半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第75話

2020-06-24 08:05:40 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!再開です
平日の朝は11時から、夕方は5時20分から、夜は7時から
レッスンをやっております。
土曜日は朝11時から、夕方は6時からです。
日曜日は朝10時から、昼の12時からです。どうぞ宜しく
お願い致します。

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
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ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
ディレクターが舞台に上がって来た…!
第75話
真っ青な眼で瞬きもせずに、ディレクターである
ウルフ・ガッド氏はショージの眼を真っ直ぐに
見つめたが、深海の様な瞳が怖い。しかしその
刹那、ニッと笑うと、「合格だ~っ!君を我が
バレエ団に迎えよう!これから直ぐに事務局に
行き、契約書にサインしてから日本で労働許可証を
申請する事になる。となると今が11月だから…
労働ビザが降りて君の仕事の開始は来年の8月の
半ばになるだろうか…?」

ショージはディレクターの言葉を全部聞き終わる
前に、「ちょっと待ってください、私は今すぐに
仕事が必要なのです!日本に帰るお金など持って
いませんし、日本で申請しなくてもイタリアに
2年働いていたからイタリアで申請出来ます。
今から働かないともう食べて行けなくなるの
です!」すると今度はメガネをかけた金髪
クリンクリンの秘書が「今からって、それでは
ボーナスが出ないわよ?このバレエ団では
12ヶ月の雇用期間と13ヶ月分の給料という
契約になるのだから、12ヶ月に満たない方には
ボーナスは出せませんが…」

ショージは即答した。「ボーナスは要りません…。
お願いです!食べて行けるだけの給料が出るのなら
それだけで結構です。今直ぐに仕事がしたいの
です!」ショージの言葉にすかさず秘書が、
反論しようとするのをディレクターが手で
押さえ、「それは私にとっても願ってもない
事だ!よし、善は急げだ!事務局に行こう!」
 
秘書は目をパチクリさせながら、3人で劇場を
出た。劇場から歩いて5分ほどの街の中心地に
事務局はあった。その厳重な門を潜ると更に
奥に進んで行き、一面ガラス張りのひときわ
美しい部屋でタキシード姿の老人が他の人たちと
話し込んでいる。

ディレクターと秘書、そしてショージは待つ事
10分。ディレクターはその老人の前では、
非常に丁寧な挨拶をした。そしてショージに
英語で「この方が我々の劇場の支配人だよ」
と紹介した。タキシード姿の老人…いや、
支配人は優しい眼をしているが、ちょっと
珍しそうにショージを見た。

支配人はパーフェクトな発音の英語でショージに
「よくいらしてくれました…」そう丁寧に言うと、
今度はディレクターとスウェーデン語で話し出した。

1986年11月中旬 契約書にサイン!

早速、支配人とディレクターのウルフ・ガッド氏
の立会いの下で、契約書にサインをした。契約も
無事に済んだ。危機一髪のところであった。
これほどの危機感は今までで1番だった。
しかしこれからイタリアに、再度戻らなければ
ならない。労働許可証の申請のためだ。

普通ならば日本に帰って申請しなければならない
ところをイタリアで済ませられるのはとても
有り難いのだが、それでも労働ビザを取得する
までに数週間は掛かり、もう財布の中を覗いたら
そんな長い日数を暮らせるだけの金の持ち合わせ
が無い。 ガラス張りの部屋から丁寧にお辞儀
して出ると、支配人は優しく笑顔でショージたちを
見送った。

ショージはこの時点からショージのボスになった
ディレクターに聞いてみる事にした。 「あの、
お願いがあるのですが…、」前を歩くウルフ氏と
金髪の秘書が足を停めて振り返った。「何だい?」
ショージは躊躇いながら、「給料の半分を前借
させて頂けませんでしょうか…?」これには
秘書がびっくり仰天して金髪の髪をゆさぶり、
ブルーの巨大な眼をおよそ顔半分位までに見開き
ながら、「な、なんですって!?」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第74話

2020-06-23 08:02:27 | webブログ

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また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第74話
一般的なオーディションの場合、その結果は数カ月
経ってから連絡して来る事が多い事からショージは
オーディションの前に秘書に予め願い出た。
「すみませんが、即この場で、オーディションの
結果の答えが欲しいのです。もし、ディレクターが
私を気に入ってくれなくてもショックは受けません、
お願いです、結果だけはこの場で教えて欲しいのです。
私は今とても厳しい条件の下に立たされておりますので、
勝手を言っているのは重々分っております。すみま
せんが、なんとかお願い出来ませんでしょうか?」
 
