ドラマですが、放送時もいくつかの回は見た覚えがありますが、かうして一気見すると色々面白いことに気が付きます。

昨今とは違ひ、合戦シーンも豪快で雄大、衣装も豪華賢覧で十分な見ごたへがあります。
ストーリー自体は、定説にいろいろなエピソードをからめて、いわば正攻法の時代劇です。
斬新な解釈や新解釈はほとんどなく、ある意味教科書通りです。

何よりも家康役と淀殿役の役者がはまり役で、その丁々発止ぶりがとても面白い。
登場してくる人物が膨大な人数になるので、若い役者になると武家言葉のセリフが至極下手で(子役は仕方ないとしても)やや興ざめでした。

まうひとつ不満だったのは、後半になるとほとんど徳川ファミリーの場内劇になってしまひ、これは最初からですが、市井の人々の生活や苦しさや喜びが一切そぎ落とされてゐることです。
それを入れるとドラマ自体が構成不能になるのはわかりますが、歴史は武家や朝廷だけで成り立ってゐるわけもなく、なにかひと工夫あってもと思ったものです。

徳川の幕藩体制の基礎は家光までのまさに三代で定まったといはれてゐますが、まったく何もないところから、そのシステムを創りあげ260年余の歴史を創ったことの難解さを改めて思ひました。
ただ、最初から最後まで一強その他といふ体制だったこと、そしてドラマの後半に頻繁に現れる朝廷との微妙なパワーバランスがやがて末期に薩長によるクーデターを誘発させる要因がすでに芽をふいてゐたことを改めて知ることになりました。

そして、ドラマのまう一本の流れでもある浅井三姉妹のストーリーがとても面白く、早速に県立図書館で関連の本をいくつか借りてきました。