半澤正司オープンバレエスタジオ

20歳の青年がヨーロッパでレストランで皿洗いをしながら、やがて自分はプロのバレエダンサーになりたい…!と夢を追うドラマ。

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第65話

2020-06-12 08:19:59 | webブログ

おはようございます、バレエ教師の半澤です!再開です
平日の朝は11時から、夕方は5時20分から、夜は7時から
レッスンをやっております。
土曜日は朝11時から、夕方は6時からです。
日曜日は朝10時から、昼の12時からです。どうぞ宜しく
お願い致します。

ホームページ半澤正司オープンバレエスタジオHP http://hanzanov.com/index.html
(オフィシャル ウエブサイト)

私のメールアドレスです。
rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp
http://fanblogs.jp/hanzawaballet3939/
1表紙.jpg
ルイースと写真.jpg






創業36年、本場博多のもつ鍋・水炊き専門店【博多若杉】


連絡をお待ちしてますね!

2020年12月23日(水)寝屋川市民会館にて
半澤正司オープンバレエスタジオの発表会があります。


Dream….but no more dream!
半澤オープンバレエスタジオは大人から始めた方でも、子供でも、どなたにでも
オープンなレッスンスタジオです。また、いずれヨーロッパやアメリカ、世界の
どこかでプロフェッショナルとして、踊りたい…と、夢をお持ちの方も私は、
応援させて戴きます!
また、大人の初心者の方も、まだした事がないんだけれども…と言う方も、大歓迎して
おりますので是非いらしてください。お待ち申し上げております。

スタジオ所在地は谷町4丁目の駅の6番出口を出たら、中央大通り沿いに坂を下り
、最初の信号を右折して直ぐに左折です。50メートル歩いたら右手にあります。

連絡先rudolf-hanzanov@zeus.eonet.ne.jp

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第65話
 「ん~、どうやったら、中へ入れてくれるの
だろう…?」このまま引き下がったら折角この
ロシアまで潜り込んだのに何の意味もない。でも、
爺さんたちのガードは固いし…どうしよう?」

キーロフバレエ団芸術監督オレグ・ビノグラードフは来るか!?

関係者入り口で呆然と立って門衛の爺さんたちを
恨めしそうに見ていると次々に、バイオリンを
抱えた人や楽譜の束をバッグからはみ出させて
持ち込む人、この劇場で働く様々な人が必ず門衛に
語りかける一言があった。耳を澄ませて良く聞いた。
「ズド?ズドラストブツィエ…?」とこの門を通行
する人々は言った。「何だ、この呪文みたいな
言葉は!?」 かなり、長い間見ていたがバレエ
ダンサーは入って来ない。「ああ…芸術監督の
オレグ・ビノグラードフ氏が来てくれたら、直談判
するのにな…」門衛の爺さんたちもドアーの中に
入ってしまった。
 
扉を開けて4人一緒で固まって座っている門衛の
爺さんに聞いたばかりの呪文の言葉「ズドラスト
ブツィエ!」って言ってみた。すると、門衛たちは
呆れた顔して、「この男、まだいたのか!」と、
一斉にショージをじっと見た。流石にショージも
「あ、これはいけない!」と思って笑いながら「オー、
ソーリー!」と言って出直す事にした。

あまりにしつこいショージに嫌気が差しているこの
爺さんたちの顔を見るとショージの方が可笑しくて
笑い出してしまったが引き返そうにもまだ心残りが
ある 。 ふと、キーロフ劇場の前の大きな道の
反対側を見ると、もう一つ劇場らしき建物があり、
何かのポスターが貼ってあるのが目に止まった。
ショージは道の反対側に渡り、そのポスターを見に
行ってみた。すると幾人かの球形に太った大きな
おばさんたちがそのポスターを囲んで見ているので
良く見えない。

