汨羅の観察人日記(一介のリベラルから見た現代日本)

自称『リベラル』の視点から、その時々の出来事(主に政治)についてコメントします。

野党政権奪取私論4ー野党が訴求すべき政策論(防衛政策:日本版A2AD態勢構築)

2020-09-26 20:13:44 | 政治全般

まず、私の問題認識として、日本社会にとり喫緊の課題は少子高齢化社会対策であり、これからの政治・行政の優先すべき課題は、限られた資源をいかにこの分野に投入するかであると考える。従って、ここ数年のように防衛費が右肩上がりである現状は、日本の将来にとり、一考を要するというのが私の考えである。そこで今回は、安全保障という広い概念ではなく、防衛という狭い領域で野党が訴求すべき政策について論考することとした。

ついでに指摘すると、政権交代について、野党につきまとう批判が安全保障政策、就中防衛政策が不安だというものである。私に言わせれば、外交、防衛は基本的に政権が交代しようが、外部環境が変化なければ同じ役所が存続する限りドラスティックに変化するわけなかろうとおもうのだが、産経新聞やそれに類する程度のメディア、それらに記事を出稿することで生計をたてている所謂保守系言論人なる奴原が企てるネガティブキャンペーンが、野党は安全保障政策に不安があるというものである。そこで、今回は、政権奪取に向け野党が打ち立てるべき防衛政策について考えてみる。

そもそも、喫緊の日本の国防上の脅威は何かと言えば、生起の蓋然性は意見のあるところではあるが、① 南西諸島正面における中国の戦力投射能力の増大及び②北朝鮮による弾道ミサイル攻撃であろう。特に①については、尖閣問題は巷間で知られているところである。

①について、本邦の防衛態勢はどのようになっているかと言えば、令和2年度版防衛白書によると「事前に兆候を得たならば、侵攻が予定される地域に、敵に先んじて部隊を機動・展開し、侵攻を部隊の接近・上陸を阻止することにしている。」とある。(⇒リンク:令和2年度防衛白書Ⅲ部第2節第1章①1基本的考え方)しかし、これでは、侵攻が予定される地域に陸上自衛隊を送り込むため、長期にわたり航空優勢及び海上優勢を獲得する必要があり、そのため、高性能の航空機及び艦艇を整備しなければならないという論理にしかならない。これでは衛予算が右肩上がりになるのは当然であろう。そこで日本版A2AD((Anti Access/Area Deni 接近阻止/領域拒否)(⇒リンク:防衛省・エア・パワー研究)を提唱したい。A2ADは中露が採用していると言われる作戦概念であり、米軍の自己領域への近接を拒否する戦い方であり、それができるよう兵器体系を整え、部隊を配置するというものであるが、日本版A2ADは、日本も当該作戦概念を採用し、部隊配置をすればよいというものである。

具体的に書くと、南西諸島に中国軍艦艇の近接を拒否するための地対艦ミサイル部隊をミサイル発射場所に平時から配置し、これの撃破を狙う中国空軍機の近接を拒否するための地対空ミサイル部隊も同時に平時より配置させるというものである。併せて、これらを直接防護するための部隊も平時より配置させる。地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊は、陸上自衛隊が全国に展開させている部隊を転用するというものである。地対空ミサイル部隊については航空自衛隊の部隊も平時より配置させることが必要となるであろう。これらの部隊を軍事的に必要数、必要な場所に平時から展開するという構想である。これの問題点は移駐する部隊の移駐元及び移駐先の地元対策であるが、移駐元の地元対策については、陸上自衛隊の大都市圏にある組織の移転で補い得よう。問題は移駐元である。これを解決するのは政治の責任となる。

②の北朝鮮の弾道ミサイルについてであるが、これは、アメリカに向けられたミサイル及び日本に向けられたミサイルによって異なるが、日本向けられたミサイル対応としては、イスラエル軍が導入しているアロー弾道弾迎撃ミサイルシステムを導入すればよい。日本にとり脅威なのはノドン等SRBMなのであるから、このシステムの導入で十分であろう。アメリカに向けられた弾道ミサイル対応については現在の海自を主体としたミサイル防衛で十分である。

