長らくこの曲が分からなかった。
この曲は、スタンリーキューブリック監督の映画「シャイニング」のエンディングに流れていた曲である。
この曲に惚れこんだ私は、ロードショー当時、この曲目当てでこの映画のサントラLPを貸してもらった。
そして、この曲を探したのだが・・・・なぜかサントラLPには、この曲は入っていなかったのである。
やや似たような雰囲気の曲「HOME」は入っていたものの、この曲そのものは・・・・なかった。
それ以来、ずっとこの曲は幻の曲のようであった。
頭の片隅には、いつもこの曲のメロディがあった。
そしていつしか、私に影響を与えるようになっていった。
最近、ふと思いたち、ネットであれこれワードを入力し、アンド検索も繰り返し、やっとこの曲を見つけた。
そうか、タイトルは「真夜中、星々と君と」という曲なのか。原題は「Midnight with the stars and You 」。
まさにこの曲!
映画「シャイニング」のエンディングで使われてたこの曲は、アル・ボウリーがボーカルで、演奏はレイ・ノーブル楽団のバージョンだそうな。
「シャイニング」は、ジャンル的にはホラー映画だったのだが、最後にこんな穏やかな曲が出てきて、なにやらホッとさせられた。
その一方で、ホラー映画のラストということもあって、この穏やかな曲にどこか謎めいた不思議な印象も持った覚えがある。
なので、心の中にかなり印象深く刻まれたものだった。
この曲は、非常に古い曲で、その古さは、聴いただけでそのサウンドや曲調でも分かる。
それもそのはず、この曲が出来たのは1920年代らしい。ということは、かれこれもう1世紀近く前の曲ということになる。
このメロディに、このアレンジに、なにやら当時の時代の空気があふれている気がする。
私はこういう曲が、昔から好きだった。
それは、おそらく私がジャンゴ・ラインハルトの音楽が大好きだったからだと思う。
この曲は、ジャンゴがとりあげてもおかしくない曲調だと思うし、、なによりジャンゴのとりあげてたレパートリーと相通じる「時代の空気」みたいなものは個人的に感じられる気がするのだ。
ジャンゴは1910年生まれだから、この曲が流行っていた頃はまだ彼は10代の若者。まさに様々な音楽を吸収し、音楽活動を精力的に行っていた頃。当時はこういう曲が「その時代のヒットソング」だったのだとしたら、彼もこういう雰囲気の曲に包まれていたとしてもおかしくない。
アル・ボウリーの写真を見ると、ジャンゴが使ってたマカフェリギターらしきギターをアルも弾いてる写真があった。そのへんにも、ジャンゴと相通じるものを感じてしまう。
ジャンゴの音楽にどっぷり浸かっていた私にとっては、こういう「あの時代の曲」というのは、極めて素直に私の心に馴染んでくる。受け入れやすいとでも言うか。
そして、こんな曲が作れたら・・・という思いは私はいつも持っていたし、いつかこんな雰囲気の曲をアコギでやれたら・・そして、そういう曲だけで1ライブをこなせたら、どんなに楽しいだろうと思っている。
言わば私にとって、いつも心の根底にある「曲調」。
穏やかで、品があって、華やかで、ノスタルジックで、メロディアス。
そして、なんといっても、この曲が出来た当時の時代の空気感。
そんな要素が結集しているトータル性が、好きだ。
歌詞の内容は、甘いラブソング。そして、ムーディ。
タイトルの感じから言って、歌詞の内容は大体思っていた通りの内容だった。
どの時代でもそうだが、芸術には、その作品ができた時代の空気がこめられていると思うのだが、それは音楽というジャンルの楽曲もまたしかり。
どの時代でも、その時代のメロディというものがある・・と私は思っていたりする。
この曲もまたしかりで、こういうメロディが、あの時代のメロディの一つだったような気がする。
「ある時代のメロディ」というものを意識した曲を、別の時代で作ることによって、作曲家は自分の音楽性の幅を広げていったり、戦略からくる計算でヒットに結びつけたりもする。
でも、「ある時代のメロディ」であっても、本当に魅力のあるものなら、別の時代の人が聴いてもちゃんと惹かれてしまう。
私にとって、例えばこの曲がそうである。
この曲を歌っているアル・ボウリーという歌手は、私はこの曲を知るまでは知らなかった。
ちょっと調べてみたのだが、アル・ボウリーこと本名Albert Allick Bowllyは、1898年1月7日に生まれ、1941年4月17日没・・らしい。
当時ポルトガル植民地だったモザンビークで生まれ、ジャズバンドの歌手として活躍するうちに、イギリスでレコードデビュー。
その後、活動の場をアメリカに広げ、大活躍した歌手とのこと。
レコードデビューがイギリスだったこともあり、イギリスのの名シンガーとされたが、ジャズギタリストとしても活躍していたようだ。
ヒット曲はけっこうあるようで、この「真夜中、星々と君と」は彼の代表曲の一つらしい。
また、レイ・ノーブルは、イギリス生まれの音楽家で、イギリスで作詞作曲家、そして音楽監督として活躍し、やがて「君を想いて The Very Thought of You (1934)」という曲で成功してアメリカに渡り、アメリカでレイ・ノーブル楽団を結成。
その楽団には、なんと!あのグレン・ミラーもいたという。まあ、ミラーはやがて自分の楽団を結成し、大成功を収めるのは皆さんもご存知の通り。
で、アル・ボウリーは、レイ・ノーブル楽団の専属歌手だった・・ということだ。
ちなみに、楽曲「真夜中、星々と君と」の作詞・作曲クレジットは、「Words & Music by Jimmy Campbell, Reg Connelly & Harry Woods」である。
先にも書いたが、この曲は絶えず私の心の中にあり続け、昔私がパソコンでインスト曲を作った時には、ある自作曲の途中で、この曲に影響されたものが大きく反映された曲があった。
確実に私の血となり肉となった曲の一つ。
それにしても・・
なんてチャーミングな曲であることか。素敵過ぎる・・。
この曲を聴いて寝たら、なにやら良い夢が見れそうな気さえする。
http://www.youtube.com/watch?v=Rb9t9kPRAH8
おもわず、この曲を聴きながら・・・
「おやすみ。いい夢を・・・」
とでも言ってみたくなる。
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