秘書は困惑していたが「一応、ディレクターのウルフ
ガッドには伝えてみますが、ディレクター次第なので…」
金髪をクリクリにカールした女性秘書はディレクターの
方に向かって歩いて行った。秘書の話では「オーディ
ションはスタジオではなく、劇場の舞台の上で行われ
ます。普通、オーディションが舞台上で行われる
ケースは珍しいのですが、この日はたまたまバレエ団の
舞台リハーサルと稽古が舞台上で行われるため、
オーディションも舞台の上になるのです…」

バレエ団のダンサーのための稽古が即ちショージの
試験だ。稽古も中盤に入り、ここからが勝負だった。
火蓋は切って落とされた。ここで失敗すればショージの
将来は終わってしまう。もう生活する金が財布の中に
半分しか残っていない。日本に帰る切符を買う金など
到底持ち合わせていなかった。

背水の陣!

早速、3人ずつグループになって一緒にジャンプする
のだが、ショージの順番が来ると、4人になった。
それでも音を外さない様にテンポを守りながら回って
いくと、劇場の巨大スピーカーから男性がスウェーデン語
でペラペラと言った。

稽古担当のバレエ教師、ユッスィがジャンプを制止した。
そしてショージの傍までツカツカと寄って来て、「今、
ディレクターが君一人でマネージ(舞台を大きく旋回する
技術)をしなさいって言ってるんだよ…」「えっ、私一人
だけでですか?」ユッスィは、皆を少し下がらせて
ピアニストのブルガリア人の男性に、「じゃあ、スタート!」

ゴーサインを出した。このディミトリというピアニストが
ショージに目で合図を出した。「君のやり易いテンポで
弾こうじゃないか…!」ディミトリの熱の籠った指先!
グランドピアノの内部のハンマーが弦を強く叩き
グランワルツの調べに乗ってショージもありったけの
力でステップを踏み出し、ジュッテ・アントゥール
ラッセに入って行く。

周りのダンサーたちもじっと見入った。ショージは
空中にいる時間がとても好きだ。「ああ、跳んでいる、
空間に浮かんでいる!」と実感し体中が喜びで満た
される。最後にパラプリ(フランス語の傘という
意味のジャンプの一種)で仕上げに入れた。

暫くしたら、全員のダンサーたちが拍手をした。すると、
つかつかとディレクターが客席から舞台上まで上がって
来て、ショージに向かって英語で言った。「君が私の
秘書にショックを受けても良いから直ぐに合格か不合格
かの返事が欲しいと言ったんだね?じゃあ、言おう…」
ディレクターのウルフ・ガッド氏は、金髪の髪に
真っ青な瞳でショージを睨む(にらむ)ようにして見た。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第73話

2020-06-21 08:19:26 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
スウェーデンの第2首都、ゴッセンブルグ
第73話
スウェーデンには、2つのバレエ団があることを
知った。1つはロイヤルスウェディッシュ・
バレエ団で首都ストックホルムに所在するが、
もう一つはゴッセンブルグバレエ団(日本
読みはギョテボルグ、または、ヨーテボリバレエ
団)だ。スウェーデンの第2首都的存在である。
日本で言えば大阪に当たる。

地図を見ながら、そのすぐ左横にはノルウェー
という国があり、その国の首都のオスロは
ゴッセンブルグからは非常に近い。まずは
ゴッセンブルグバレエ団に電話を掛けてみた。
ショージ「あの、すみませんが…ダンサーの
空きは有りますか?」相手「ああ、1つだけ
なら有ります。」ショージ「ほ、本当ですか!?
男性ですか?女性ですか?」相手「出来れば
男性を探していますが…」ショージは念を
押して聞いてみた。「身長は175センチで
日本人です。問題は無いでしょうか?」
当地に着いてから問題が出ないように絶対に
聞いておく必要があるからであった。

実際にそこまで行ったは良いが、白人でなければ
とか背が低いとかいう理由で断られないかを
前もって聞いておく必要があるからだ。
ショージの財布の中は旅費と食費の分を考慮
すると限界があった。もし、このひと月以内で
仕事がなければ、乞食になるか、飢え死にする
しかない。まさに「背水の陣!」必死に聞き出した。

相手「何か訳有りなのですか?凄く切羽詰った
感じに聞こえますが…?」ショージ「切羽
詰まっている?その通りなんです!私、直ぐに
でも行きます!オーディションはいつが可能
でしょうか?明日は、船の関係で無理ですが
明後日なら行けます!お願いします!」
相手「ここに芸術監督がいますので、ちょっと
聞いてみますね…。」

しばらく沈黙があり、相手「では、明後日に
お待ちしています。あなたの名前は?」
ショージ「ショージ!マイネーム、イズ、
ショージ!」よっしゃ~っ!