以上は、自民党が喧伝している敵策源地攻撃能力の整備に対し、国土ハリネズミ化とも言え、専守防衛の精神に則っている、さらに言え自主防衛の観点から、防衛政策として自民党と十分に張り合えると考える。そもそも、敵策源地攻撃能力を整備するには人工衛星を含めた情報収集網を整備するとともに、ロシアや中国の戦略ロケット軍のような敵策源地攻撃専門の組織を整備する必要がある。これでは膨大な予算が必要であり、私が指上記において指摘したように、少子高齢化社会対応への資源投入という観点から、日本社会として望ましくないであろう。今、そこにある驚異に対応する上で、上記要領がある程度実効性がある方策であると考える。そして、野党は少子高齢化社会対策を優先する及び安全保障に弱いというネガキャン対策という文脈上、実効性があり、かつ、予算をそれほど必要としない防衛政策を提示する必要があると言えよう。

以上、防衛政策に詳しい方からすると、今後、防衛の領域で重要なのは宇宙、サイバー、電磁波領域という指摘がでてくるだろう。まさにその通りなのだが、これはどの政党が政権をとろうが不変であり、政策の対立軸とならないことから、敢えて捨象したところである。


野党政権奪取私論3ー野党が訴求すべき政策論(日本版グリーンニューディール)

2020-09-26 12:41:32 | 政治全般

野党世間奪取私論1において日本版グリーン・ニューディールに言及したが、そもそも、日本版グリーン・ニューディールとは何であるかというと、ここでは、既存のエネルギーを可能な範囲で再生可能エネルギーに置き換える政策(脱原発も含む)としたい。

この政策のメリットとして、以下の5点を挙げ得る。①安全保障上有利 ②経済環境の改善 ③インフラ輸出事業の育成 ④社会のデジタル化の推進 ⑤温暖化対策推進というソフトパワー発揮 以上5点である。以下、それぞれについて説明する。

①安全保障上有利:我が国のエネルギー自給率が12%であり、これが本邦の安全保障上のネックであると言うことは論を俟たない(エネルギー安全保障)。更に近年の特性を言えば、原子力発電所等大型電力発電所は有事の際、相手国に狙われる安全保障上の脆弱点となり得るとともに、大型災害発生時の大規模停電の要因となる。これらのリスクを、分散型である再生エネルギー発電に置き換えることにより、克服することができる。なお、再生エネルギーをエネルギーの軸とすることは、後述するが、電力網をスマートグリッド化する必要があるが、結果としてサイバー攻撃への脆弱性が発生することになる。これに対する処置は必要になるであろう。     

②経済環境の改善:再生可能エネルギー発電設備への公共投資であれ民需であれ、有効需要を創出するとともに、新分野の雇用を創出し得る。これは、コロナ禍及び少子化高齢化の影響により縮小する我が国経済のパイを拡大し得るとともに、新規雇用の創出による格差社会の改善にもつながる。また、再生エネルギーを軸とした電力網を構築すると言うことは、電力網をスマートグリッド化するということであり、これは社会のユビキタス化への大きなトリガーとなる、則ち技術革新の契機となり、これが我が国の労働生産性向上を通じた経済成長に資することになる。

③インフラ輸出事業の育成:再生可能エネルギーを軸とした送電網構築のノウハウをインフラ事業として他国に輸出しうる。則ち輸出産業を育成・補助しうる。更に言えば、脱原発とセットにすることにより、廃炉技術も進展し、この分野でも海外進出しうる余地も生まれうる。

④社会のデジタル化:力網がスマートグリッド化することにより、社会のユビキタス化が進展するのは必至であり、その結果として日本社会のデジタル化は進展するであろう。なお、これについては、政が各種産業政策、補助金によりその速度を速めるといものも政策としてあり得る。

⑤温暖化対策推進というソフトパワー発揮:地球温暖化対策は、最早地球規模で対処すべき問題となっている。これに日本が率先して取り組むことにより、地球温暖化対策に係る産業のデファクトスタンダードを作りうるとともに、外交の場において、地球温暖化を巡る国際的枠組み作りにおいて、主導権をとることができるであろう。