ショージはおばさんたちの間に割って入り、ポスターを
見るとバレエであった。一人のおばさんに「これ、
ここでやるんですか?」とゼスチャーを混ぜた
英語で聞いてみると、おばさんはロシア語を機関銃
のように使って「ダダダダ!」って説明してくれたが、
「ロシア語のイエスはダ~だよな?どうやら、
イエス、イエス、イエス、イエス ここでやる
のよ!」って事かな…日本のおばちゃんも、
そうそうそうよ!って言ったりするもんな…。」
おばさんの一人が大きな声を出して言った。
「このバレエは良いわよ!今夜なのよ!今夜!!
チケットはあそこで買うのよ!え?あんた、分ったの? 」

何処の世界でも、おばちゃんは親切で優しい。そんな
優しくて大きな丸い体のおばちゃんは自分の腕時計を
見せて、「今日の夜!この針がここに来たらこれが
ここでやるのよ!あんた、分った?」とショージに念を
押した。 ショージは「あっ!これはもしかしたら…」
おばちゃんに礼を言うと早速その足で建物の裏側へ
走り出した。
(つづく)

ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第64話

2020-06-11 08:31:34 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第64話
メモ帳を女子に差し出して、「劇場の場所を書いて
ください」と言った瞬間であった。女子の表情が
さっと変わり、ショージのメモ帳を女子が持って
いた鞄で隠した。その行動はまるでショージが恰も
出してはいけない物を出した事を叱るようで、そのまま
足早に女子は去って行ってしまった。

仕方無く今度は爺さんに声を掛けた。同じように
英語であったが、爺さんにはチンプンカンプンの
ようだ。だがこの爺さんはショージが迷っている
のを察知した。しかしショージが再びメモ帳を
出した途端、爺さんもやはり顔色が変えたが素早く
メモ帳を隠すと、辺りをキョロキョロしながら、
ロシア語で「駄目だよ!人前でこんな物出したら…
見られたら危ないじゃないか…!」ソ連では外国人
との紙のやり取りなどの行為は諜報活動とみなされ
スパイ容疑をかけられるのだ。

「ゆっくり喋りなさい、何処に行きたいのかね?」
ショージはしょんぼりしながらイタリア語で
「テアトロ…」(劇場)と言ったら通じた。「ああ、
テアトロか!劇場だね…?何処の劇場?え、キーロフ?
ああ、キーロフ劇場だね?よし、私に付いておいで」
爺さんはショージの手を引いて連れて行ってくれる
ようだ。
 
「ああ…良かった!!」ショージはその爺さんの服を
見ると、色がすっかり褪せて古びていていが、
アイロンはしっかり当ててあった。道行く沢山の
人々の服装にも色が無かった。鮮やかな色が全く
無いのだ。顔にも表情がない。活気もない。ただこの
限りないほど沢山の群衆はザッザッザッと歩いている
だけなのだ。爺さんはショージに何かを聞いて来た。
「何処から来たのか?と言っているのかな?ジャパン!」
と言っても通じない。

「ジャパンで駄目なら、ジャポン、ヤパン…駄目?
分からないか…にほん、ニッポン… 日本語で言って
分かるはず無いか…」だがそこで爺さんに通じたので
驚いたのはショージの方であった。「おー、ニッポン?
ニッポンスキーか?」爺さんは路面電車に乗ったり
歩いて公園を通ったり、その都度ロシア語で歴史やら
建物の説明などをゼスチャー入りで話した。
「ああ、なんと優しい爺さんなんだ」

キーロフバレエ団…な、中に入れてくださいっ!

