俺の家の前によさげなマンションが建っている。俺が越してきた時にはなかったが、1年後くらいにはマンションが建って人が住みだした。
よさげなマンションの割には住んでいる人の年齢がやけに若い。ここのところそいつらがマンションの前にたむろしていたり、金曜日の晩には馬鹿騒ぎしていたりする。今も10人くらいが集まってだべっている。おそらくこのマンションはどこぞの会社の社員寮なのだろう。そして住んでいるのは今年の新人なのだろう。
騒いでいる雰囲気をみると俺が新人のころを思い出す。東京の会社に就職し一人暮らしをはじめた。週末ごとに同僚と集まって飲んで騒いだ。同僚のほとんどは就職で上京してきたヤツらばっかで一人暮らしもはじめてだった。休みの日には新宿、渋谷、秋葉原などいろんなところに行った。楽しかった。
今外にいる連中はそんな楽しい日々の真っ只中なのだろう。うるさくて腹が立つときもあるがあえて文句は言うまいと思っている。新人たちは研修期間が終わるとそれぞれの部署に配属される。どんな仕事が彼らを待ち受けているかは知らないが、全員が生き残れるわけではないことは確かだ。今はそっとしておいてやろう。
こんな漢詩を思い出した。
葡萄美酒夜光杯(葡萄の美酒、夜光の杯)
欲飲琵琶馬上催(飲まんと欲すれば、琵琶馬上に催す)
酔臥沙上君莫笑(酔うて沙場に臥すとも、君笑うことなかれ)
古来征戦幾人回(古来征戦幾人か回る)