尾瀬に行って宿に泊まった時。
宿は山小屋だった。尾瀬の湿原内で宿に泊まるとなると、山小屋系の宿になる。
山道や湿原道をさんざんテクテク歩き続け、やっと宿に着き、夕飯の時間に宿の食堂に行って席に着いた時。
なにやら、宿のスタッフがざわついていた。
どうやら、予約の入っていた宿泊客が夕飯の時間になっても到着していないようだった。
尾瀬・・・という場所がら、遭難して宿に到着できないでいる可能性もあるので、あれこれざわついていた。
その客は、途中で道に迷ったのか。あるいは、無断でドタキャンしたのか。
捜索の連絡をしていた。客の自宅にも電話していたようだった。
だが・・どうやら連絡はつかないでいるようだった。
食堂を見渡してみれば、夕飯の支度は全宿泊者分の料理がテーブルに並べられているのに、空いてる席が2~3人分あった。
その日のおかずはハンバーグだったのだが、ハンバーグがむなしく数名分、無人のテーブルに並べられているのがわかった。
結局その宿泊予定客がその宿に現れたのかどうかは分からない。
少なくても、他の宿泊客が食堂に勢ぞろいして一斉に夕飯を食べてる時間帯には現れなかったのだけは確かだ。
その日の天候は、よく晴れて視界も良好な夏の日だったし、もしもその客が昼間尾瀬の道を歩いていたのだとしたら、遭難するような天候じゃなかった。
ただ、怪我でもしたのだとしたら、分からない。
だとしたら、その客は1人じゃなくて複数メンバーがいたようなので、怪我をしてない他メンバーが宿に連絡してくるのではないか。もしくは、その一行全員が怪我でもしたのか・・。あるいはルートからはずれた山道などを歩き、迷ってしまったのか。
尾瀬に行ったことがある方ならお分かりかと思うが、湿原の中はほぼルートが決まっている。
基本的に一本道で、途中で枝分かれするルートはあるにしても、地図を持ってさえいれば、普通に晴れている夏の日なら道に迷うルートだとも思えなかった。
もしも無断ドタキャンだったとしたら・・・宿にしてみれば、困った事態だ。
山小屋系宿というのは、たいがい食事のメニューは質素。街と違って荷物運びのアクセスの問題もあるから。
だとしたら、1人1人に用意される食事は、どれも貴重なはず。
その夕飯を食べる予定だった客がこなかったからといって、無駄にするわけにもいかないだろう。
宿の人が食べたか、あるいは念のために保存しておいたのか・・。
尾瀬は夜は真っ暗だ。山道や湿原の道には街灯などないので、その客が夜に来るとは思えなかった。街の宿ならともかく。
もしもその客が根本的にその旅に出なかったのだとしたら、どんな理由があったにしろドタキャンだし、当然損害賠償の対象になるはず。
身内の不幸みたいなやむをえない事情で旅に出れなかったのだとしても、宿への連絡は必須。
「予約してたのに、来なかった宿泊客」にも何種類かあるだろうが、アクセスのいい宿にとっては損害賠償の対象になるだろうが、その宿が山小屋系の宿だった場合、そういう客の扱いはどういうことになるんだるろ。
可能性としては、遭難した場合もあるわけだしね。
その客が遭難してた場合、連絡できる状況にある場合は、連絡もしているはず。じゃないと命にかかわるから。
とはいうものの・・
その日の天候や、ルートなどを考えた場合、その時の「予約してたのに来なかった客」は・・・無言でドタキャンしたように私には思えてならなかった。
その客は、その後どうなったのだろう。どうしたのだろう。
宿は・・どうしたのだろう。
今でも、その時のことをたまに考える時がある。
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