爺さんが「着いたぞ…ここだろ?」「あっ、これだ!
写真で見たキーロフ劇場だ!そうです、ここです!」
ショージはフィンランドからバスでやって来る時に
バスの中にいた女の子から、少しロシア語を学んで
いた。「確か、ありがとうはスパシーバだったな…」
爺さんに「スパシーバ ボリショイ!」と言った。
するとその老人はニッコリと笑って手を振りながら
沢山の人の流れの中に消えて行った。大感謝だ。
 
ショージは早速、関係者入り口に回ってみた。4人
ほどの爺さんたちが門衛としてドアの前と内側に
立っている。ショージは英語で「私はバレエダンサー
です。中に入れてください」と言った。ここでも
英語は通じない。兎に角、何でも言ってみた。
「バレエ、バレエット、バリエ…」門衛の爺さんは
しまいには怒りだして、「うるさい!あっちへ行け!」
凄い剣幕の爺さんに追っ払われたショージは少しだけ
離れた所からその関係者入口を見ていると、次々
たくさんの関係者が入ろうとした瞬間を逃さず
ショージも一緒に混じり込んで入ろうとした。
と門衛の爺さんの一人に、「何してんだ、この~っ!」
と腕を掴まれて摘まみ出されてしまった。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第63話

2020-06-10 09:29:53 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第61話
ガイドはバスの中に一人残ったショージに目合図を
した。「こっちに来なさい…」バスから降りて人が
いない静かな木々の間のところに呼び、「さっきは
ごめんなさいね…あなたは知らないと思うけれど、
バスの中には録音装置が付いていて会話を全部盗聴
されてるの…。私も小さい頃からバレエを習って
いたわ…あなたの気持ちは私にもよく分るわ。あちらに
着いたら、最初にホテルでパスポート検査とグループ
行動のための注意事項を監視官たちから説明され、
それからホテルの部屋割りがあるわ。今日はそれだけに
なるけど 明日の朝からは決まった場所にショッピング
や食事など監視官付きの自由行動が5時間あるから
その時にあなたはグループから離れて。私は見て見ぬ
振りをするから、なんとかその5時間で自分の思いを
遂げなさい…」と言いながら、ガイドは周りに人が
近づかないように用心するのを忘れない。

「頑張りなさいね…ああ羨ましいわ、あなたはバレエが
出来て。私もバレエが続ける事が出来ていたなら…
忘れないでね、5時間よ。さあ、あっちへ行きなさい」
ショージはこのバスガイドの優しい言葉で緊張と希望で
胸が一杯になった。

え、ここが芸術の国 ソビエト!?

バスの中はウォッカとたくさんの酔っ払いの男たちの
臭気でムンムンした。ショージは、座席の間の通路の
向こう側に一人で座っている女の子に紙とペンを見せて
「すみませんが、ロシア語を教えて頂けませんでしょ
うか?」と話しかけた。女の子は少し戸惑いを見せ
ながら「え?ああ、どうぞ…」ロシア語講座の時間だ。
まずは「こんにちは」や、「初めまして」で、ショージの
自前の辞書作りはいつもショージが持ち歩く紙と鉛筆
だけで作られる。そして「いつ? 」「どこ?」「誰?」
など次々にメモをして行き 最後にレニングラードの
バレエ団へうまい事入れたのを想定して、「レッスンを
受けさせて欲しい」と、口頭で喋れるようにロシア語を
教わった。
 
ショージはこの女の子が何故、レニングラードへ行くのか
聞いてみたら、なんでも彼女はフィンランド人とロシア人
のハーフで、彼氏がロシア人なので久しぶりに会いに行くのだ
と言う。しかし彼氏に会いに行くと言うのにちっとも楽し
そうには見えなかった。

ソビエト国境に着いた。全員バスを降りたが、ショージは
唖然とした。夥しい数の軍人たちが、腕の中にマシンガンを
抱えて立っていたのだカラシニコフと言うこの恐ろしい
機関銃はオモチャではなく、銃弾が入っていて銃口は
本当に穴が開いていた。ショージが小さい頃持っていた
オモチャのピストルの銃口は穴が開いていなかった。
開いているオモチャは銀玉鉄砲くらいの物であった。