ゴッセンブルグ・バレエ団のスタジオ

劇場から歩いて10分ほどの距離の場所にその
スタジオは所在した。ショージは意を決して
スタジオ内に入ると近くにいた女性がショージに
近づいて来て、「あなた、誰?」と聞いて来た。
「私は先日、オーディションしてもらえると
約束して頂いた日本人です…」と応えると、
「ああ、あなたなの…。明日が約束の日だった
はずですが…朝、劇場で…と」ショージは約束を
守らなかった事がいけなかったんだなと躊躇
しながら「そうなんですが、早く着いてしまった
から見学に来たのですが、邪魔だったでしょうか?」
すると、「別に邪魔ではないけれど、ちょっと
待っていてください。ディレクターはあの椅子に
座っている方だから、挨拶したら
いいわ…」

秘書の女性は、ディレクターに突然の来訪者が
来た事をその場で伝えた。しかしディレクターは
椅子からは立とうとせずに、そのまま座った状態で
ショージに手を上げて挨拶を返しながら、振り付け
を続行した。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第72話

2020-06-20 08:14:16 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
レッジオエミリア駅のプラットフォーム
第72話
とうとうイタリアを去る最後の日となった。電車が
来るまでランドルは10メートルも向こうで背中を
向けて立っており、ロバートも話しかけては
くれない。電車が到着した。

ショージの顔を見ようともしない向こうのランドルと
ロバートに最後の礼を声にした。「今まで本当に
有難う、とても楽しかった!君たちの事は絶対に
忘れないよ…」

その刹那、ランドルが走り寄って来て「うわっ~!」
っと叫びながら石敷きのプラットフォームに泣き
崩れた。「え、ラ、ランドル…!?」ランドルの
こんな泣く姿など見た事もなかった。「ショージ、
ドントゥ ゴー!、ホワイ?ホワイ、アーユー
ゴーイング?」石敷きのプラットフォームに咽んで
いるランドルをショージは呆然と見つめ、次いで
ロバートを見ると、普段はブルドッグの様なガッシリ
とした身体の静かなロバートが肩を震わせて泣いて
いるではないか!

「あ…!?」 ショージは電車に乗り込み2人に
声を掛けたくても、涙で詰まってもう声が出ない。
無情にもドアーが閉まり2人が見る見る流れて
去って行く。ランドルは地面にうつ伏して泣いて
おり、ロバートは頭を抱えているのが最後の別れ
となってしまった。

電車のドアーにしがみつくショージは、「ランドル…
ロバート…いつかまた会おうね!ありがとう…
今まで本当にありがとう!」心の友だちがそこに
いた。列車は、ひたすら北欧へと走って行く

絶対絶命!

巨大船のシリアラインがフィンランドの港に横づけ
された。首都ヘルシンキに到着したのだ。まだ朝が
早かったのだが、トラム(路面電車)に乗り込むと
セントラルステーション(鉄道の中央駅)にやって
来た。「ここで新しい生活が始まるんだ…」と感慨も
一潮だ。

「ああ…なんて美しい国なんだろう…」そして
この国にもオペラ座がある。ショージの夢に見た
ロシアはこの地平線の向こうにあるのだ。ショージは
胸一杯に空気を吸い込んだ。「よしっ、行くぞ!」 
バレエ団の芸術監督を担っているドーリス・ライネ
女史の部屋に入ると開口一番、「んー、惜しかったわ!
あなたからの連絡が来なかったから、つい先日に
新しいダンサーと契約をしたところなのよ…、
あなたは連絡もして来ないから、いつこのバレエ団に
やって来れるのかも分からなかったものね。残念ね、
また空きがあったらその時ね。」

ショージは身体が凍りつき、あまりのショックに
口が開かなかった。取り敢えず、今何を言われた
のかだけを把握出来たので「さようなら…」とだけ
言い残して、このヘルシンキ国立劇場を後にした。

 お先真っ暗とはこの事だ。しかし頭を抱えて
しょぼくれている悠長な時間などはない。財布に
残っている金の事を考えると、もう走るしか
なかった。一体何処に向かって走るのか?本屋だ。
本屋に行き、片っ端からバレエ雑誌を読んだ。
「何処でも良い、本当に何処のバレエ団でも
良いから直ぐに雇ってもらえる所を見つけないと…!

