さよならteacup

100万ドルを拒否した天才数学者

随分と前にペレルマンを扱ったNHKのドキュメンタリー番組「数学者はキノコ狩りの夢を見る」の記事を書いたが、今回も似たような話。

最近無性に前述のドキュメンタリー番組を見たくなったのだが、見る手段はDVDを買うしかないということで諦めていたのだが、本なら図書館にあるんじゃないかと思って関連本をいくつか借りてきた。

中でも面白かったのが、マーシャ・ガッセン『完全なる証明』だ。この著者自身、幼い頃に数学の英才教育を受けていたことが幸いしてか、かなり読みやすく、ペレルマン本人の人物像を捉えていると感じた。

完全なる証明完全なる証明
マーシャ・ガッセン 青木 薫

文藝春秋 2009-11-12
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このペレルマンと言う人は一般的には変人と思われていて、著者が執筆当時には既に外界との接触を遮断している。つまりこの本にはペレルマン本人から聞いた言葉は一言も載っていない。なんともいいかげんな本だと言うことも出来るが、周囲の近しい人からのインタビューと著者の深い洞察で、それを補って余りある内容になっている。

4年に1度しか授与されない、数学界におけるノーベル賞と呼ばれるフィールズ賞を辞退した(過去そんな人は存在しない)のにも、クレイ研究所が指定する7つの難問(ミレニアム懸賞問題)のうちの1つ、ポアンカレ予想を証明したことによって受け取る資格のある100万ドルを辞退したのにも理由がある。

ペレルマンをよく知らない人は、それをたんに「気難しい人」というだけで片付けようとするが、ペレルマン自身は数学的な厳密さで存在する彼のルールに従っただけである。

肝心の本の内容だが、ペレルマンの生まれ育った環境や、彼の厳密なルールと何故それに至ったかなどが大半を占め、ポアンカレ予想についての記述はごくわずかとなっている。どうせポアンカレ予想について書いたところで読者は理解できないし、解説本は他にまかせるという著者の割りきりが見て取れる。そしてペレルマンの人物像に焦点をあてた本著は、天才というのはどういう人物か、さらに数学的厳密さで人生を生きたらどうなるかを見事に描いている。

多くの人にとってはポアンカレ予想が証明されようがされまいが、自分の生きている世界には何の関係もないが、完全に見える数学の世界にも、まだ解かれていない問題ってのがあるんだよってことを知るだけでも楽しいものだと思うがどうだろう?何より100万ドルの懸賞金がかかったミレニアム問題がまだ6つも残ってるってんだからワクワクするよね。

まぁ、でも残りの問題が自分たちが生きている間に証明されることはないだろうってのが大半の識者の意見なんだけどねぇって話ヽ(*´Д`)ノ



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