「ま、まずい…もし僕が日本人である事がばれたその時は
どうなってしまうのか…まさかシベリアに送られてしまう
なんて恐ろしい話に発展してしまわないだろうな…」
列を作って並び、パスポートを差し出しても表情一つ
変えない恐ろしい形相の検査官。スタンプを押す時間が
なんと長く感じられたことか。数百人はいそうな軍人たちも
ショージたち一行の方をちらりとも見せない。「なんと
冷たい人たちなんだろう…」この時。ショージははっと
思い出した。「あっ!僕はアムステルダムの黒人から
売られた大麻を所持している!こんな物見つかったら
銃殺かシベリアに連行されるのは必至だ!大変な事に
なってしまった!」
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第60話

2020-06-09 08:24:03 | webブログ

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ウォッカツアー!バスはやって来た!
第60話
街角にあるバスの待合い所へ来ると既に幾人かの
男たちが居た。これから旅行に行くというような
服装ではない。どちらかと言えば、酔っ払いの
オヤジが朝方に二日酔いで疲れて数人で屯している
という感じだ。ショージはその男たちに向かって
「レニングラード行きのバスはここからですか?」
と英語で質問した。すると男たちは黙って頷いた。
指定の時間が近づくにつれ、段々とその数だけは
増えたが これは間違い無く異様なグループに見えた。
30人くらいの酔っ払いの男たちが集まったところで、
バスガイドが「レニングラード行きです!」と
声をあげて、バスから降りて来た。金髪の40歳位の
優しそうな女性であった。 

男たちは黙ってぞろぞろとバスに乗り込み、ショージ
も乗り込むと中に一人だけ女の子がいた。若いと
言えばその女の子とアジア人のショージのみだ。
窓ぎわに女の子が座り、ショージは通路を挟んで
反対側に腰掛けた。バスが動き出し、バスガイドが
これからのツアーのプランと注意事項を説明し始めた。
 
男たちは眠り始めたか、興味無さそうにそっぽを
向き、女の子さえガイドの話は上の空だ。エキサ
イトしながらガイドにかぶり付くように聞いている
のは、ショージ一人だけであった。 何時間走った
のか、たくさんの酔っぱらいとショージを乗せた
バスがフィンランド国境を出た。バスを見送るように
フィンランド国境監視官たちが、見る見る遠ざかって
行った。

ツアープランや注意事項を説明し終えたガイドが
一息ついて、「あら?」と不思議そうにショージを
見つめた。「ガイドに僕の本当の事情を打ち明けて
おいた方がいいかもしれないな…」とショージは
ガイドに近寄って行った。「実は僕はアルコールの
ためにレニングラードへ行くのではありません。僕は
バレエダンサーで、レニングラードでバレエを見たい
のです。出来ればキーロフバレエ団へ行ってオーディ
ションを受けたいのです。でなければバレエ学校でも
いいから、レッスンを受けたいと思っているのです」
 
ガイドは驚いた顔して、ショージをしばらくは見つめた。
しかし、表情がさっと曇り、「勝手な行動は許されま
せんよ!あなたは自分が一体、何を言っているのか
分ってないみたいね…!あなたは監視下にあるのですよ!」
暫くガイドにそっぽを向かれて、もうショージの話しは
聞いてはくれなかった。ショージは悲しくなった。

5時間よ!5時間で何とかしなさいっ!

既にフィンランド国境は過ぎて見渡す限り何にも無く
恐ろしい無毛の土地だ。「この空間は一体、何処の
領地になるんだろう…?もしかすると、逃げてくる
ソビエトの人たちのために地雷があちこちに埋めて
あるのかな?」バスの中から今来た道を振り返れば、
アスファルトなんかではない。それはなんとも醜い
凹凸が激しく剥き出している泥道だった。半永久凍土
が何百年も凍っては溶け、溶けては凍り、「うわーっ!
なんて醜い道なんだーっ!」
 
その長くて、どちらの国にも属さない領地の休憩地点で
バスが止まった。ガイドは20分ほど停車する事を
男たちに伝えた。ぞろぞろと30人くらいの酔っ払いの
男たちも女の子もバスから降りて行った。
(つづく)


ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)第59話

2020-06-07 07:39:46 | webブログ

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ブルーカーテンの向こう側…(男バレエダンサーの珍道中!)
第59話
本屋に寄りソ連の地図を見てみた。ソ連がどのような
場所なのかを確かめたかったからだ。地図を広げて
見ると驚いた。「ソビエト連邦ってこんなに大きいのか!
地球の半分くらいがソビエト連邦なんじゃないか…?
バレエで有名なレニングラードはと…おー?フィンランド
の直ぐ近くだぞ!」地図上には、西ヨーロッパがソビエト
連邦の端にチョコンと添え付けてあるような感じだ。
フランスやドイツ、スイスやスペイン、オーストリアと
全部まとめてもこのソビエト連邦の大きさと比べる、
象と子犬みたいである。

 しかし文化はせかせかと窮屈そうな西ヨーロッパで
花開き、しかもこんなに小さな国々は独自の言葉を
持ちながら、国境では入国しようとしている人間の
パスポートを確認して自分たちの領土を主張している。
「ソビエト連邦ってどんな所なんだろう…?」
また生まれて来たショージの身体の中にある強烈な
疑問と興味が。

ソ連に入りたい!

ショージはロシア大使館に行ってみた。どうしたら
ロシアに行けるのか知りたかったのだ。大使館の中は
異様に暗い雰囲気が漂っていた。そして並んでいる
人々も暗い感じがした。散々待たされた挙句、たった
一言「日本とは国交をしていません。無理です!」結局、
それ以上相手にしてもらえなかった。

午後からあちこちの旅行サービスセンターへ行って
みたが、ソビエト行きの旅行など見当たらなかった。
最後に行ったサービスセンターの男が「ウォッカ
ツアーにでも行ってみたら?」と笑いながら言った。
ショージは真剣に「本当にそんなツアーがあるのですか?」
と聞いた。「確かにあるよ…えーと…」事務所の奥に
入ってそのバスツアーの企画をしている旅行会社の
場所を丁寧に紙に書いてくれた。ショージは礼を言うと
大急ぎでそのツアー会社に行った。およそ一週間の
ツアーであった。

このツアーの金額は割合に安く、ショージの懐事情
でも問題なく賄うことが出来る。アムステルダムで
拾った金があるから大丈夫なのだ。早速申し込んだが、
ショージのパスポートを見た店員は顔を曇らせて
「ビザが出るかどうか分からないな…」と心配そうだ。
当時、まだソビエト連邦は西ヨーロッパの人たちに
さえ、入国は困難を極めていた。このフィンランド以外、
旅行を斡旋する所は無かったに違いない。

 ショージは何が何でもレニングラードに行ってみた
かった。レニングラードにはショージが崇拝している
「バレエの殿堂」がある。ワガノワ・バレエ学校と
世界の頂点に立つ、キーロフバレエ団だ。店員が
「ビザ取得まで4、5日は掛かりますからまた来て
ください。でもビザ取得は難しいかも…」ショージは
宜しくお願い致しますと言うと旅行会社を後にした。
「ビザが取れますように…!」と祈る思いであった。

幾日が過ぎて、バスツアー会社を訪ねてみた。緊張と
期待、不安を胸に店員に聞いた。「レニングラードに
行きたい者ですが…」パスポートの束からショージの
パスポートを引き抜くと笑顔で「オーケーだったよ、
良かったね!」ショージは飛び上がって喜んだ。  
注意事項を説明され待ち合わせ場所を指定された。
注意事項の一番は、「グループ行動のみで指定された
場所と外国人に許可されている場所のみが行動可能」
と言う事と、「ツアーのプランに従う」と言う事で
あった。ショージはパスポートを持ってレニングラードへ
旅立つために荷物をまとめて待ち合わせ場所へ向かった。
(つづく)