今更、イタリアのバレエ団に引き返すことなど
出来ないのだ」ショージの手元には1か月分の
生活費しかない。仕事がなければもうそこで終りだ。
食べる事も動く事も出来なくなる。「あー、ど、
どうしたらいいんだ…絶対絶命か!?」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第71話

2020-06-19 08:07:03 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第71話
 とても重い口調でマリネル氏が口を開いた。
「ショージ、もう一度確認したいのだが先日君が
言っていたバレエ団を辞めたいと言う話は本心
かね…?」ショージは二人に向かって言った。
「このバレエ団が嫌になった訳などではありま
せん…。私は拾って頂いた事に心より感謝して
います。マエストロやリリアーナを心より尊敬
しています。ただ、どうぞ分かってください、
この私には更なる勉強が必要なのです!」

その刹那、マリネル氏がショージに大声で罵声を
浴びせた。「馬鹿もーん!ショージ、私はスイス
だろうがロシアだろうがイギリスだろうが、
世界中に声が届くのを知っているか!お前が
何処にも行けない様にする事なんか訳無い事さ!
絶対に行かせないからな!」マリネル監督の酷い
言葉にショージは絶句するのと同時に何故ショージが
バレエ団を辞めて他に行く事を許してくれないの
かが理解出来なかった。

ショージは心の中で思った。「僕をこのバレエ団に
必要としているからだろうか…?もし、そうなら
こんなに酷い事を言わなくても「居て欲しい」と
言ってくれたら良いのに…。仮にマリネルがそう
言ったとしても僕の心は変わりはしないけれども…」
マリネルが声を上げて聞いた。「次の場所は何処だ?
ドイツか?まさか、ロシアじゃないのか…お前、
ロシアに憧れていたよな…?もしロシアなら直ぐに
電話してビザを発給出来ないようにするからな!」

 リリアーナが助け舟を出した。「マリネル…、
なんて言う事を言うの?お願いだから、大声で
そんな事を言わないで…」ショージはこの瞬間に
自分の心の中ではっきりと決めた。「この月の
最後まで働いたらこの国を出よう!」と決心した
のだ。ショージはもう誰もいなくなった更衣室の
ベンチに座って、この国を出るために最初にしな
ければならない事は何なのか考えた。数日が経ち、
とうとうイタリアを出て行く日が来た。

イタリア生活の終止符

ダンサーたち全員の顔をゆっくり見渡しながら
ショージは「皆、ごめんね…でもありがとう!
僕は皆の事を忘れないからね。ここに来れて
本当に良かった。皆に出会えて良かった!」
これが最後の言葉であった。事務局の方々、
衣装制作の老婆マリア…マリアはショージの
ために泣いた。「有難うマリア…!」そして
バレエ団の入り口に差しかかった時であった。

入り口にはバレエ学校の生徒たちやお母さんたちが
立っていて、「ショージ…本当に行くの?
行っちゃうの?」ショージはとても驚いた。
「何故、この人たちは僕が去るのを知っているの
だろう?」しかもショージの知らないお母さん
たちまで涙を流しているのだ。「ああ…知らな
かった!今の今まで気が付かなかった!これほど
まで僕を心配してくれた方々がいた事を…!」

遂に我慢していたものがショージの両目から
溢れ出した。「グラッツイエ!グラッツイエ!
ソノ モルトフォルトゥナート!…エ、ポイ 
イオマイ ディメンティカーレ、レッジオ
エミリア!!」(ありがとう…ありがとう…
僕は幸せ者です!そして僕はこのレッジオ
エミリアを永遠に忘れる事はありません!)

 「チャオ、トゥッティ…イオ、ノンディーレ、
アリベデルチ!パルケ、ウンジョールノ、
イン フルトゥーラ、リトールノ クイ!
チャオ!、トゥッティ!」
(じゃあ…皆さん私はさよならは言いません…
いつの日か、またレッジオエミリアに戻って
来ます!じゃあ…、皆さん!)ショージは手を
大きく振ってバレエ団を後にした。
(つづく)