以上日本版グリーン・ニューディール(脱原発含む)を行うことにより、少子高齢化社会を迎え、暗い展望しか描けない日本社会において、明るい展望を描けるものと考える。

なお、最後に全くの枝葉の話になるが、原発が必要だという方々の声に応えてみたい。私は学問の研究対象としての原子力は否定するものではない。むしろ必要だと思っている方である。そこで、山口4区(安部晋三衆議院議員の選挙区)に事故発生時の無現責任をもって有志が資金を出し合い、発電用兼ねて実験用の原子炉及び核廃棄物処分施設を作ってはどうだろうか。無論、電力は売電し、出資割合に応じ配当する。万が一事故が発生した場合、出資社が悉皆財産を出して責任をとる。このシステムで原発賛成というのであれば誰も文句言わないだろう。


野党政権奪取私論2ー野党共闘への期待ー今後の管政権

2020-09-24 13:36:50 | 政治全般

ここでは、安部晋三が再度政権を投げ出した理由について分析してみる。これによって、その後始末をする管政権の命運が左右されるからである。

安部晋三が腹痛を理由に再度政権を投げ出したのは、①出鱈目な新型コロナ対策への批判によるストレス ②新型コロナ渦による経済不振とそれに関係する日産の経営危機の可能性が見えてきたこと ③を見る会の再告発受理の可能性 ④菅原前経産大臣の検察審議会による強制起訴の可能性 ⑤河合夫妻事件の全容解明 ⑥野党一本化が進み選挙での大幅議席減が見えてきた の以上6点であろうか。

上記のうち③~⑤は政権の法律参謀とも言われた黒川氏不在による影響あり、野党が何故黒川氏のクビを取りに来たかというのがわかるというか、野党の作戦勝ちとも言えるであろう。

⑥について、昨今の世論調査の結果から以外な感を持つ人も多いと思うが、世論調査は選挙を占う上で参考にはなるが分析資料としては十分ではないと言える。これは、選挙制度と選挙で重要なのは投票する人と後援会等実働部隊にあるということに起因している。なお、これについえては「三春充希(はる) ⭐みらい選挙プロジェクトにおいて非常によい定量的な分析がなされているので、これを参考にされたい⇒(みらい選挙プロジェクトリンク

以上①~⑥が安部晋三が政権を再度放り出した大まかな理由であろうが、管首相はこれらに対処しなければならない辛い立場にあることを承知した上で総理の座を引き受けたのだから大したものだと思う。が、野党はここが攻め所であろう。まさに、この点が小沢一郎氏が「現在の菅政権については「あんなひどい安倍政権をそのまま引き継ぐなんてとんでもない。菅義偉首相の新しい体制も非常にもろい部分を多く含んでいる」と批判した。」と指摘した背景にあるのであろう。⇒時事通信記事リンク


国益とは何かー防衛費の伸びに寄せてーその2

2020-09-24 11:57:06 | 政治全般

その1では、本邦の政策重点について述べたが、今回は、昨今日本を風靡している「中国脅威論」について言及する。なぜなら現在、文教費や少子高齢化社会対策予算を差し置き、予算の伸びが大きいのが防衛費であり、その膨張のロジックは中国への脅威への対応だからである。

結論から言えば、米中新冷戦と言われるような、冷戦時代の日ソ関係のような厳しい敵対関係にあるかと言えば、否であろう。なぜなら、中国は旧ソ連と異なり資本主義体制の打倒を目指し世界革命を狙っているわけでもなければ、中国の政治システムを世界標準とすべく策動しているわけでははないからである。つまり、イデオロギーや宗教といった、絶対と絶対の戦いではないので、妥協の余地が十分にあるという意味で冷戦時代の日ソ関係のような厳しい敵対関係ではないと言える。もう一点軍事的な面で言えば、旧ソ連は日本本土侵攻能力を有していたが、今の中国はせいぜい南西諸島の一部島嶼に戦力を投射できるか否か程度の軍事的脅威であろう。この面でも中国脅威論は疑問だと言わざるを得ない。

よって、アメリカの善悪二元論的宣教師的外交に日本が引きずられ、日本も拳をあげて対中脅威論を唱えるのは、私個人としては相当疑問である。日本としては、善悪二元論的対応ではなく、日本にとり利益が大きい方策をとるべきであろう。ここで利益が大きいと言えば、日本にとり経済的利益が大きい、則ち日本社会が豊かになる方策をとるということであり、その方策は、これまたアメリカのイデオロギーでもあるのだが、自由貿易体制の維持であり、日本はアメリカに引きずられ中国を排除するような経済政策は採るべきではないということになる。

このように書くと、なにやら対中融和路線のように聞こえるかもしれないが、基本的に相互に折り合うことができる問題については、折り合うようにするのがよかろう。折り合えない問題といえば、近代国家成立以降は、主権と領土である。に中相互に、この譲れない線を認識しつつ関係を深めてゆくというのが、今後の日中関係のあるべき姿になるのではないだろうか。

このように論考して行くと、日本の対中姿勢は19世紀的な勢力均衡論的スタンスで臨むべきということになる。則ち、日米安保体制を基軸として、中国とアメリカのバランスをとりながら、東アジアにおける不安定要因を除去しつつ国際社会を上手に泳いで行くという身の処し方である。それが、少子高齢化による国力低下に遭遇する日本が、自国の利益を最大限追求しつつ、国民の幸福を最大限追求し得る方策であろう。


野党政権奪取私論1

2020-09-23 21:18:05 | 政治全般

菅政権が発足して1週間が経過し、マスコミの世論調査における政権支持率は高止まりしている状況である。同慶の至といったとろであろうか。所謂ご祝儀相場であり、新型コロナ禍による日本経済へのダメージがじわじわ効いて早晩下落するであろう。

NHK:62%読売:74%

ここで気になるのは、小沢一郎氏が1年以内に必ず政権を取ると言明したことである。この読みの背景は何であろうかと考えると、①菅義偉氏はそもそも総理大臣になるつもりはなかったのだから、総理としてのビジョンは無く、政策が漂流するであろう。結果、無党派層の支持は落ちてゆく ②自民党内の基盤が弱く、政権運営に難儀するであろう。それが安定感の欠如と映り国民の支持は落ちてゆくであろうという2点にあるのではないかと感じる。事実、小沢氏は同記事で「現在の菅政権については「あんなひどい安倍政権をそのまま引き継ぐなんてとんでもない。菅義偉首相の新しい体制も非常にもろい部分を多く含んでいる」と批判した。」とある。(⇒リンク時事通信社記事

ここで政権の受け皿である立憲民主党は何をすべきであるかであるが、これには①選挙対策及び②国民の支持獲得の2点からアプローチする必要があろう。①の面から言えば、まず、自らの選挙組織を引き締めることが必要である。次いで他党との連携を積極的に推進すべきである。今進んでいいる社民党との合流が成功裏に進めば、社民党の地方組織も利用できるので、自民との接戦選挙区では有利になる。国民民主党とは候補者調整のみならず、地方組織レベルでの選挙協力が必要である。そして常に問題となるのが共産党との関係である。共産党の地方組織及び固定票は非常に魅力的である。但し、主に天皇制及び日米安保について、共産党は社会一般の理解を得られないという欠点を有する。この難題をどのようにクリアするかというのは非常に難しい問題であるが、やはり小沢一郎が言っているように、当面野外の応援団として活動してもらうというのがよかろう。つまり、政権には加わらないが、与党として政権運営には協力してもらうというものである。特に生活保障、労働、医療等国民に身近な分野において共産党の掲げる主張を政策に反映させることにより、共産党に政権交代の果実を与えることが必要になると思う。なお、防衛・外交・治安分野で共産党及び社民党関係者を絡ませてはダメである。なぜなら、これらの分野の役人が共産党・社民党関係者に協力すう可能性は限りなくゼロに近いからである。

ついで②の国民の支持獲得について述べると、現政権に変わる日本の将来の提示が必要であろう。それは具体的に言えば、新型コロナで傷んだ日本経済の復興脱原発格差是正である。脱原発と日本経済の復興はグリーン・ニューディールという政策パッケージを訴求すれば良いと思う。なお、グリーン・ニューディールは、エネルギー安全保障という面で本邦の安全保障に資する政策となろう。格差是正については、「得税の累進度を高める」「相続税と資産税の確実な徴収」「最低賃金を上げる」「児童手当の包括的な充実」「年金や医療という社会保険制度のさらなる充実」「所得による教育格差の解消」といったところであろうか。このうち、何を政策の軸(選挙の目玉)にするかは議論の余地があるだろうが、今の自民党政権では踏み込めないところに踏み込む必要があろう。

なお、国民の支持獲得については、元民主党幹事長の輿石東氏が非常に良い論考をだしているので参考にされたい(⇒引用:朝日新聞記事)。

いずれにせよ、今後の野党の動向、特に小沢一郎氏及び中村喜四郎氏の動きを注視して行きたい。